第51話「原点への扉」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《終末回廊》の崩壊は、一瞬だった。
観測者たちによって選び取られた五つの道が再び一つに集束し、悠真たちはついに、その中心に立っていた。
そこは――何もない空間だった。
「ここが……《ターミナル・ゼロ》の最奥?」
エリンが月光のように輝く書架を消し、手を伸ばす。
しかしその先にあるのは、漆黒の虚空と、たった一つの扉。
まるでそれがすべての記録の始まりであり、終わりであるかのように、静かに佇んでいた。
扉の中央には、かつて《観測装置》と呼ばれた存在の記号。
螺旋と線が交差したそれは、どこか禍々しくも美しかった。
「開けるのか? 悠真」
ゼインが問う。
彼の瞳は、既に人のそれを超えた深さを湛えていた。
「……ああ。ここまで来たんだ」
悠真は頷いた。
仲間たちはそれぞれに傷を負いながらも、生き延びてここにいる。
そのことが、何よりの証だった。
誰も欠けなかった。
それが彼の誇りだった。
ラグナ・リリスも、今は上空に待機しながら、彼らの帰還を静かに待っている。
「では――観測を始めよう」
ゼインの言葉とともに、扉が開いた。
**
目の前に広がったのは、「記録されざる世界」だった。
そこには色も音もなく、ただ“存在の可能性”だけが渦を巻いていた。
だがその中心に、一つの光――“書物”が浮かんでいた。
《オリジン・コード》――全ての記録の原典、そして《クリムゾン・スパイア》の根源にあたる存在。
「感じる……この書が、観測世界の“最初の断片”……!」
セラが言った。
彼女の指先は震えていた。
元研究者として、これがどれほど危険な存在かを理解していたからだ。
「これに触れれば、おそらく……真実に辿り着ける。でも……同時に、何かが終わる」
「もしくは、始まる」
レーフィが静かに言葉を重ねた。
その時、光が弾けた。
**
《オリジン・コード》に触れた瞬間、悠真の意識は遥かな過去へと引き込まれた。
――そこは、まだ“記録”という概念すら存在しなかった世界。
何者かが、記録を始める前の世界を眺めていた。
それは一人の女性だった。
白銀の髪、金の瞳。
どこか、エリンに似ていた。
『ようこそ、選ばれし観測者たち。あなたたちは“記録されること”を拒み、“記録すること”を選んだ。』
声は、優しく、それでいて恐ろしいほどに冷たい。
『この記録世界は、かつて私たちの手で生まれました。そして、あなたたちの手で終わらせなければならない』
「……君は、誰なんだ」
悠真が問うと、女性は微笑んだ。
『私の名前は――リュミエル。最初の“観測者”よ』
空間が揺れる。
次の瞬間、世界は再び分裂を始めた。
虚無の中から、何かが這い出してくる――“記録されなかった敵”、記憶の外側から来た異形の存在。
「来るぞ!」
リオンが叫ぶ。
仲間たちがそれぞれ武装を起動し、再び陣形を整える。
「やるしかないな……!」
悠真は《真理の鍵》を掲げ、前へと踏み出した。
その瞬間、《オリジン・コード》が開いた――無数の文字が空間を埋め、現実を塗り替えていく。
そして、リュミエルが最後に言った。
『記録を閉じた時、真の戦いが始まる。』
**
《ターミナル・ゼロ》の闇が、彼らを試す。
選ばれし七人は、今――世界の原点に立ち向かう。
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