第50話「観測戦線:目醒めの記録」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《ラグナ・リリス》最奥部。
悠真は、崩壊する《終末回廊》の壁面に映る虚無の波を見つめていた。
ゼインが〈観測武装〉として完全に覚醒したことで、戦局は一時的に安定したが、代償も大きかった。
「ゼイン……本当に、大丈夫なのか」
《R-Lインターフェース》に接続した彼の指先は、蒼い光に包まれていた。
悠真自身も《記録武装:真理の鍵〈ヴェリテア〉》を通じて、戦いに深く巻き込まれていた。
だが今、仲間たちの「選択」が未来を切り拓こうとしている。
──これは、まだ序章に過ぎない。
彼は前方に進み、かつて“世界の断面”と呼ばれた扉を開け放った。
「……記録されない哀しみって、あると思うの」
《記録武装:月影の書架〈ルナリア・アルカ〉》の光がエリンを包む。
彼女の周囲では、幻影と記録が交差し、空間そのものが詩のように変容していた。
彼女は、記録される運命に逆らうように、存在を上書きし続ける虚無の記録《オブザーバーの眼》と対峙していた。
《ねぇ、悠真……私、ちゃんと“ここ”にいてもいいのかな》
その囁きは、戦場の誰にも聞こえない。
だが彼女の微笑みには、揺るぎない意志が宿っていた。
《記録武装:断罪の矛〈アカシャ・スパイン〉》が蒼炎を噴き上げた。
セラは、過去に属していた“塔”と呼ばれる組織が作り上げた記録改竄兵器を破壊すべく、《終末回廊》の分岐路へ突入していた。
「これは……罠。けど、それでも──」
虚偽を記す魔導遺物を破壊した瞬間、セラの記憶に“まだ知らぬ少女”の姿が一閃する。
「……あの子は、誰?」
違和感を抱きながらも、セラは進み続ける。
かつての《研究者》としてではなく、《選ばれし者》として。
「戦場を美しく染めてあげる──これが私の流儀」
《記録武装:星紋の輪舞〈シリウス・アヴァン〉》が展開され、シアは文字通り“星座を踊らせて”いた。
彼女は《観測世界》の亀裂から現れた敵性観測体を一人で数十体相手取っていた。
だが表情に焦りはない。
「ふふっ、悠真のために、少しは魅せなくちゃね」
一瞬、視線がリンクする。
──信じてる。
それだけで、戦えるのよ。
「……私は、真実の扉を選んだ。なら、これが私の答えよ」
《記録武装:観測結晶〈ヴェルティグラフ〉》は、敵味方すらも“観測対象”として静かに記録し、同時に斬る。
レーフィの動きは冴え渡り、彼女の周囲の空間が圧縮されていく様はまるで、時間そのものを刈り取るかのようだった。
だが、彼女は決して感情を捨ててはいない。
「悠真……シア……私は、あなたたちの隣で戦うためにここにいる」
その言葉は、剣に変わり、真実の刃として敵を貫いた。
リオンは《記録武装:輪廻の律動〈リズミカ〉》を掌に起動した。
「オレは、誰かを救える騎士になりたいって……それだけを信じてる」
リオンの力は一種の“再構築”であり、仲間たちの傷や破損した空間さえも律動の音に乗せて修復していく。
ゼインの意識が遠のく中、彼は真っ先に駆け寄り、歌うように語りかけた。
「まだ終わりじゃないだろ、兄弟」
彼の声が届くたび、ゼインの意識が引き戻される。
まるで、音が絆を繋いでいた。
「俺は、存在しなかった“境界”を識る者……」
ゼインの周囲に展開された《記録武装:終極因果〈ミラ・コード〉》は、ありとあらゆる可能性と観測結果を演算する。
“リフォージド”の核心、《再観測されたもの(Re-Observed Entity)》との戦いは、因果の読み合いだった。
「悠真、お前の“選択”……確かに受け取った」
ゼインの瞳に、多重に重なった世界の構造が映る。
「だから、俺は──お前たちの未来を切り拓く」
そして彼は、“一つの観測”を切り捨てた。
自らが存在しない未来を。
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