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第48話『創記ノ座(ザ・アーカイブ)』

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

沈黙。

それは、すべての観測を押し流した“記録外”の感覚だった。


再観測体オーバーミラーが半壊し、その構造が空間に飲み込まれていく。

戦場に一時の静寂が訪れたその瞬間――


《……観測停止確認。条件一致。接続許可。》


低く、重厚な声が響いた。


「……今の、誰の声だ?」と悠真が問う。


次の瞬間、終末回廊の最奥部、虚空に“階段”が出現した。

存在しないはずの構造が、記録という形式のもとに折り重なり、重力を無視して空中へと延びていく。


《ようこそ、観測者たち。此処は“創記ノ座”。記録が始まるよりも前、最初の視点が座す場所。》


浮遊する螺旋階段の頂――そこに一人の人物が立っていた。


漆黒の衣に銀糸の文様。頭部には仮面、瞳は金色。

彼(または彼女)は、明らかに“この世界の存在”ではなかった。


《我は《アルシス》。初観測者にして、記録の始源アーカイバー。》



「アルシス……記録の始源……?」


エリンが呟くと、セラの瞳がわずかに震えた。


《……知ってる。私のいた研究機関、《アーテル・タワー》が探していた存在……》


《“記録の限界”の外側に存在する、唯一の観測できない存在……》


レーフィが警戒しながら一歩前へ出る。

「君が……再観測体を生み出した元なのか?」


《否。我が創ったのは“観測”そのもの。あれは、観測を模倣する者たちが、自らの恐怖を投影したに過ぎぬ。》


「じゃあ、あんたは敵じゃないのか……?」


悠真が問うと、アルシスは階段を一段だけ下りた。


《我は観測に干渉せぬ。だが……“選ぶ”ことはする。誰が次なる“記録者”たりえるか。》


「……試すつもりか?」とシアが問いかける。


《然り。お前たちが《真なる観測者》に至る器か否か。──その証明として、“視点の継承”を行う。》


『創記の試練トライアル・オブ・ザ・ビュー』発動

空間が裏返る。

全員の意識がそれぞれ“記録に埋め込まれた記憶”へと引き込まれていく。


【試練①:悠真】

目の前には、かつての“日常”――釣りをしていたあの海。


だがそこには、異形の存在が立っていた。

それは、“もしも悠真が異世界に来なかった場合”に育っていた別の“彼自身”。


《……逃げ続けてきたなお前は。でも、それが間違いだったと、言い切れるのか?》


悠真は唇を噛んだ。

そして、微笑した。


「俺は、逃げたからこそ──ここで向き合えるようになった。」


刀を抜き、自らの分岐を断ち切った。


【試練②:エリン】

彼女の試練は、“観測されない未来”。


誰からも存在を思い出されない世界。

誰の記録にも残らない空虚。


“消えた少女”として存在する痛みに、膝をつくエリン。


だが。


《存在は、記録されなくても、確かにあった》という悠真の言葉が、どこからか響く。


「……私は、私を記録する。」


少女の足元に、《自分の名前を書いた数式》が輝き始めた。


【試練③:セラ】

虚構の塔、アーテルの記録室。


目の前には、研究者としての彼女が記録した“過去のセラ”。


観測対象に冷徹な視線を注ぐその表情に、現在のセラは小さく苦笑する。


「こんなだったね、昔の私。でも──もう戻れないし、戻るつもりもない。」


彼女は自分の手で、過去の記録を封じた。


【試練④:ゼイン】

──そこは色も形もない、“境界の外”だった。


かつて“記録を失った少年”であったゼインは、今、“記録の全てを手にした存在”としてそこにいた。


目の前に現れたのは、自らの影のような姿。


《記録を持たぬ者が、記録を扱うことに意味はあるのか? お前は観測される資格も、する資格も持っていなかったはずだ。》


「……それでも、今、俺はここにいる。」


ゼインは静かに目を閉じた。


「誰かが俺を見てくれた。だから、俺は存在してるんだ。記録とは、その証だろ?」


影は苦しげにひび割れた。


「そして今度は、俺が誰かを記録する番だ。俺の視点で。」


その言葉とともに、虚空に“記録装置の核”が浮かび上がった。


【試練⑤:シア】

──祈りは届かない。


大聖堂に響くはずの声は、誰にも聞かれず、光も差し込まない。

誰も信じず、誰にも信じられない、孤独の礼拝堂。


そこに立つシアの前に、無数の“沈黙した信徒”たちが現れる。


《祈っても、変わらなかった。願っても、救われなかった。それでも、まだ祈るというの?》


シアは黙って一歩、また一歩と進む。


「……祈りが届かないのは、祈ることが無意味だからじゃない。」


「届かないからこそ──誰かが、光にならなきゃいけない。」


彼女の歩みに合わせて、礼拝堂の中心に光が灯る。


《たとえ祈りが無意味でも、それを信じることが、私の存在理由だから。》


彼女の背に、淡く輝く“光の羽”が現れた。


【試練⑥:レーフィ】

──真っ白な世界。


そこには、文字も音も存在しなかった。

ただ、ひとつの声が響く。


《真実は空虚。意味は虚構。人が信じるものなど、すべては偽り。》


レーフィは静かに周囲を見渡す。

彼女の掌の上には、“何も書かれていない本”があった。


「……そんなの、最初から分かってた。」


彼女は本の中に、一行ずつ、指で文字を書いていく。


「それでも、私たちは、言葉を紡ぐ。嘘かもしれなくても、意味を持たせる。それが──“物語”だから。」


《その物語に、誰が意味を見出すというの?》


「私が。私の仲間が。そして、読んだ誰かが。」


真っ白だった世界に、無数の言葉が浮かび上がり、“空白の真実”が新たな意味を持ち始めた。


【試練⑦:リオン】

──戦場。


ただ、剣と血と怒号が飛び交う、過去の記録。


彼が一人生き残ったあの夜。

仲間たちの屍の山と、“あの日の自分”がそこにいた。


《誰かのために戦って、誰も守れなかった。それでも、お前は“また戦う”と言うのか?》


リオンは剣を抜く。


「守れなかったからこそ、俺はまた剣を取る。」


過去の記録が実体を持ち、刃を向けてくる。


それを受け止め、押し返し、リオンは叫んだ。


「過去は消せない。でも、俺は“今”のために戦う。“未来”のために記録を残す!」


振るわれた剣が過去を断ち、空に“再誕の光”が昇る。



七人が階段を上り、アルシスの前に立った。


《よくぞ来た。“記録の限界”は、超えられた。次に待つは……“創記戦争インシデント・アーカイブ”──我々が辿る、真の観測線だ。》


空間に巨大なアーカイブが出現し、“選ばれし者たち”に新たな記録武装がインストールされていく。


悠真には《コード:エターナル・フォーカス》


エリンには《式核:アブソリュート・プロビジョン》


セラには《観測環:マルチスレッド・リンク》


ゼインには《境界律:インフィニティ・カスタム》


シアには《祈導記:レゾナンス・アーク》


レーフィには《真実核:リビール・ジェネシス》


リオンには《戦術譜:リライブ・クロニクル》


《さあ、記録を紡げ。お前たちが“真なる観測者”となるまで。》



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