第44話「終末の設計者たち」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
深層領域《終末回廊》の最奥。
ラグナ・リリスは重力も色彩も失われた空間を進み、やがて一つの構造体へと到達した。
それは、巨大な“観測球”のような姿をしていた。
宙に浮かぶ幾千の魔導円が幾何学的に回転し、中心核を守るように展開している。
《確認:構造体名『ターミナル・ゼロ』。“観測の起点”と推定》
セラは端末に手をかざし、接続を試みる。
「……ここには、観測者の記録が集約されてる。全ての世界線、全ての異世界転移の……根源」
その言葉に、艦内の空気がまた一つ張り詰める。
悠真は進み出た。
「ここが、すべての交差点……?」
ゼインは頷いた。
「ここが、“あの塔”の上位概念。クリムゾン・スパイアの情報の源。そして、俺が知る限り――この世界の“設計図”が保管されている場所」
「設計図……?」とエリン。
「世界の再構築のためのテンプレート。あらゆる異世界転移者が、一度は接触する可能性がある“原初の構造体”」
その時、ターミナル・ゼロの中心部に一人の影が現れた。
それは、人の形をしていた。
だが、顔はなく、声は直接思考に流れ込んでくる。
《――汝ら、再接続者か。記録より逸脱せし者らよ》
セラが前に出て静かに応える。
「私たちは“記録された者”ではない。だけど、この世界の命運を、知るために来た」
《……確認。異端接続、認証。選定された五路、通過を確認。主観的観測により、構成情報の一致率83.9%。対話を許可する》
そこから始まったのは、いわば“世界の根幹との会話”だった。
観測者たちは、あらゆる世界線を記録・修正・破棄してきた存在。
その目的は“連鎖的崩壊”の抑制と、“因果的誤差”の回収。
悠真が問う。
「俺たちは……何者なんだ?」
《汝は“因果補正対象”。選定された変数。意図された転移、ではない》
「……つまり偶然?」
《否。偶然の連鎖を選定された“観測者の演算結果”。意図的結果ではないが、予定された可能性》
エリンが息を飲む。
「それって……すでに“この結果”も見えてるってこと……?」
《未来は無限。観測によって定義される。だが汝らの選択により、“次の構造”が確定する》
その時、艦内に警告が走る。
《次元ノイズ発生。外部からの干渉を確認――“拒絶観測体”の侵入、開始》
艦橋モニターに映ったのは、“虚数位相に存在するはずの存在”――
ヴァン・アルグの断片。
否、それを超えた何か。
「これは……《再観測個体》!」
ゼインが叫んだ。
「奴らはもう《この空間》に侵入してきてる!このままじゃ、記録すべてが……!」
観測者たちが答える。
《選択せよ。記録の保全を優先するか、現世界の存在を優先するか》
悠真は言い放つ。
「どちらも捨てられない。俺たちは、記録も未来も、全て守るためにここに来た!」
その瞬間、ラグナ・リリスの艦体が《ターミナル・ゼロ》と完全同期を果たした。
《新たなる構造体との同調、完了。全記録の武装転送、実行》
ラグナ・リリスの外装が変化し始める。
艦全体が、ひとつの巨大な“魔導記録体”となり、記録そのものを武器に変換していく。
《再観測体への反撃準備、整いました》
エーリカの声は凛と響く。
「行くぞ、みんな……“この世界”を、書き換えられないように――!」
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