第42話「再起動する竜」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《完全起動プロトコル、開始します》
機械的でありながら、どこか人間味のあるその声は、ラグナ・リリスの心臓部に響き渡った。
艦内深層、最下層にある“封印区画”――
そこには、これまで誰も立ち入ることができなかった、艦そのものの“起源”が眠っていた。
だが今、五人の意志が揃ったことで、“鍵”が揃った。
《ユウマ・ユウキ、シア=ファルネウス、セラ=アーデル、エリン・グレイス、レーフィ・シュタインベルク――全員の意志確認。ラグナ・リリス、解放処理を実行します》
ズズンッ、と艦全体が低くうねるような音を発した。
その瞬間、各ブロックの魔導機関が次々と“新たなエネルギー”を受け入れ始める。
それは、これまでの魔力とは異なる。
むしろ、“外界”の法則と接続するための情報波動――“境界航行エネルギー”だった。
「……これは……」
リオンは艦内中枢にいた。
これまで“動かなかった”機構群が一斉に始動し、艦そのものが鼓動するように脈打ち始めたことに、戦慄すら覚える。
「目覚めるのか……本当に、これは“生きている”……!」
そのとき、少年――いや、“記憶を奪われた青年”がふと顔を上げる。
「……思い出しそうだ」
「え?」
「この音、この脈動……昔、どこかで……」
彼の瞳が、淡い蒼に光った。
わずかながら、失われていた“コード”が脳裏に走った。
《プロトコル・イグジスト――起動中。外部干渉体、検知》
その瞬間、艦外――“海”ではない、“空虚”の空間に異形の影が蠢き始めていた。
《報告:第一種干渉体接近中》
エーリカの声が艦内に響く。
《敵性存在の構成:観測者に酷似。ただし、情報構成が崩壊しており、言語・意思伝達不可。破壊的侵食が予想されます》
セラが鋭く反応する。
「……観測者に酷似? じゃあ、あれは……世界の外側で“失敗した調整”の成れの果て?」
「まるで……間違った選択をした“未来の自分たち”みたいじゃないか……」
エリンが静かに呟く。
「だとしても……」
悠真は前を向く。
「俺たちは、今“選ぶ側”だ。逃げない。ラグナ・リリスを使って、立ち向かう」
艦内各所にて、新たな武装ブロックが展開されていく。
一つは超重力粒子砲、
一つは次元振動波干渉装置、
そしてもう一つは――《接続ゲート》。
《発艦準備完了。ユウマ・ユウキ、司令官権限を再認証します》
《“ラグナ・リリス”――起動承認》
彼の声と共に、艦全体が青白い光を放ち、“その姿”を変化させていく。
ただの魔導潜水艦ではない。
今やその外殻は、かつての機械兵器群とも、生物兵器とも異なる――
それは、“異なる法則の具現”。
空間そのものを“泳ぎ”、時の淵を越える、“世界接続艦”となる。
「発進!」
悠真の命令と共に、ラグナ・リリスは境界の虚空へと進路を取る。
その先には、《ヴァン・アルグ》という名の侵食者が待っていた。
だが、それを迎え撃つ彼らには、確かな“絆”と“選択”があった。
今、物語は世界の淵を越え――“多元世界”への航路を描き始める。
ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!
モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!
過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。




