第41話「境界を越えて」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
扉の向こうは――白かった。
まるで空間そのものが“定義”されていないかのような、構造のない余白。
しかし、その中心には、確かに“何か”が存在していた。
「……ここが、《門》の先……?」
悠真がそう呟いた瞬間、足元から何かが立ち上がった。
それは、“思念”そのものが形を成したようなものだった。
金属でも、魔力でも、肉体でもない。
“記録”とも異なる、もっと深い――“存在の根本”。
《ようこそ、境界の外へ》
その声は、耳ではなく“意識”に直接流れ込んでくる。
《あなたたちは、境界航行者としての第一段階を突破しました》
レーフィが警戒するように一歩下がる。
「……あんたは誰? 観測者じゃない、よね?」
《観測者は内側の記録者。我々はその外に位置する“調整者”》
セラが眉をひそめた。
「調整者? 世界の“外側”にそんな役割が……」
《世界は常に“誤差”を含んで進行する。
我々は、その誤差が臨界を超える前に、補正する役目を持っている。
しかし、今その誤差は制御不能域に達しつつある》
エリンの目が見開かれる。
「……もしかして、それが……私たちの“召喚”に関係してるの?」
《関係している。すでに、この世界の“本来の流れ”は千年以上前に失われている。それを補うため、“外部”から繰り返し転移者が呼ばれてきた》
シアが問いかける。
「じゃあ、私たちは……この世界を救うための道具だったの?」
《否。君たちは、“最後の選択肢”であり、同時に“端末”だ》
「端末……?」
悠真の声に、調整者は続けた。
《君たちは、ラグナ・リリスと共鳴するよう設計された存在。それは、単なる偶然ではない。世界とラグナ・リリスを接続するための“リンク”》
その言葉に、五人の表情が揺れる。
『……ラグナ・リリスは、外部への“航行機能”を持つ潜在兵器。だが、封印状態だった。君たちが来るまで、誰も起動できなかった』
悠真は静かに目を閉じた。
「だから……俺たちが“鍵”だったってわけか」
《正確には、“鍵であり、道”だ。ラグナ・リリスを完全起動するためには、君たちの意志が必要だ。“この世界を出る”か、“この世界に介入する”か》
レーフィが思わず口をつぐむ。
(出る……? それは、ラグナ・リリスで“他の世界”へ行くってこと?)
そのとき、空間に新たな映像が現れる。
それは、ラグナ・リリス内部――
エンジンルームで“何か”が目覚めようとしていた。
《決断を急げ。門が開いた今、外側からの侵食が始まっている。次の侵入者が来る前に、ラグナ・リリスを起動しなければならない》
「……わかった。けど、一つだけ答えてほしい」
悠真の声が真っ直ぐ響く。
「“この世界”の住人たちは……巻き添えになるのか?」
沈黙が一瞬だけ降りたのち、調整者は答えた。
《君たちが“出る”なら、世界は自己崩壊する。君たちが“残る”なら、君たちが“軸”となって再構成が始まる。いずれにせよ――選ぶのは、君たちだ》
その瞬間、白い空間が軋みを上げた。
“門”の先に、更なる選択が待っている。
そして、彼らのラグナ・リリスもまた、目覚めようとしていた。
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