第35話「真実の通路」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
五つに分かれた運命の通路。
その一つ、『真実』と刻まれた光の扉が、レーフィを誘うように輝いていた。
「……真実、か。知りたいとは思ってた。けど……覚悟がいるってことよね」
軽く息を吐いた彼女は、意を決して扉をくぐる。
瞬間、足元が崩れ、視界が漆黒に包まれた。
次に目を開けたとき、レーフィは見覚えのある白い実験室に立っていた。
金属光沢の床、淡く光るホログラム、冷たい空気。
そこは、かつて彼女が研究員として所属していた――“機関”の施設だった。
「戻ってきた……いや、これは……記憶の再現?」
背後から足音が響く。振り返ると、白衣姿のレーフィ自身がいた。
《観測対象E-17、魔導潜水艦の特異構造を確認。潜在的因果干渉レベル――人智を超越》
記録映像のように、過去のレーフィが淡々と喋る。
彼女の目は今よりもずっと冷たく、機械的だった。
「これが……私?」
レーフィの拳が震える。
だが、そこにもう一つの映像が投影される。
《コードネーム:悠真。転移因子を持たぬにも関わらず、因果界へと転送された唯一の例。……彼の存在は、終末構造体の観測条件そのものを変動させる》
「嘘……。私……最初から知ってたの? 彼の存在が“異常”だって……」
映像の中で、過去のレーフィは背後の誰かに報告を上げている。
その相手は、顔の見えない存在――おそらく“上位存在”か、塔の運営に関わる監視者だ。
《もし彼が覚醒すれば、我々の記録体系は再構築される可能性がある。観測は慎重に、接触は最小限に留めるべき》
その瞬間、空間が歪み、別の映像へと切り替わる。
――小型艇の中、仲間たちと笑う悠真。
迷いの中で涙をこらえるエリン。
剣を携え、道を切り開くシア。
かつての組織では決して見られなかった“絆”の風景。
「……違う。私は、もう戻れない。戻らない」
レーフィは静かに言った。
「私は、観測者でも、報告者でもない。“仲間”としてここに来た」
すると、真実の空間に声が響いた。
《では問おう、レーフィ=シュタインベルク》
現れたのは、記録の守護者に似た存在。
仮面に覆われた顔、背後には浮遊する円環のデバイス。
《過去を知りながら、真実を覆い隠した君に問う。“今の選択”が正義か?》
レーフィは視線を逸らさなかった。
「……正義なんて、私にはわからない。でも、あの人たちと出会って、私の心は動いた。なら、それが“真実”なのよ。私にとってのね」
沈黙ののち、空間が淡く崩れ始める。
《答えは受理された。汝、過去を越え、真実を抱いて進め》
その瞬間、レーフィの胸に小さな光が宿る。
それは、因果干渉を最小限に抑えながらも、選ばれし者にしか触れられぬ“鍵”の一片。
「ありがとう……みんな。今、ようやく私、本当の意味で――この旅に参加できた気がする」
静かに、彼女は次の扉へと進む。
その先で、仲間と再会するために。
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