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第32話「意思の通路と偽りの未来」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

重たい扉が閉じる音が、セラの背後で静かに響いた。


空間は一変していた。


そこはかつて彼女が所属していた研究組織〈ミレニア〉の主塔を模したような構造――だが、どこかが違う。

壁面を走る魔導配線、記録端末の位置、空気の質感さえも、微妙に“正しすぎる”。


「これは……模倣空間。でも、私の記憶に忠実すぎる」


まるで記憶を再構築したかのような精密さだった。


正面の廊下を進むと、研究員たちの姿が見える――だが、彼らは全員顔を持たない“空の存在”だった。

動きは滑らかで、声も交わしているが、その目は虚無のまま。


やがて、通路の奥に一つの影が立っていた。


それは、セラ自身だった。


「……っ」


自分の姿を見た瞬間、セラは立ち止まった。

目の前にいる“もう一人のセラ”は、感情のない目で彼女を見つめていた。


《選ばれなかった、可能性の私》


そう理解した。


「君は、あの時組織に残り、“記録”を優先した私ね」


《然り。セラ=アーデル。お前は“意思”によって、秩序を破壊し、多くの犠牲を生んだ》


「違う。私は、選んだだけ。救える未来を信じて、誰かのために“変わること”を選んだの」


《ならば証明してみせよ》


そう告げると、“もう一人のセラ”が手を掲げた。


空間が再構築され、セラの目の前に三つの扉が現れる。

扉の上にはそれぞれこう記されていた:


『全てを守る意思』


『一人を救う意思』


『己を赦す意思』


《選べ。お前の“本当の意思”がどこにあるのかを》


セラは息を吸った。


(……私は、あの時、何度も迷った。仲間を犠牲にしてでも記録を守るべきか。逆に記録を焼き捨ててでも一人を救うべきか。だが――)


彼女は、三つ目の扉に手を伸ばした。


「私は、“己を赦す意思”を選ぶ。これまでの選択を、失敗も後悔も、全部“私自身”として受け止める」


選んだ瞬間、足元から光が広がり、空間が震えた。


《……それが、お前の“意思”か》


声が揺れ、偽りのセラが消えていく。


だが最後に、確かな微笑を残していた。


次に彼女が目を開いたとき、手には一つの“意志の核”があった。

それはかつて彼女が研究所で開発していた、自己意識の統合装置を模した魔導結晶だった。


「まだ、終わってないわね」


彼女は背筋を伸ばし、通路の出口へと向かう。


その瞳にはもう、迷いはなかった。


彼女は、自分の過去も罪も、意思も、すべてを背負って前へ進むと決めたのだから。

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