第3話「王都セレディアと《鍵持ち》の伝承」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
ラグナ・リリスの艦内、制御室。
悠真とエリンは並んで座り、目の前のホロディスプレイに映し出された世界地図を見つめていた。
「これが……この世界の全体地図か」
「正確には、今が持っている範囲のものよ。昔の遺構や海底都市の情報も一部残ってるわね」
悠真は地図の中央付近、ひときわ大きな都市に目を留めた。
「ここが……セレディア?」
「そう。王国の中心。表向きは平和だけど、実際は貴族派と王政派の争いが続いてる。しかも最近、“異界の力”が流れ込んでるって噂されてる」
「異界って……俺みたいな?」
エリンは頷く。
「あなたが“鍵持ち”として現れたのも、偶然じゃない気がしてる。実は、セレディア王宮には《鍵持ちの予言》っていう古文書があるの」
「それって……どんな?」
エリンは慎重に言葉を選びながら語った。
「“遥か彼方の海から来たりし者、忘れられし艦とともに現れ、世界の門を開く”——。それが、予言の一節」
悠真は眉をひそめた。
「門……ってなんだ?」
「分からない。けど、いくつかの遺跡に“門の鍵”って記述がある。あなたの艦が、そのうちのひとつだと考えられてる」
《ラグナ・リリス》は、単なる潜水艦ではなく、何か大きな仕組みの一部らしい。
ただし、その“何か”は、今はまだ霧の中だ。
「……ところで、悠真」
「ん?」
エリンは少し顔を赤らめて言った。
「ねえ、セレディアまで、一緒に来てくれる?」
「え? 俺が?」
「あなたがいれば、王宮のアーカイブにも入れるかもしれないし……それに、ひとりじゃちょっと不安で」
不安、という言葉以上に、彼女の瞳には“頼りたい”という気持ちが滲んでいた。
悠真は、少し照れながらも笑った。
「もちろん。行こう、エリン。俺も、この世界のことを知りたいし」
その瞬間、艦内に警告音が鳴り響いた。
《外部魔力反応、検出。海中より接近中。種別:魔導機甲種・型式不明。敵性:高。》
「なにっ……!」
「敵!? さっきまで何もいなかったのに!」
《ステルス機能付き個体の可能性があります。戦闘態勢を推奨。》
ホログラムに映し出されたのは、海中を滑る巨大な影。
まるで生き物と機械が融合したような、異様な姿だった。
「エリン、艦内にいて!」
「でも……!」
「ここは俺が……っていうか、ラグナ・リリスがなんとかしてくれる!」
悠真は操縦席に飛び乗った。
手のひらをパネルに当てると、脳に戦術情報が一気に流れ込んでくる。
《主兵装・展開完了。魔導砲起動。照準同期、完了しました。》
「よし……いくぞ!」
艦の前部から展開される魔導砲。
その砲口が、海中を泳ぐ機甲種に向けられる。
相手はそれに気づき、回避行動を取り始めた。
「AIエーリカ、偏差射撃、座標補正して!」
《了解。目標移動予測、完了。発射まで……3、2、1——》
ズンッ!!
轟音とともに放たれた砲撃は、見事に敵の中央部を貫いた。
青白い魔力が爆ぜ、機甲種は悲鳴のような電子音を上げながら崩れ落ちていく。
「……倒した、か?」
《撃破確認。敵性反応、消失しました。》
艦内に静けさが戻る。
「すごい……あなた、本当にこの艦と一体になってるのね」
「まあ、いきなり撃てって言われたら、撃つしかないし」
そう言って肩をすくめる悠真に、エリンは思わず笑った。
「……でも、ありがとう。助けてくれて」
「いいって。まだ何も分かんないけど、やるしかないからな」
艦内の照明が徐々に元に戻っていく。
だが、今の戦闘はただの“偶然”だったのか?
——それとも、誰かがこちらを試しているのか?
その答えを求めて、二人は《セレディア》を目指す。
“鍵持ち”と、赤い帆の少女の旅は、ここから本格的に始まるのだった。
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