第28話「深界層アルディアと再起動の扉」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
ラグナ・リリスが深界層への潜航を開始すると同時に、艦内の雰囲気が一変した。
それは圧迫感というより、まるで「空間そのものに意志が宿っている」ような感覚だった。
《深界層・アルディア圏域への侵入を開始します。周囲の空間構造は“意図的に生成された迷宮型”。警戒を》
エーリカの報告に、艦内の各部署が一斉に緊張する。
「意図的に……? つまり、誰かが作ったってことか?」
悠真の問いに、セラが端末を確認しながら頷く。
「古代の設計ログが断片的に読み取れる。ここは“最終記録保管層”……何かが、この場所を“守ってる”」
「それって、敵がいるってこと?」
エリンが腕を組みながら問う。
「少なくとも、歓迎はされてないね」
シアが剣の柄を軽く叩いた。
その時、艦内スクリーンに巨大な構造物が映し出された。
それは、まるで神殿のように精緻で、だが深海の闇に溶け込むような存在感――
「……あれが、“再起動の扉”」
レーフィが呟くように言った。
《構造物内に旧世界の記録端末、およびコアユニットの痕跡を確認。アクセスに認証が必要です》
「私が行く」
レーフィが一歩前に出た。
「ここは、私の……記憶の中にある」
彼女の言葉には、どこか覚悟の色が混ざっていた。
「俺たちも行くよ。独りにはさせない」
悠真の言葉に、微笑むレーフィ。
◆
扉が開くと同時に、彼らを迎えたのは“記憶の光”だった。
膨大な映像記録。
崩壊した世界。
人工海底都市。
そして、人々の絶望と、最後の希望として建造された魔導潜水艦――《プロジェクト・ラグナ》。
その中に、ある少年の姿が映っていた。
「……それ、俺……?」
悠真が凍りついたように立ち尽くす。
映像の中で、彼――悠真と酷似した少年は、深層記録に鍵を与えられていた。
「選ばれし者」ではなく、「記録を繰り返す者」――
《彼は、唯一“繰り返し記憶を託されてきた”存在。ラグナの記録者にして、未来の観測者》
エーリカの解析が告げる。
「俺は……転移したんじゃないのか……?」
「違う。あなたは“戻った”の。断絶された時間の彼方から」
レーフィの瞳が、静かに揺れた。
セラが隣に歩み寄る。
「この艦も、あなたも、そして私も――“再起動のための布石”だったのね」
「じゃあ、この“扉”を開ければ、何が起こる?」
「すべての記録が統合される。そして、“観測の意志”が目覚める」
「それは……この世界にとって、良いことなのか?」
答えはなかった。
沈黙の中、扉の中央に刻まれた“認証孔”が淡く光る。
悠真が手をかざすと、艦内全体が共鳴を始めた。
《最終認証確認。“観測再起動”プロトコルを実行しますか》
その問いに――
「俺は、もう逃げない。再起動するよ。この世界の記憶を、繋ぐために」
《認証確認。再起動開始》
深界層全域に、光が走った。
ラグナ・リリスの中枢が解放され、艦そのものが変化を始める。
艦の外装が展開し、新たな浮遊構造と融合し、“進化”するような動き。
「これは……ラグナの“真の姿”……!」
誰かがそう呟いた瞬間、世界がわずかに軋んだ。
――その先に待つものは、新たな敵か、それとも答えか。
だが、扉は開かれた。
そして物語は、再び加速する。
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