第26話「深層記録と記憶の継承」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
ラグナ・リリスの中央中枢に、低い共鳴音が響いていた。
艦内の光が一瞬だけ明滅し、静かに収束する。
《転移座標、安定化完了。対象コード:レーフィ。空間干渉座標、確保》
エーリカの音声は、普段以上に神経質な精度で制御されていた。
「本当に……そこにいるのか、レーフィって人が」
悠真が問うと、エーリカは即答した。
《存在波長は人間と非常に近いものの、魔導信号には高次干渉構造が含まれています。明らかに“通常種”ではありません》
「おそらく、“裂け目”の向こう側で形成された異種知性体ね」
セラが端末を操作しながら応じた。「けど、悠真に関係している可能性は高いわ。あの偽りの霧と、君の“影”が語ったことから考えて」
「……行くしかないな」
そう言って立ち上がった悠真に、エリンとシアが並ぶ。
「私たちも行く。今度は、もうひとりで戦わせない」
「うん。私、あの霧のなかにいた“子どもたち”の気配を忘れられないの。たぶん、あの人――レーフィは関係してる」
セラもまた、無言で頷いた。
「エーリカ、次元転送準備。転移先は?」
《座標確定:深層格納領域、グリッド38-C。ラグナ・リリス建造以前の原初設計データが存在した場所です》
「……“記録の中枢”……?」
《可能性あり。霧が干渉していた“記録そのもの”が、何者かの意志で保持されていたと仮定すれば……その守護者こそが、“レーフィ”》
◆
転送の光が揺らぎ、悠真たちは艦の最深部――かつて誰も足を踏み入れたことのない格納領域へと降り立った。
そこは、まるで時間が止まったような空間だった。
水晶化したような半透明のパネルが無数に浮かび、壁一面には記録球体が淡い光を放っていた。
その中心、彼らの前に立っていたのは――
白銀の髪に深紅の瞳を持つ少女だった。
年齢は悠真たちと変わらぬように見えるが、纏う空気は異質だった。
「……あなたが、レーフィ?」
少女はゆっくりと頷く。
「私はレーフィ。あなたたちが“選ばれた”と呼ばれる、その理由を記すために、ここにいた者」
「記す……?」
セラが一歩前に出る。
「じゃあ、あなたはこの艦の建造や、“裂け目”との接続の理由も知っているの?」
レーフィは、静かに右手を掲げると、空間に記録球体を浮かび上がらせた。
それは、悠真たちの誰もが知らない――ラグナ・リリスの“過去”だった。
◆
無音の映像が流れる。
そこには、人間と似た姿の異種族たちが、巨大な海底都市を築き上げている様子があった。
やがて、その都市は“上位存在”の干渉を受け、崩壊へと進んでいく。
《この艦は、かつて“観測艦”として設計されました。裂け目の安定性を測定し、因果干渉を最小限に抑えるために》
「じゃあ、このラグナ・リリスは“戦うため”の艦じゃなくて、“守るため”に作られた……?」
エリンの声に、レーフィは微笑みを浮かべて頷いた。
「だけど、“記録者”である私たちは滅び、あなたたち――“継承者”が現れた」
「つまり、俺たちは……“役目”を引き継いだってことか」
「それだけじゃない」
レーフィは静かに言った。
「あなたは“鍵”そのもの。あなたがどの選択をするかで、この世界は“保存”にも“崩壊”にも転ぶ」
悠真は言葉を失った。
だが、その肩に、エリンとシアの手がそっと触れた。
「なら、ちゃんと選ぼう。私たちと一緒に」
「そうよ。あんた一人じゃないんだから」
そのとき――空間に再び震動が走った。
《警告:観測限界を超える存在、次元裂片より侵入》
「またか……!」
「でも、今度は違う。今度は、私たち全員がここにいる!」
悠真が剣を構える。
レーフィの瞳が、淡く輝く。
「見せて。あなたが“未来”を選び取る、その意志を」
そして、深淵より新たな影が姿を現す。
物語は――さらなる核心へと向かう。
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