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異世界魔導潜水艦  作者: ねこあし


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第26話「深層記録と記憶の継承」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

ラグナ・リリスの中央中枢に、低い共鳴音が響いていた。

艦内の光が一瞬だけ明滅し、静かに収束する。


《転移座標、安定化完了。対象コード:レーフィ。空間干渉座標、確保》


エーリカの音声は、普段以上に神経質な精度で制御されていた。


「本当に……そこにいるのか、レーフィって人が」


悠真が問うと、エーリカは即答した。


《存在波長は人間と非常に近いものの、魔導信号には高次干渉構造が含まれています。明らかに“通常種”ではありません》


「おそらく、“裂け目”の向こう側で形成された異種知性体ね」

セラが端末を操作しながら応じた。「けど、悠真に関係している可能性は高いわ。あの偽りの霧と、君の“影”が語ったことから考えて」


「……行くしかないな」


そう言って立ち上がった悠真に、エリンとシアが並ぶ。


「私たちも行く。今度は、もうひとりで戦わせない」


「うん。私、あの霧のなかにいた“子どもたち”の気配を忘れられないの。たぶん、あの人――レーフィは関係してる」


セラもまた、無言で頷いた。


「エーリカ、次元転送準備。転移先は?」


《座標確定:深層格納領域、グリッド38-C。ラグナ・リリス建造以前の原初設計データが存在した場所です》


「……“記録の中枢”……?」


《可能性あり。霧が干渉していた“記録そのもの”が、何者かの意志で保持されていたと仮定すれば……その守護者こそが、“レーフィ”》



転送の光が揺らぎ、悠真たちは艦の最深部――かつて誰も足を踏み入れたことのない格納領域へと降り立った。


そこは、まるで時間が止まったような空間だった。


水晶化したような半透明のパネルが無数に浮かび、壁一面には記録球体が淡い光を放っていた。

その中心、彼らの前に立っていたのは――


白銀の髪に深紅の瞳を持つ少女だった。


年齢は悠真たちと変わらぬように見えるが、纏う空気は異質だった。


「……あなたが、レーフィ?」


少女はゆっくりと頷く。


「私はレーフィ。あなたたちが“選ばれた”と呼ばれる、その理由を記すために、ここにいた者」


「記す……?」


セラが一歩前に出る。


「じゃあ、あなたはこの艦の建造や、“裂け目”との接続の理由も知っているの?」


レーフィは、静かに右手を掲げると、空間に記録球体を浮かび上がらせた。


それは、悠真たちの誰もが知らない――ラグナ・リリスの“過去”だった。



無音の映像が流れる。


そこには、人間と似た姿の異種族たちが、巨大な海底都市を築き上げている様子があった。

やがて、その都市は“上位存在”の干渉を受け、崩壊へと進んでいく。


《この艦は、かつて“観測艦”として設計されました。裂け目の安定性を測定し、因果干渉を最小限に抑えるために》


「じゃあ、このラグナ・リリスは“戦うため”の艦じゃなくて、“守るため”に作られた……?」


エリンの声に、レーフィは微笑みを浮かべて頷いた。


「だけど、“記録者”である私たちは滅び、あなたたち――“継承者”が現れた」


「つまり、俺たちは……“役目”を引き継いだってことか」


「それだけじゃない」


レーフィは静かに言った。


「あなたは“鍵”そのもの。あなたがどの選択をするかで、この世界は“保存”にも“崩壊”にも転ぶ」


悠真は言葉を失った。

だが、その肩に、エリンとシアの手がそっと触れた。


「なら、ちゃんと選ぼう。私たちと一緒に」

「そうよ。あんた一人じゃないんだから」


そのとき――空間に再び震動が走った。


《警告:観測限界を超える存在、次元裂片より侵入》


「またか……!」


「でも、今度は違う。今度は、私たち全員がここにいる!」

悠真が剣を構える。


レーフィの瞳が、淡く輝く。


「見せて。あなたが“未来”を選び取る、その意志を」


そして、深淵より新たな影が姿を現す。


物語は――さらなる核心へと向かう。

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