表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/110

第25話「影と刃」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

世界が静止したように感じられた。

“彼”――もう一人の結城悠真と対峙したその瞬間、周囲の霧が沈黙し、空間は緊張に満ちた張りつめた弦のようになった。


「……名前を訊いても、意味はないか」

悠真が静かに口を開く。

だが、目の前の男は鼻で笑った。


「名前など、とうに捨てた。俺は“可能性の果て”、無価値の残骸だ」


その声には、狂気と絶望、そしてかすかな羨望が入り混じっていた。


「選ばれたお前が“真実”になるなら、選ばれなかった俺は“虚構”だ。だがな、虚構は時に真実を壊す力を持つ」


闇の霧が彼の体を這い、魔力を増幅させていく。

まるで空間そのものが彼に味方しているかのようだった。


「来いよ。お前が“俺”なら、俺も“お前”を越えてみせる」


言葉と同時に、二人の悠真が動いた。


刹那――剣と剣が激突し、霧の世界に火花が散る。



「二人の悠真……」

セラがラグナ・リリスのモニター越しに歯を食いしばる。


《同位存在間の交差は、高次元干渉を引き起こします。霧の核の安定性が急激に崩壊しています》

エーリカの声にも焦りが滲んでいた。


「エリン、転送砲を準備して。シアは、もしもの時に備えて展開可能な援護態勢を」

セラが指示を飛ばす。


「でも……悠真は、あの“自分自身”と戦ってるんだよ……!」

エリンの声が震える。


「それでも……戦い抜いて、選び続けるしかないのよ」

セラの瞳に浮かんだのは、かつての自分――そして、選び損ねた“誰か”の面影。



「どうした。その程度か、“選ばれし俺”!」

もう一人の悠真が怒号を放つ。

彼の剣は黒く染まり、振るうたびに空間に裂け目を生じさせる。


だが悠真は、確かにその攻撃を受け止めていた。


「……違う。お前は、ただ……怒ってるだけじゃない。自分が選ばれなかったことに、納得できないだけだろ」


「黙れぇッッ!!」


怒りの奔流が暴風のように押し寄せる。

悠真は吹き飛ばされ、空間の果てに叩きつけられた。

だが、彼は立ち上がる。


「選ばれたかどうかじゃない。“選ぶ”のは、これからなんだよ!」


彼の剣が再び輝く。

霧の核がその意志に共鳴し、空間がわずかに光を帯び始めた。


「俺は、誰かに必要とされてる。仲間がいて、支えてくれる人がいる。お前が否定しようとしてる“今”を、俺は信じてる!」


言葉と共に、渾身の一撃が放たれた。

その一閃は、もう一人の悠真の胸を裂き、黒い霧を引き裂く。


「……なぜだ……俺だって、同じだったはずなのに……」


もう一人の悠真が、膝をつく。

霧がその体から剥がれ落ち、意識が薄れていく中、彼はようやく微笑んだ。


「……ありがとう。“選ばれた俺”よ……お前が、俺の……希望だ」


その瞬間、空間が大きく揺れた。


《霧の核、崩壊プロセス開始。30秒後に完全崩壊》


エーリカの警告が飛ぶ。


「エーリカ、転送座標をこの位置に固定。悠真を回収して!」

セラが叫ぶ。


《了解。座標固定、ゲート展開──回収プロトコル、実行》


霧が砕け、白い光が差し込む。


そして――悠真の体は、その光に包まれて姿を消した。



気がつくと、彼はラグナ・リリスの医療室にいた。


「……戻って、これた……のか?」


「悠真!」


駆け寄ったのは、エリンとシア、そしてセラだった。


「バカ……心配させないでよ……!」

エリンが涙ぐみながら拳で軽く胸を叩く。


「……おかえり、悠真」

セラの声が、柔らかく響いた。


そして、艦内には、静かな安堵の空気が流れる。


だが――


エーリカの声が、その沈黙を破った。


《霧の核から、未知の信号を検知。微弱ながら……“レーフィ”と名乗る存在の座標を取得》


全員の目が見開かれる。


「……レーフィ?」


霧の奥から、また新たな“選ばれし存在”の鼓動が――確かに響いていた。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ