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第24話「霧の核」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

光に包まれ、視界が歪む。

空間がねじれ、現実と虚構の境界が曖昧になる。


悠真たちは、白の浮遊都市アーケイン・ブランシュに設置された転送ゲートをくぐり抜け、霧の深層、すなわち――《霧のコア・オブ・ミスト》へと到達した。


そこは、理屈も重力も存在しない空間だった。


足元もなく、上下も左右もない。

空は紫に染まり、幾重にも重なる記憶の残滓が、光の断片として漂っている。

空間全体が、生きているような、息をしているような――そんな不気味さを帯びていた。


「こ、ここが……霧の、核……?」


エリンが怯えたように腕を抱える。

彼女の髪が、まるで水中のようにゆらゆらと揺れていた。


《魔力の流れが異常です。通常の空間構造が維持されていません。ここは――現実と記憶の狭間》


エーリカの分析が艦橋を通じて伝わる。

だが、その通信も時折ノイズが走るほどに不安定だった。


「これは……“干渉領域”だ」


セラが眉をひそめ、空間の一部を指差す。

そこでは、かつて彼女が所属していた研究所の風景が、ぼんやりと浮かび上がっていた。


「現実の記憶、あるいは別の世界の可能性……この空間は、それらを同時に読み込んで構築してる」


「つまり、ここは――俺たちの記憶が“具現化する”場所ってことか」


悠真が呟くと、今度は彼の目の前に“それ”が現れた。


――一人の少年。

どこか見覚えのある後ろ姿。釣り竿を持ち、海辺に立っている。


「……っ!」


悠真は、言いようのない胸騒ぎにかられて、その背中に手を伸ばそうとする――だが。


突如、空間全体が振動した。

紫の霧が渦を巻き、無数の眼――黒い、冷たい眼がこちらを覗き込んでくる。


《高密度魔力反応! 敵性存在、複数接近中!》


「くるぞッ!」


霧から姿を現したのは、人型の影たちだった。

だが、その顔は……どれも、悠真に酷似していた。


「これは……俺……?」


影は何も語らず、無言で武器を構え、殺気を露わに迫ってくる。

剣を構える者、魔導術式を展開する者、そして――見覚えのある、“潜水服”の影。


「これは……過去の“俺の可能性”……!」


セラが叫ぶ。


「この霧の核は、“選ばれなかった未来”を具現化して、干渉してくる……!」


「そんなの、知るかよッ!」


悠真は叫び、影の一人とぶつかる。

剣が火花を散らし、衝撃が空間を歪める。


(俺が、もし違う選択をしていたら……)


(あの時、釣りに出なければ。仲間を救えなければ。誰かを裏切っていたら……)


戦う中で、影たちの記憶が流れ込んでくる。

それは、どれも“あり得たかもしれない未来”。


その痛みと後悔、そして孤独が、悠真の心を軋ませる。


――だが、その中で、一つだけ、強く輝く記憶があった。


それは、転移後に初めてエリンに出会った瞬間。

ラグナ・リリスの艦内でセラと真剣に語り合った夜。

仲間と過ごした数えきれない瞬間たち。


「……違う。俺は、俺が選んだ“今”を誇りに思ってる!」


叫びとともに、剣が一閃。

影が消滅し、空間が静けさを取り戻す。


その時だった。


霧の奥から、もう一つの気配が歩み出てきた。


それは、悠真と全く同じ顔を持ちながらも、瞳に狂気と絶望を宿す“もう一人の悠真”――


「お前は……!」


「そうだ。俺は、“選ばれなかった側の結城悠真”。この世界の“終わり”を望む者だ」


彼の背後に、巨大な裂け目が現れる。

そこから流れ込む闇と霧が、世界そのものを侵食し始めていた。


「選ばれたお前がいる限り、俺は存在できない。だから、お前をここで消す」


「上等だ……!」


こうして、“自己との対決”が始まる。世界の存亡を賭けて――

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