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第23話「白の浮遊都市アーケイン・ブランシュ」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

白銀の光に包まれたその都市は、天空に浮かぶ幻の城のようだった。


巨大なリング状の浮遊構造体に、いくつもの尖塔と空中庭園が広がり、都市そのものがゆっくりと空を旋回している。

空には無数の魔導機械――《浮遊監視端末エア・セントリ》が飛び交い、静かに周囲を監視していた。


「ここが……《アーケイン・ブランシュ》……」


艦橋の窓からその光景を見たエリンが、思わず息を呑んだ。


悠真も、呆然としながらその都市を見つめていた。


ラグナ・リリスはゆっくりと降下し、都市外縁部の“港”と呼ばれる浮遊係留所に着艦した。

そこには、古代の文明と現代技術が融合したような、精緻な魔導建造物が立ち並んでいた。


《接舷完了。周囲の警戒は正常範囲内。だが……この都市、何かがおかしい》


エーリカの声に、悠真が眉をひそめた。


「何かって?」


《ここには人の気配がない。魔力反応はあるのに、生体の存在を一切感知できない》


「無人都市……だと?」


そう呟いたのはセラだった。

彼女は、都市の尖塔を見つめながら、顔を曇らせる。


「いや、もしかすると……これは“都市そのものが生きている”のかもしれないわ」


「どういうことだ?」


「この都市、外観は違うけれど……構造に覚えがあるの。“紅の塔”と、同じ研究機関が建造に関わっていた可能性があるわ」


その言葉に、悠真も表情を引き締めた。


「つまりここにも、俺たちと同じように……“何か”を知る者たちがいたってことか」


エーリカの誘導のもと、悠真たちは外部調査ユニットを編成し、都市内部への偵察に出発することとなった。



都市内部は、まるで静止した時間の中にあった。


装飾の施された通路、透明な天井を流れる雲、音もなく回る空中エレベーター。

全てが稼働しているのに、生きている人間の気配だけがない。


「なんだこれ……全体が“空っぽ”だ……」


シアが辺りを警戒しながらも呟く。


その時だった。


――チリ……ン……


どこかで、小さな鈴の音が響いた。


振り返った先、白いローブを纏った少女が、階段の上に立っていた。

年の頃は十代半ば。

肩までの銀髪に、異国風の細やかな刺繍が施された服装。

だが、何よりも目を引いたのは――瞳。

左右で色が異なる“オッドアイ”。


「来訪者、ようこそ。貴方たちは、“鍵を持つ者”ですね」


悠真が警戒を強める。


「誰だ、君は?」


「私は《アレイシア》。この都市の記録管理者です」


「管理者……? 人間か?」


「半分正解、半分違います。私は元々、この都市に住んでいた研究者の娘でした。ですが十年前、都市全体が“静止”した際、私は都市中枢と同化することになりました」


「同化って……まさか君、都市のAIみたいなものなのか?」


アレイシアは小さく頷いた。


「ええ。私はこの都市の“記憶”を保っている存在。そして、貴方たちに渡すべき“鍵”を託されています」


「鍵……」


悠真の手元の紋章が淡く光った。


「それは、“世界の裂け目”を開くための最後の断片。“霧の深層”へ向かうために必要なものです」


「なぜ俺たちにそれを?」


アレイシアはしばし沈黙したのち、静かに口を開いた。


「――なぜなら、あなたたちはかつてこの都市を“救おうとした”存在だから」


「……?」


「十年前、この都市が“崩壊”しかけた時。時空の狭間から来た少年が、私たちを助けてくれた。その少年の名は、“ユウマ”。あなたと、同じ顔をしていた」


全員が息を呑む。


「……そんなバカな。俺にはそんな記憶は……」


「記憶は封印されている。すべては、“霧の核”に触れた時に明らかになるでしょう」


「……俺は、過去にもこの世界に……?」


アレイシアは微笑んだ。


「だからこそ、今度こそ“終わらせて”ください。世界を歪ませ続けている“霧の根源”を」


アレイシアが手を翳すと、床に魔法陣が展開される。


「ここから“霧の深層”へ繋がるゲートが開かれます。ですが……その先にあるのは、真実と対価です。望むなら、今ここで引き返すこともできます」


悠真は、一度だけ振り返る。

セラ、エリン、シア、ルミエ――そして艦内で待つ仲間たちの顔を思い浮かべる。


そして、静かに頷いた。


「……行くよ。今度こそ、決着をつける」


ゲートが光を放ち始める。


新たな舞台、“霧の核”――すべての始まりの場所へ。

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