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第21話「観測塔セフィロートの番人」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

開かれた塔の扉の先――中はまるで別世界だった。


天井は空のように高く、無数の歯車が宙に浮きながら静かに回転している。

壁には光の文字が浮かび、まるで情報の海が流れているようだ。

中心には一本の巨大な水晶柱が立ち、そこから波紋のように魔力が広がっていた。


塔の内部は、構造そのものが一種の“記録装置”のようだった。


《観測装置と判断。外部干渉により自動防衛機構が稼働していた可能性が高い。……この構造体は、少なくとも千年以上前の“多元境界文明”に由来するものと推測》


「多元境界文明……?」


悠真が呟いたそのとき、塔の中央に佇む仮面の少女が一歩、彼らに近づいた。


「……わたしの名は《ルミエ》。この塔の管理者。そして、“記録の番人”」


彼女の声は感情の揺らぎが少なく、だがどこか温度を持っていた。


「君は、人間……なのか?」


悠真の問いに、ルミエは仮面の奥の瞳で静かに彼を見る。


「元は、そうだった。だが今の私は、塔と融合した存在。ここに残された全ての記録、観測、そして“選別”の任を負う者」


「選別……?」


セラが言葉に反応する。

彼女の胸元の紋章がまた微かに共鳴した。


「あなたも“選ばれし者”なのですね。では……記録の扉を開く資格があります」


塔の中央、水晶柱が淡く輝き出す。


それと同時に、塔の壁に浮かんでいた光の文字が一斉に流れ、映像のように変化していく。


映し出されたのは、遥か昔の地球に似た文明都市――だが、そこでは魔法と科学が融合し、人々は空を飛び、星を渡っていた。


「これが……俺たちの“未来の地球”?」


「厳密には、あなたたちの世界と分岐した別の未来。多元世界のひとつ、“アルシエル・オリジン”」


ルミエは続ける。


「ここは、その断片。“崩壊の前”に、記録を保管するために分離された世界。選ばれし者が来る日まで――この真実を伝えるために」


シアが腕を組んでつぶやく。


「ってことは、この塔はただの遺跡じゃない。“あらかじめ用意された接点”……」


「その通り」


ルミエは手をかざし、映像を切り替える。

次に映ったのは、漆黒の塔――《紅のクリムゾンタワー》。


「これは……!」


セラが目を見開く。


「この塔こそ、あなたのかつて属していた“研究機関”の本拠地。“観測者”と呼ばれる者たちが活動していた場所」


悠真の脳裏に、以前受信した“選ばれし者たちへ”というメッセージが蘇る。


「“裂け目のリフト・オブ・ミスト”と“観測者たち”。その全てが、ここに繋がってるってことか……」


「そう。彼らは、世界の壁を越える装置を開発した。そして……失敗した」


塔の映像に、崩壊する都市、裂けゆく空、そして無数の世界が断片として砕けていく様が映る。


「世界は分断された。そして、記録と意思だけが残った。わたしもその一部」


セラが静かに手を握る。


「じゃあ……私がここに導かれたのは、偶然じゃなかったのね」


ルミエは頷く。


「貴女は“転送試験体”として、ある世界から送り出された最初の成功例。そして、この塔における“最終観測者候補”」


「私が……?」


「貴女には選択肢があります。“記録を継承し、この世界を導く者”となるか。それとも――」


「それとも?」


「この真実を封印し、仲間と共に生きるだけの道を選ぶか。いずれにせよ、時間はあまり残されていません」


そのとき――塔の振動が大きくなる。

外から再び強い魔力の波動が押し寄せた。


《警告。空間にノイズ。ラグナ・リリスからの通信が遮断されました》


「……これは、誰かが外部から干渉している」


ルミエの顔が強張る。


「まさか……封印領域が……!」


悠真が即座に反応する。


「戻らなきゃ、ラグナ・リリスに!」


「その前に」


ルミエは彼の前に歩み出て、小さな銀の鍵を差し出した。


「これは“次の扉”への鍵。あなたたちがこの先に進むなら、必ず必要になる。……でも、本当に覚悟はありますか?」


悠真は鍵を受け取り、ゆっくりと頷いた。


「あるさ。俺たちは、もうこの旅の意味を知ってしまった。なら、最後まで見届けるしかないだろ」


ルミエは、わずかに微笑んだ。


「――では、真実の先へと、どうか迷いなく進んでください」



塔を飛び出した悠真たちを待っていたのは、再び広がる混沌の空――


その中央に、明確な“敵意”を持った存在が浮かんでいた。


それは黒いローブに身を包み、仮面をつけた人物。


「“選ばれし者”よ。これ以上、踏み込むな」


その声には、冷たい怒りと、どこか悲しみが混じっていた。


そして、空が裂け、戦いの幕が上がる。

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