第109話「契約の時」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
「因果座標、再定義完了。次元固定開始――」
エーリカの冷静な音声が、世界そのものの構造を更新する宣告となって広がった。
《終末回廊》の最深部、「虚無の核」に繋がる大空間には、まばゆい光の奔流が渦巻いている。
ラグナ・リリスの魔導炉が全開放され、新たな世界構造を生成していた。
その中心に立つのは、結城 悠真。
リオン=カーディア、ゼイン=コード、シア=ファルネウス、エリン=グレイスはそれぞれの位置から、彼を見つめていた。
だが、次の瞬間。
「——遅かったな、人の子どもたち」
それは、"声"というより、"存在"そのものが振動して語りかけてきた感覚だった。
虚無の核。その奥に封じられていた「彼」が、解放されたのだ。
黒い霧が渦を巻き、そこから現れたのは、背中に六枚の翼を持つ“影の巨人”。
《エル=ヴェルダイン》。
かつてこの世界の神々の一角でありながら、因果の反転を求めすべてを滅ぼそうとした存在。
「未来を選んだか。愚かな。全ての希望が、やがて絶望に転じることも知らずに」
「……お前を、止めるためにここまで来た」
リオン=カーディアが剣を抜き、ゼイン=コードが無言で拳を構えた。
シア=ファルネウスは杖に力を込め、エリンは静かに仲間の背に隠れながら、左手の封印をそっと解いていた。
悠真は一歩前に出る。
「お前は……この世界の“終わり”そのものなんだな」
「その通り。そして私は、お前たちの選択の“代償”だ」
再定義によって世界の構造が変わったことで、因果のバランスが崩れた。
その揺り戻しとして、世界が呼び起こした最後の存在。
それが、エル=ヴェルダイン。
だが悠真は、決して後退しなかった。
「でも、終わりが来るなら、それは“俺たちで決める”。お前に好きにはさせない!」
ラグナ・リリスの艦体が、光の鎧のように彼らの背後に展開する。
エーリカの意志が艦全体を制御し、五人にそれぞれの専用装備を与える。
■ リオン:双剣・《オルタナ・イグニス》
■ ゼイン:破撃手甲・《ガイア・バイン》
■ シア:精霊術杖・《エーテル・ルミナ》
■ エリン:幻想召装・《リグレット=シード》
■ 悠真:指揮装備・《コアリンク・ルミエール》
「契約プロトコル、起動。五者連環、共鳴率96.7%。」
エーリカの声が最終指令を伝える。
「敵因子《エル=ヴェルダイン》、撃破優先度:最上位。作戦名《再生ノ鍵》、発動を許可します」
ラグナ・リリスの魔導核がさらに一段階、発光を増す。
艦そのものが巨大な術式陣として機能し、五人の力が一つに束ねられていく。
悠真は叫んだ。
「みんな、行くぞ——これは、世界を“生かす”ための戦いだ!」
黒き神と、五つの光。
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