第105話「セフィロトの扉」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《セフィロト・ゲート開放》
無音の爆発のように、眼前の空間が反転する。
ラグナ・リリスの艦首がゆっくりと“門”を通過したその瞬間、視界は歪み、現実の構造そのものが書き換わっていく感覚に包まれた。
「これは……次元層が複数、交差してる……?」
シア=ファルネウスが、目を見開いた。
通常空間とも、深淵とも違う。
《セフィロトの門》の先は、あらゆる因果と存在が交差する“概念層”だった。
「情報濃度が……濃すぎる。普通の生命体じゃ精神が持たない」
エリン=グレイスは補助フィルターを何重にも重ね、かろうじて視覚情報を処理する。
その中で、リオン=カーディアだけが、まっすぐに中央を見据えていた。
そこに在るのは――人影。
いや、それは“人の形”を模した、意思の具現だった。
《ようこそ、継承者たちよ。――私は“ラグナ=アクトゥス”。かつての第一艦長であり、この艦の創造主》
静かで、なおかつ重く、魂に響く声。
それはAIでも幻影でもない、“意志そのもの”が呼びかけてくるようだった。
「あなたが……ラグナの始まり?」
ゼイン=コードが前に出ようとするのを、リオンが制した。
「違う。これは“記憶の核”だ。ラグナの意志が、最深部に封印していた真実……」
ラグナ=アクトゥスは、ゆっくりと歩み寄る。
《この艦は、もともと“終末回廊”を破壊するために作られた。だが、我々はある時、気づいてしまった。
この回廊自体が、世界を支える柱の一つであることに》
静寂。誰も言葉を継げなかった。
《柱を壊せば、世界は崩壊する。だが、柱を放置すれば、“終末”は遅かれ早かれ訪れる》
《我々は決断を迫られた。“誰かが、責任を持ってこの構造を維持し、監視し続けなければならない”》
「――それが、ラグナ・リリス」
リオンが、低く呟いた。
《正確には、“意志を持つ艦”だ。人の手を離れても、必要な時に介入し、必要な者を導けるように》
ゼインが前に出る。
「じゃあ……“支払い”っていうのも?」
《あれは“鍵”だ。終末回廊の奥、最も危険な隔壁を開くためには、常に“代償”が要る。記憶、名前、絆――そのどれかを》
「それを知ってて、我々を導いてきたのか?」
エリンの問いに、ラグナ=アクトゥスの表情が曇る。
《君たちがここに至ったのは偶然ではない。ラグナ・リリスが“選んだ”んだ。終末の先にある可能性を、託すに値する魂として》
その時――艦内が激震した。
《警告:セフィロトゲート内に“外部構造体”の侵入を確認》
《対象:天災兵器《リリス・コードΩ》――かつて放棄された旧型のAI艦。ラグナの“影”》
「来やがったか……!」
リオンが即座に艦橋へ通信を飛ばす。
「全戦闘配置!深淵干渉レイヤー第7層での迎撃を準備!目標は――“俺たち自身”だ!」
「……リリス・コードΩ?それって……!」
シアが言葉を詰まらせた。
「ああ、俺たちの失敗の記録そのものだ。
ラグナ・リリスが進化の過程で捨てた、破壊衝動の残滓」
ゼインが拳を握る。
「“影”と向き合わなきゃ、“進化”はできないってわけか……!」
リオンが背後を振り返り、静かに言う。
「エーリカ、全系統制御を俺に預けろ。こいつは艦長として、俺が迎え撃つ」
《了解。ラグナ・リリス、全制御系統をリオン=カーディアに移譲》
艦首が動く。
《深淵迎撃態勢、最終段階へ移行》
ラグナ・リリス、その真なる咆哮が響き渡る。
「さあ、行こう。ラグナの名のもとに、俺たちの未来を撃ち抜く!」
ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!
モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!
過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。