第104話「深海の咆哮」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《中枢干渉レベル、臨界突破》
《ラグナ・リリス》の全身を貫くように、異質な魔力がうねり始めた。
ブリッジの空気が重く淀む。
まるで艦そのものが、深海の底から引きずり込まれているかのようだった。
「深淵が……艦のコアに侵入してるのか?」
リオン=カーディアの声は冷静だったが、その眉間にはわずかな焦りがにじんでいた。
「制御系に異常はないけど……魔導演算式の一部が、“外部意思”によって書き換えられてるわ!」
エリン=グレイスが警告する。
彼女の操作する端末上には、無数の干渉コードが奔流のように流れていた。
「まるで艦そのものが――何かに“対話”を求めているみたい」
その瞬間、艦内にノイズが走る。
《――問う。犠牲は、赦されるか?》
《ラグナ・リリス》のAI、エーリカではない。
もっと深い、原初の“意思”が、艦内に語りかけていた。
「来たか、声なき神……!」
リオンは艦長席の横に立ち、深く息を吐いた。
「この艦は、多くを犠牲にしてここまで来た。だが、それは“赦し”を得るためじゃない」
《問う。記憶を棄て、絆を断ち、それでも“進む”理由は何か》
そこへ、転送ゲートから二つの人影が現れた。
ゼイン=コードと、シア=ファルネウス――。
「間に合ったか……!」
ゼインが息をつき、リオンへ軽く頷く。
「深淵は……俺たちの魂を試してる。“存在の根拠”を問われてるんだ」
「存在の根拠……?」
エリンが小さくつぶやいた。
「誰かのために生きること。誰かの犠牲に応えること。
その“答え”がなければ、深淵に飲み込まれて終わる」
ノイズが再び走る。
《問う。記録、意思、犠牲、忘却、真実――その全てを通過したお前たちに、“名乗る資格”はあるか?》
リオンが、ゆっくりと前に出た。
「リオン=カーディア。この艦を導く者として、ここに在る」
ゼインも、剣の柄に手を置いたまま言う。
「ゼイン=コード。記憶なき旅の果てに、ようやく自分を取り戻した」
「エリン=グレイス。失われた名前とともに、心はこの艦にあるわ」
「シア=ファルネウス。私は“守る”ことを選び続けてきた。それが、私の答え」
沈黙が流れる。
数秒……あるいは永遠とも思える時の後、艦内に鐘のような“音”が響いた。
《認証完了。“存在証明”を確認》
その瞬間、艦内に満ちていた重圧が、ふっと消えた。
まるで、深海からようやく浮上したかのように――。
《深淵融合機構、安定化》
《ラグナ・リリス》が、完全に“自我”を取り戻したのだ。
「……やったのね」
エリンの肩から力が抜ける。
「いいや。始まったばかりだ」
リオンが艦橋の正面を見据える。
艦のモニターには、**深淵の奥に蠢く“核心”**が映し出されていた。
それは、かつてラグナの設計者たちが“開いてはならぬ扉”として封印したもの――
《最終隔壁“セフィロト・ゲート”》が、ゆっくりと開かれようとしていた。
「――そこに、“真の敵”がいる」
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