第103話「深淵の門、再び」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《エネルギー循環系、正常。中枢航行炉、再始動完了》
《艦体自己修復率、81%。魔導結界層の一部に亀裂あり》
次々と点灯していくコンソールの光が、
再び《ラグナ・リリス》の命が脈打ち始めたことを告げていた。
「間違いない……目覚めたんだな、ラグナ」
リオン=カーディアは、かつて自分の座っていた副艦長席に手をかける。
その背後ではエリン=グレイスが、記憶装置の起動を補助していた。
「だが……この反応、妙に重い。
まるで艦そのものが、“底なしの何か”に触れているみたいだ」
《接続ログ:深淵域より干渉波検出。未確認魔導式との接触を記録》
「深淵域……ゼインたちが向かったあの最深層か」
そのとき、ブリッジのメインモニターが自動的に切り替わった。
そこに映し出されたのは――黒霧に包まれた空間。
虚空に浮かぶ“門”のような構造体が、ゆっくりと開いていく。
「これは……?」
エリンが息をのむ。
《観測不能領域“門番機構”からの信号受信。対象:ゼイン=コード、シア=ファルネウス》
映像が切り替わる。
そこには、次元の狭間を渡るゼインとシアの姿があった。
◇ ◇ ◇
――数時間前、深淵域・第零階層
シア=ファルネウスは、身体を魔導障壁で覆いながら、歪曲空間の干渉波を遮断していた。
ゼイン=コードはそのすぐ隣で、艦外用の魔導端末を用いて、次元門への接続を試みていた。
「ここが……“門番”のいる場所……?」
「厳密には、“門そのもの”が生きている。俺たちに試練を与えてるんだ」
その瞬間、次元空間が歪む。
まるで心臓が脈打つように、門の奥から“意志”のようなものが流れ込んできた。
《――資格なき者、退け》
「来たな……!」
ゼインが構えを取る。
その手には、かつてリオンから託された“識別印章”が輝いていた。
「だが俺は、“記憶を捨てた”ことでここに来た。
もう迷いはない。前へ進む!」
黒の風が渦巻く。
虚空から現れたのは、かつての《異端技術》で構成された魔導兵――虚数戦騎ヴァルグレア。
シアが駆ける。
雷撃を纏った蹴りが、ヴァルグレアの装甲に衝突する。
「ゼイン、今のうちに!」
「任せろッ!」
ゼインは印章を掲げ、魔導式を展開する。
空間が断裂し、反転するように《ラグナ・リリス》の座標と接続する閃光が走る――。
◇ ◇ ◇
「ゼイン=コードとシア=ファルネウスの座標を捕捉。
現在、次元融合ポイントに到達中」
《航行炉に波動干渉。転送軸が開きます》
リオンは静かに立ち上がる。
「――連れて帰るぞ。俺たちの仲間を、全員」
その瞬間、ブリッジの艦内照明が一段暗くなり、
魔導回路が深紅に染まる。
《外部接続中の構造体が“艦の中枢”へと接続を試行中》
「……何者かが、《ラグナ・リリス》を“媒介”にしようとしている?」
「深淵が……艦を使って、現世へ出ようとしてるの?」
エリンの声が震える。だが、リオンの目は静かだった。
「だからこそ、今――俺たちがここにいる」
「……ええ。必ず止めましょう。
だってこの艦は、誰かの犠牲の上に成り立ってるのだから」
再起動した《ラグナ・リリス》が、
深淵との最終対話へと舵を切る――。
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