第100話「世界の更新」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
光に包まれていたはずの意識が、ゆっくりと輪郭を取り戻す。
肌に触れる風、遠くに聞こえる潮騒、そして――誰かの呼ぶ声。
「……結城、起きろ。朝だぞ」
その声に、悠真は目を開けた。
そこは――海辺の漁村だった。
だがそれは、彼がかつて釣りをしていた“現実の世界”ではない。
それでいて、確かに見覚えのある情景だった。
「……ここは……?」
起き上がった悠真は、手を見下ろす。
確かに身体はある。
傷もなく、機械の義手でもなかった。
まるで、すべてが“元に戻った”かのようだった。
「やっと起きたわね」
背後から聞こえたその声に、悠真は振り返る。
「エリン……!」
エリン=グレイス。
確かに、そこにいた。
彼女の瞳は記憶を保っていた――そう、以前と同じく、“すべて”を知る者の目だった。
「ここは“選びなおされた世界”――《Genesis Protocol》の成功後に構築された新たな時空領域よ」
「成功……したのか……!」
悠真の胸に、こみ上げてくる安堵と実感。
だが、喜ぶにはまだ早かった。
エリンが静かに告げる。
「一部の記憶と存在は再定義されたけど、すべてが完全に元通りというわけではないの。私たちだけが、真の“更新”の記憶を持ってここに存在している……おそらく、“外部意志”としての資格を得たから」
「他の皆は……?」
その言葉と同時に、村の港から誰かの声が聞こえた。
「おーい、悠真ー! 網の修理手伝ってくれよー!」
見るとそこには、ゼイン=コードが――いや、村の青年として“再定義”されたゼインが、笑って手を振っていた。
シア=ファルネウスもその隣にいた。
リオン=カーディアも、アレク=ヴァン=ルードも――
皆、それぞれの“新しい人生”を歩んでいるようだった。
「記憶は?」
「部分的には残っているみたい。でも……“思い出したくない記憶”として、深層に沈んでるの。選ばなかった道として、彼らの心のどこかに残ってる……」
悠真は海を見つめる。
穏やかで、平和な世界。
だが――それは、ただの幸福では終わらない。
「エーリカは……?」
「艦はまだ存在している。ただし、封印された状態で、この世界の“深部”に沈められている。アクセスするには、再び我々自身が“起動者”としての覚悟を示す必要があるわ」
悠真は立ち上がる。
この世界が平穏に見えるならば、それだけで終わらせるべきではない。
彼らは“選ばされた”のではない。
“選び直した”のだ。
「それじゃあ……もう一度、“艦”に乗ろう」
「選ばれたのが俺たちなら、今度は――俺たちが“物語”を選ぶ番だ」
エリンは微笑んだ。
「ええ。世界を、守るためじゃない。未来を、創るために」
――そのとき、彼らの背後で、海の底から一筋の青い光が立ち上った。
“ラグナ・リリス”が再起動しようとしていた。
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