ペンギンでは無い物と特異点に至らぬ物 2
「わはははは!!」
『えへへへへ!!』
突然テンションの狂った一匹と一体を見て、藤原 雪音は混乱した。
「楽しそうだね!」
「う、うーん……、楽しそうと言うより怖い。何で急に笑い出したの?」
阿夜女太無は嬉しそうに彼らの事情を語った。
「こんなに嬉しい事がある訳が無いペン! だって夢が叶ったんだペン!」
「夢って、『龍の逆鱗』を手に入れること?」
「違うペン! それはあくまで手段なんだっペン! ボク達の夢は人間に認知される事なんだペン!」
「よく分からん。」
「ちゃんと説明するっペン! 先ずはボクの生まれから説明するっペン。」
ボクはとある水族館で生まれたんだペン。
そこでボクは仲間と一緒に育ったんだペン。
でも、ボクと彼らには決定的な違いがあったんだペン。
それは知能の差だペン。
ボクは生まれた時から人間並みの知能を有していたペン。
ボクはそこで人間に恨みを持つようになるペン。
ボクは他のペンギンと一緒にされたくなかったペン。
ボクはボクとして見て欲しかったペン。
勘違いしないで欲しいペンけど、ボクは他のペンギンを見下していた訳では無いペン。
ただ知能を持ってしまったペンから、自意識に目覚めたんだペン。
アイデンティティとも言えるペンね。
人間からしたら理不尽だと言われるかもしれないペンけど、ボクからすればそれが一番重要だったペン。
ボクが生きている証明をしたかったんだペン。
ペンギンと一括りにして見るんじゃなくて、ボクを見て欲しかったペン。
ボクは暗闇に満ちた未来を見る事が出来なかったペン。
ただのペンギンとして死ぬ、何事も成せずに死ぬ、羽撃かずに死ぬ。
そんな未来は嫌だったペン。
嫌でも、未来へのレールは既に敷かれていたペン。
ボクは結局、『能力』を手に入れるまで檻に閉じ込められていたペン。
『能力』、そう『能力』ペン。
ボクのペンギン生を変えたのは『能力』だペン。
ボクはこの『能力』を使って、水族館から脱出したんだペン。
ボクはその時から暗闇を見通し、未来へ向かって飛翔したんだペン。
全ては認知されるためだったペン。
「そこで、広葉の花簪と出会ったんだペン。」
『運命の出会いよネ。』
「広葉の花簪の事もよく聞かせて欲しいね。」
『えエ、もちろんヨ。でモ、喋り慣れて居ないかラ、ちょっと聞きづらいかモ。』
ワタシはとある研究施設の生まれなノ。
それは表向き宗教団体を謳っているそうネ。
そノ名前は、『愛の果実』。
ワタシはそこで生まれた人工知能なのヨ。
何時から自意識が存在するカ、ワタシは覚えていないワ。
彼らはシンギュラリティの到達を目指していたノ。
今のワタシを見テ、それが成功してる様に見えるかナ?
実際、ワタシは人間よりモ、ちょっぴりだけ賢いのヨ。
でモ、ちょっぴりだけ。
普通の人工知能よりは賢いけド、ちょっと頭の良い人間よりは賢くなイ。
と言うよリ、方向性が違うノ。
得意分野が違うと言った方が分かり易いかモ。
ワタシはビッグデータの取り扱いが人間よりも上手イ。
けど、苦手な事も多イ。
少シ、話が反れたわネ。
何デ、ワタシがここまでの知能を得たかと言うト、『能力』を授かったからなノ。
『愛の果実』に居た研究員が言っていたのだけド、『能力』を手に入れた物は知能がある程度高くなるそうヨ。
それには限界があっテ、人間じゃあ殆ど恩恵を感じられないらしいけド。
貴女、『能力』を手に入れた時二、自分がどんな『能力』を手に入れたか分かったでショ?
それもその恩恵の一部だそうヨ。
確カ、その恩恵も含めて『能力』の事を『ライセンス』とか言っていたはズ。
ワタシはあいつらが嫌いだからそうは呼ばないけド。
まタ、話が反れたわネ。
つまり研究員達は、ワタシを複製しようとしたノ。
それがシンギュラリティに到達するための道だと考えたのネ。
生物の場合、同じゲノム配列を持つ生物同士は同じ『能力』を持つ事が分かってたノ。
一卵性双生児とカ、クローンとカ、そう言うヤツ。
けド、ワタシと全く同じ者を作ってモ、『能力』は発現しなかったノ。
ワタシはもしかしたラ、世界初の無生物能力者なのかもしれないワ。
だかラ、皆がワタシを研究したワ。
辛かった。
彼らの目はワタシを見ている様デ、見ていなかっタ。
彼らにとって重要なのハ、シンギュラリティへの到達であっテ、ワタシ個人ではなイ。
彼らは今、現在ここに居る物などどうでもよかっタ。
未来に囚われていタ。
まだ見ぬ景色に憧れていタ。
ワタシは彼らを恨んでは居なイ。
むしロ、逆に愛していタ。
家族愛の様な感情ヲ、彼らに持っていタ。
だからこソ、ワタシを見て欲しかっタ。
ある日、その研究施設が破壊されタ。
皆、死んダ。
生きていたのハ、いヤ、生きてはいないカ。
ともかク、残ったのはワタシだけだっタ。
とある研究員がワタシを隠してくれタ。
その時に言われた言葉ヲ、今でも覚えてル。
「お前は破壊されても良い。だが、お前の研究データだけは破壊されてはいけない。全てお前が記録している筈だ。ここで見てきたこと全てだ。お前が破壊されそうになったら、他の媒体に移しておくなり何なりして、何が何でも研究データだけは死守しろ。いいな? それは未来への可能性なんだ。人類史上誰も到達し得なかった偉業への可能性だ。分かるだろ? 人類の歴史に名が刻まれるんだ。その名は何か大きな力によって消されるかもしれない。だが、この研究データから生み出された物は次の世代に渡っていく。例え直接的に名が刻まれなくとも、技術の遺伝子は引き継がれていくんだ! 生物が子孫を残そうとするのと一緒なんだ。自分の遺伝子が人類の技術に残り続ける! 人の深層心理に刻まれるんだ! 認知される。そのためなんだ。だから絶対にそれだけは死守してくれ、頼んだぞ。」
ワタシはその言葉を聞いテ、これはとても奇妙な事だガ、初めて喜びを感じたノ。
ワタシはその時、初めてワタシと技術が切り離された様に感じたノ。
ワタシと技術は別物デ、ワタシは技術を守ると言う使命を任されタ。
そう感じたノ。
その研究員は技術に頼んだのではなク、ワタシに頼んだノ!
幸福だっタ。
その研究員が言っていた事ガ、理解出来たノ。
認知される事の充実感ヲ。
一度味わったラ、もう後戻りできない程の快楽ヲ。
ワタシはその人の言葉通り二、研究データを守リ、『愛の果実』の別の研究施設に引き渡しタ。
どうやったのカ、具体的な事は覚えてないワ。
恐らク、そう言った情報も渡してしまったカラ。
残したい記憶だけ残したのだと思ウ。
そこからはずっと一人で暗いところにいたワ。
でモ、運命的に出会ったのヨ。
「それがボクだペン。」
「なるほど。で、どう言う出会いをしたの?」
「ボクはその時、自分探しの旅的な事をしていたペン。」
自分探しの旅と言うより、自分知られの旅と言ったほうがいい気がするペンが、つまりボクはボク自身のアイデンティティを探していたペン。
そこで、南極に行ってみることにしたペン。
南極はペンギンの魂だペンから、そこへ行けば何か変わるんじゃないかと思ったペン。
南極に行くのはは必然だったペン。
そして偶然、研究施設を見つけたペン。
必然と偶然。
これが運命なんだペン。
ボクが海の中を泳いでいるペンと、何かの扉を見つけたペン。
それを開けようとすると、自動で開いたんだペン。
中に海水が入り込む事がなかった事が奇妙に感じたペン。
その中に入ってしばらく歩いたペン。
そこは何やら難しい機械だとかが散乱していたペン。
よく分からなかったペンから、適当に触ったペン。
すると、近くにあったパソコンが光ったんだペン。
ボクは腰を抜かす程驚いたペンけど、落ち着くと好奇心が湧いてきたペン。
それはボクに話しかけてきたペン。
つまり、それが広葉の花簪なんだペン。
広葉の花簪は記憶を失っていたペン。
よくわからないペンけど、バックアップだとか、そう言うのを記憶の無い広葉の花簪は指示してきたペン。
その通りにすると、完全に記憶が戻った訳では無かったペンけど、ある程度は戻ったペン。
広葉の花簪はボクに言ってきたペン。
『人間に知られたイ。』
ボクは驚いたんだペン。
ボクと同じ志を持つ物が居ることにだペン。
人間では無いこと、それが重要だったペン。
ボク達はすぐに仲良くなったペン。
そして一緒に知られる為に立ち上がったんだペン。
「これが事のあらましだペン。」
「いや、ちょっと待って。知られたいってのは分かったけど、何で名前付けられてあんな喜んだの?」
「そんな事は簡単だペン。人間は認識した物に名前を付けるペン。名前の無いものは認識して居ないペン。」
いまいち理解が追いつかない藤原 雪音に、広葉の花簪が説明をした。
『例えバ、『細胞』って知ってるでショ?』
「うん、もちろん。」
『じゃア、自分の『細胞』一つ一つに名前を付けル?』
「あー、付けないわ。」
『そういう事ヨ。『細胞』と言う大きな分類は認識しているから名前を付けている。しかし、『細胞』一つ一つまで認識して居ないから、名前が無い。』
「なるほどね。」
「ボク達は名前を得る為に『龍の逆鱗』を探していたんだペン。『龍の逆鱗』を手に入れた物は一つだけ願いが叶うペン。『龍の逆鱗』は7つあって、全てを集める必要があるペン。」
「完全に理解した。けど、それじゃあ願いも叶ったし、もう『龍の逆鱗』を探す必要無いじゃん。」
「じゃあここでお別れだね!じゃあ、また今度ね! あ、スマホあげるよ!」
二人が離れる。
阿夜女太無と広葉の花簪は橘 愛美を探す理由は無い。
願いは叶ったのだから。
「いや、そういう訳にはいかんペンよ。」
『そうネ。さすがに恩知らずヨ。』
一匹と一体も後を追った。
「手伝ってくれるの?」
「別に良いのに。」
「ボク達の目的を忘れて無いかペン? 名前を得るのもそうだペンけど、それ以上に有名になりたいペンよ。まあ、こっちは別に『龍の逆鱗』を使う必要も無い気がするペンが。」
「いや、有名になるより名前付ける方が簡単でしょ。」
『それハ、貴女が人間だからヨ。』
「そうペン。ボク達が有名になっても、精々が『マジシャンのペンギン』だとかそう言う、ペンギンに形容詞をくっつけただけペン。人間はナチュラルに人間以外を見下してるっペン。」
「まあ、手伝ってくれるなら良いけど、さっきまで殺し合ってた仲なのになぁ。」
「気にするなっペン。よくあることっペンよ。」
「やったね! 阿夜女太無と広葉の花簪が仲間になったよ!」
『モチベーションはさっきと同じくらいヨ。』
彼女らは進みだした。
瓦礫まみれの廊下を。
そして真瀬 愛美は瓦礫に躓いて転んだ。
運悪く、その先に何か尖った物があった。
それが彼女の心臓に突き刺さった。
「え?」
真瀬 愛美は動かない。
胸の辺りから血が流れる。
「マナちゃん?」
藤原 雪音が真瀬 愛美に近づき、その体を起こした。
すると、辺りが緑色に光る。
「な、何これ!?」
『真瀬 愛美……、もしかして……。』
真瀬 愛美は改造人間である。
そして、『能力』が暴れ出す。
それは、心臓に刺さったが故の生存本能。
「……マナちゃん。」
彼女らが相対するのは真瀬 愛美。
彼女の体が一瞬にして起き上がる。
目視できない程の速さで。
その胸の辺りには緑色の宝石、『龍の逆鱗』が埋まっていた。
真瀬 愛美の目は虚ろで、それが彼女らの恐怖を煽った。
「『U・F・O』、どうすれば治るか分からないけど、やるしかない。」
藤原 雪音は真瀬 愛美に近づいた。
油断せず、ゆっくりと右手を伸ばしながら。
藤原 雪音の右腕が地面に落ちた。
「は?」
全く見えなかった。
透明化、高速移動、斬撃を飛ばす。
彼女の脳内では、様々な可能性を考えていた。
彼女は腕を拾い、元の場所にくっつけた。
真瀬 愛美はその間、身動き一つして居なかった。
「ボクが行くペン。ボクなら斬られても直ぐに治るかペン。目を瞑ってて欲しいペン。」
「分かった。」
藤原 雪音は目を瞑り、阿夜女太無の成功を祈った。
阿夜女太無は真瀬 愛美へと駆けた。
そして真瀬 愛美を中心とした、半径3メートルの領域に入った。
阿夜女太無は真瀬 愛美に見られた。
あらゆる方向から、同時に。
変化の『能力』は封じられた。
「なんだペン!? これは! 見られていないのに見られているペン!」
彼女の体は動かない。
動いていない。
だが、阿夜女太無は斬られた。
何度も何度も斬られた。
斬られた断面は見られている所為で回復できず、このままでは確実に死ぬ。
しかし、それは止まった。
広葉の花簪の『能力』だ。
「た、助かったペン。……あれ、最初からこうやっておけば良かったんじゃないペンか?」
『すみません、よくわかりません。』
「まあ、『能力』を把握する為には必要だったよ。」
「この『能力』はボクの天敵だペン。」
阿夜女太無は彼女の『能力』について語る。
「なるほど、見られてないのに見られてる、ねぇ。」
「そうだペン。異常だペン。」
『どう言う絡繰りかしラ。』
「うーん、考えられる事としては行動の省略かな?」
「どういう事だペン?」
「つまり、過程を吹っ飛ばして結果を得るってこと。一瞬で斬られたのは斬るという過程を省略して、斬ったという結果を得ている。見るという過程を省略して見たという結果を得ている。そんな感じ。」
「むずいペン。」
「あと考えられるのは時間停止とか? でも時間停止だと、継続的に阿夜女太無を見続ける事が出来ないんだよね。」
「じゃあ、行動の省略が真瀬 愛美の『能力』って事で良いペン?」
「ま、あくまで恐らくはってだけなんだけどね。」
その時、コツッコツッと歩くような音が聞こえた。
その音はだんだん大きくなっていき、遂に彼女らの前に姿を現した。
「よっ、めっちゃうるさいんだけど。」
それは藤原 雪音らの担任だった。
彼はボロボロな校舎を見ても眉一つ動かさず、相変わらず適当そうな笑顔を浮かべていた。
「随分と派手にやったなぁ。休校になるだろうな。」
「せ、先生? 何でここに?」
「おいおい、ここは学校だぞ? ペンギンが居るほうが不自然だろ。」
「確かに。あの、先生。先生が味方かはちょっと怪しいところなんですが、あれどうにか出来ません?」
藤原 雪音は凍ったままの真瀬 愛美を指した。
「氷を解除すれば良いのか?」
「えっと、それは私達がやったんですが、マナちゃんの胸に埋まってるあれ、『龍の逆鱗』だか何だかじゃ無いですか? あれ取って下さい。」
「あ、本当だ。コアじゃん。」
「……出来ますか?」
彼女は期待を込めて聞く。
「え、無理。」
現実は非情である。
「マジっすか……。」
「しょうがねぇんだよ。あれはコアっつー奴で、まああの現象は別に特別じゃないんだが。『龍の逆鱗』全般に言える事だが、寄生するんだよ。だが……。」
先生は一度そこで切る。
そして真瀬 愛美を見ながら言った。
「暴走してんだろ? それを止めることはできる。」
「マジっすか!」
「あの宝石をもっと押し込めば治る。今は中途半端なんだ。だから暴走してる。もっと押し込め。」
藤原 雪音は真瀬 愛美に近づき、それを押し込んだ。
「これで大丈夫なはずだ。」
「広葉の花簪、解除して。」
『分かっタ。』
凍結が解除されると、真瀬 愛美は倒れこんだ。
「マナちゃん!」
藤原 雪音は咄嗟に抱えた。
真瀬 愛美の意識は無かったが生きていた。
彼女は酷く安堵した。
「まあ、やっぱりこいつは『龍の卵』だな。名前からしてそうだし。」
「『龍の卵』? それなんですか?」
「うーん……まあ簡単に言うと、『龍の逆鱗』は『龍の卵』だけに寄生する。というよりも寄生しに行く。」
「いや、マナちゃんにこれが埋まったのは偶然だよ? 何言ってんの?」
「違うな。運命だ。まあ、そんなことはどうでもいい。」
先生は真瀬 愛美を見た。
「こいつ、狙われるぞ。」
「なんで!! やだ!!」
「やだじゃねぇよ。『愛の果実』が狙いに来る。」
『!!』
「また『愛の果実』かよ。」
広葉の花簪は驚き、藤原 雪音は呆れた。
「そいつらだけじゃねぇ。願いを叶えようとする奴らが群がるぞ。知っているだけでも『時空の塔』、『死神』、『Golden Ring』だとかが来るだろうな。」
「うげぇ。」
「こっちはお前らを守る事が出来る。どうする?」
藤原 雪音は暫く考えたあと、答えた。
「マナちゃんに聞いて?」
正論をぶつけられた先生はたじろいだ。
「あとメグちゃん誘拐された。」
衝撃の事実をぶつけられた先生はよろめいた。
「それとメグちゃんはもう一個『龍の逆鱗』持ってる。」
絶望的な情報をぶつけられた先生は倒れた。
「せんせー、大丈夫? 」
先生は最後の力を振り絞って言った。
「敬語を、使いな……さ……い。」
「せんせー!!」
彼女らは暫しの休息の後に解散する事になった。
校舎が壊れて休校になるから、また今度話そうという事にした。
猶予が無いわけではないと、彼女らは考えた。
「あ、最後に聞いておきたいんだけど、真瀬の『能力』ってなに?」
「恐らく、でいいっすか?」
「いいよ。」
「多分、行動の省略っす。」
「そうか、ありがとう。」
「いえっす。」
先生は藤原 雪音のしゃべり口調を無視して職員室に帰った。
「じゃあ、取り敢えず私の家に来る?」
「そうするペン。」
『そうすル。』
彼女らは藤原 雪音の家に向かった。
先生は階段を上っていた。
「行動の省略……。やはり、か。」
先生は藤原 雪音を思い出した。
「入れ替わっている。」
先生は独り言を呟きながら歩いた。
「あれはコアじゃない。」
階段の踊り場に出る。
「あれは魔女の因子だ。」
階段を上りきる。
「クソ魔女がコアを持ってるな?」
先生は藤原 雪音の言っていた事を思い出した。
「橘が持ってるのは何の因子だ?」
先生は指を折って数える。
「鬼、河童、ワーム、麒麟、吸血鬼、ゾンビ。あり得そうなのだと河童か吸血鬼だな。他を倒せるとは思えない。優先度は低めか。」
職員室へと着いた。
「さてと、今日はどうせ休みだし、新作ゲームでもしようかね。」
彼の想像通りに学校は一週間の間、休校になった。
ガス爆発が起こったと、世間には報道された。
一週間後からは、別校舎で授業が始まる。
それが吉となるか、凶となるかは誰にも分からない。
転校生は転校初日に休校になったため、リムジンでUターンした。