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勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~  作者: わんた


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私を見たなぁぁぁぁッッ!!

 人間のフリをするのはやめたようで、金髪の男は顎が外れるほど大きく口を開いて太い触手を出し、鞭のように使って攻撃してきた。受け止めるなんてできない。光属性の力で浄化させることはできるだろうが、本体を残して魔力切れになってしまう。最後の一撃は、まだ取っておかなければならない。


 トエーリエたちや村長の家から離れるようにして攻撃を避ける。金髪の男は俺しか見えてないようで気づけてない。


 能力だけ見れば中型以上なのは確定。知能の高さを考慮すればメルベルのような特殊な大型と認定しても良いだろう。人間のような狡猾さはなく、ある意味素直なところは汚染獣らしいといえば、らしいか……? 会話できる個体なんて二匹目なので、断言できるほどの情報がないな。


 触手一本だけでは当たらないと思ったのか、両手の指がクネクネと動き出すと急速に伸びた。槍のように真っ直ぐと伸びてきたので、前に飛ぶようにして転がり、回避する。勢いは殺さず立ち上がりながら跳躍し、屋根の上に乗った。背後から轟音が聞こえたので、太い触手が地面を叩いたのだろう。立ち止まっていたら潰されていたな。


「ォォォォオオオオッ!!」


 金髪の男が汚い声を上げながら太い触手を横に振るった。足場にしている家の壁が破壊されて崩れていく。転ばないようにバランスを取りながら隣の家に飛び移ろうとしたが、そっちも崩壊が始まっていた。まとめて壊されているのだ。足場がなくなったので屋根から飛び降りて地面に足を着けると、指が伸びてきて肩に突き刺さった。


「グッ」


 貫通はせず体内にとどまり、指先から瘴気が流し込まれる。普通の人間であれば体が急速に腐って死ぬだろうが、俺には効かない。この程度の瘴気で死ぬほど光属性の適性は低くないのだ。


 すぐさま肩から抜くと後ろに下がって横を見る。投擲した槍が落ちていた。目測で五メートルほどか。


 視線を金髪の男に戻す。口から出ていた触手はなくなっていて、指に付いた俺の血を舐めていた。気持ち悪い。


「マズイですねぇ。体が腐ってしまいそうです」


 当たり前だ。俺の血にも光属性の魔力が残っている。汚染獣からすれば猛毒であり、体内に入れれば激しい苦痛を伴う。ああやって平然としている方がおかしい。もしかして光属性に耐性があるのか? メルベルの不死性と似たような特性であれば厄介だな。やはりこの場で殺すべき存在である。


「貴方の実力はわかりました。さほど強くないですね」


 単体の戦闘能力だけ見れば、俺はヴァリィよりも劣るから否定はできない。


「そろそろ殺してあげましょう」


 体から瘴気を放出したようで、黒いオーラのようなものを放出しだした。常人では近づけない。魔力をほとんど使い切ってしまった俺だと、もって数十秒ってところだろうか。劣勢である。体勢を立て直すために一時撤退することも考えたが、村人や気を失っているトエーリエ、ベラトリックス、テレサは見捨てられない。なにより汚染獣を相手に背中は見せたくないため、戦うことを選ぶ。


「その言葉そっくり返してやる。俺がお前を殺してやるよ」


 汚染獣は、この世から消し去ってやる。


 人差し指を立てると前後に動かして、かかってこいと挑発した。


「ここまでバカにされたのは初めてですねぇ……」


 知恵と感情を持った相手は扱いが楽だ。簡単に引っかかってくれた。俺のことしか見えておらず、背後の敵に気づけていない。


 血だらけのヴァリィが、魔力によって刀身を伸ばした剣を振り下ろした。金髪の男は振り返ることしかできず、肩から腹にかけて斬り裂かれる。下半身から皮膚のない人型の生物が出てきた。あれが本体だ。生物に寄生するタイプだからかサイズは小さいが、内包している瘴気は大型に匹敵する。


 汚染獣がヴァリィを見ている隙に槍を拾った。


「人間ごときが私を見たなぁぁぁぁッッ!!」


 追い詰められた経験がなかったのだろう。我を忘れて叫んでいるので、背後に忍び寄って槍を頭部に突き刺すと押し倒した。体にまたがって逃げ出せないようにすると、残っているすべての魔力をやりに流し込み、汚染獣を浄化していく。


「消えろッ!」


 魔力が底をつきそうになり、肉体が安全のために意識を切ろうとするが必死に耐える。魔力切れの気絶なんてお断りだ。最後の一滴まで使い切ってやる。


 体内の魔力がゼロになれば確実に死ぬが、経験を積まれる前にこの汚染獣を倒せるなら安いものだ。くれてやるよ。


「やめろ! お前も死ぬぞ!!」

「道連れにしてやる」


 目や鼻から血が出てきてしまった。頭をかち割られたような激しい痛みを感じる。魔力切れを越える領域に入ったのだ。生命活動に必要な分まで消費して、光属性の魔力を汚染獣に注ぐ。


 するとしばらくして、末端から砂のように形が崩れてきた。寄生型の汚染獣は、もうすぐこの世から消え去ってくれるだろう。


「ヴァリィ! 後は頼んだぞ」


 泣きそうな顔をしながら何か叫んでいるが声は聞こえない。この時初めて耳の機能が失われていると気づいた。


 まあ、きっと俺が言いたかったことは伝わっているだろう。テレサを頼れば光教会も動くだろうし、後始末は任せられる。


 口から大量の血を吐き出しながら汚染獣を見る。姿はない。完全に浄化されたのだ。


 ああ、よかった。


 また人類の敵を一つ、減らせたのである。


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