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秘密です

 村の守りを固めてから一日が経過した。


 使い魔の主は村の中にいると判明したので家捜しを始めたが、何度か極小の汚染獣が襲ってきて途中で中断している。


 調査は再開したいが、敵は次の一手を打ってきた。村の外の瘴気が一段と濃くなってきたのだ。いよいよ本格的に動き出したな。村の浄化を続けて俺の魔力は三分の一ぐらいに低下しているから、勝負しにきてくれるのは歓迎である。返り討ちにしてやる。


 村長の家から出て外を見る。


 巨大な肉の塊がうごめいていた。高さは五メートル近くあるだろうか。中型の汚染獣だ。


「ポルン様の前で活躍するんだーっ!」


 叫びながら屋根に登ったテレサが光の矢を放つ。肉塊に深く刺さって一部を消滅させたが、すぐに再生されてしまう。メルベルほどじゃないが耐久性は高いようだ。数度光の矢が刺さっても同じ結果になったので、中途半端な攻撃はこちらの体力を削るだけで意味はないと判断する。


「テレサ! 攻撃は止めろ!」

「私は、まだ余裕が……」

「光の矢は役に立たん! あれは俺がヤる。大人しく見てろ」


 強めに言うと反論はなくなった。弓を降ろしてしゅんとしてしまったが事実なんだから仕方がない。


 ベラトリックスたちは防衛に残し、俺は一人で村から出る。肉塊が触手を伸ばして掴んでこようとするが、俺に近づくと消滅する。浄化されたのだ。


 怯えたように肉塊が震え、後ろに下がろうとする。


「逃がさない」


 汚染獣は人類共通の敵だ。樹海からでて支配地域を増やされたら困るので、ここで確実に殺しておく。


 身体能力を強化して全力で走り、肉塊に飛び込む。光属性の魔力を放出していることもあって浄化され、肉が消えていく。再生は追いつかない。動きは鈍いようで逃げられず、数分もすれば触れることすらなく完全勝利だが、そうは進まないだろう。


 炎の矢が数十本、俺に近づいている。


 邪魔が来るのはわかっていたので不意打ちにはならない。直撃しそうなのは槍で弾いていく。


「隠れてないで出てこいよ」


 挑発したからじゃないと思うが、金髪の男が一人、家の陰から出てきた。距離は離れていて会話は難しいだろう。


 男の周囲に炎の槍が十本浮かんだ。先ほどの攻撃でかなりの魔力を消費したはずなのだが、まだ余力はあるみたいだ。厄介だな。かなりの実力者だ。バドロフ子爵の切り札とも言える人材だろう。


 炎の槍が時間差で放たれた。


 槍で弾くが数は多くて、さばききれない。横に走って回避するが、次々と炎の槍が放たれていく。止まる余裕はなく走り続ける。


「はっ、はっ……」


 攻撃が始まってしばらく立つが魔法は止まらない。ベラトリックスに匹敵する魔力量だ。このままじゃジリジリ削られていくだけ。どこかで反撃を……上!?


 空から溶けかけた肉の塊が落ちてきた。浄化させているが表面にいる個体が消えるだけ。この前と同じように内部を浄化させれば倒せるが、今はそんな余裕がない。


「ガハッ」


 意識を上空にそらした隙を狙われてしまい、炎の槍が当たった。衝撃によって吹き飛ばされてしまう。


 追撃を警戒して前を見ると、ヴァリィが屋根から飛び降りている姿が見えた。


「死ねぇぇぇ!!」


 叫びながら剣を振るうが奇襲は失敗だ。男は後ろに下がって避けると、光の矢が襲いかかったので待機させていた炎の槍をぶつけて相殺した。


「よくもポルン様をっ! 許さない!」


 いつもの冷静な姿はない。ヴァリィは怒りに身を任せて剣を振るっている。敵の男は『シールド』の魔法で防いでいるが、剣が当たる度に大きく歪んでいるので、もうすぐ突破されるはずだ。


 余裕ができたのでケガの状態を確認すると、炎の槍が直撃した腹の部分は鎧が壊れ、肉まで見えている。炎によって傷口は焼けただれ出血してないので、すぐに死ぬわけではないが非常に痛い。立ち上がろうとすると意識が飛びそうになる。ヴァリィが参戦してくれなければ、かなり危なかっただろう。


「ポルン様ーーーっ!」


 トエーリエとベラトリックスが駆けつけてくれた。


 傷を見るとすぐに『ヒール』の魔法をかけてくれる。


「酷いケガ……許せません」


 静かに怒っているトエーリエだがベラトリックスは静かだ。無表情のまま敵を見て魔法を発動させる準備をしている。


「生け捕りはしなくて良い」


 無力化させても体内にいる汚染獣が暴れて死ぬだけだ。手加減する意味はないので、こちらの被害が大きくなる前に倒すべきだろう。


 ベラトリックスは返事をする代わりに魔法を発動させた。


 上空に真っ黒い球体が出現する。見たことがない魔法だ。見ているだけで精神が侵食されそうな根源的な恐怖を覚えた。


「なにをしたんだ……」

「秘密です」


 にっこりと微笑みながら拒否されてしまった。


 球体が地面に落ちる。ウネウネと不気味に動き出すと狼のような形になり、敵の男に襲いかかる。魔法で攻撃してみたようだが、黒い狼に触れる直前でかき消えてしまう。


「無効化?」

「魔女殺しの狼ですからね。このぐらい当然のようにできます」


 とんでもない魔力量を持ち、様々な魔法を使える人を魔女と呼んでいる。彼女たちを倒すには魔法を使えないようにするのが効果的だと言われており、無効化能力を持っている狼は、確かに天敵と呼べるだろう。


 魔法が効かないと分かって男はナイフを取り出した。あまりにも心許ないと思ったのだが、鋭い爪を弾き、ヴァリィの剣と狼の牙を避けている。


「強い」


 俺が加わっても勝てるか?



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