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死ねぇぇぇぇ!

 あの日を境にして、町で暴れる人が急増した。


 治安を守るため、主にヴァリィが兵を連れて取り締まりをしている。対策は順調に進んでいて、牢の収容率が80%を越えていてもうすぐ満杯になりそうだが、手を抜くわけには行かない。


 殺人までには至ってないが傷害事件は多発しているのだ。

 町の平和を維持するために今後も続けていくだろう。


 またベラトリックスとテレサは領内にある小さな村を巡回していて、野盗が出現していないか目を光らせている。こちらも効果はかなり出ていて、森に潜んでいた野盗の組織を二つほど壊滅させていた。ヴォルデンク家の兵も連れていたので彼女たちの恐ろしさは十分体感したことだろうし、領民からの評判も少しは改善したはずだ。


 心配していた内部の不正だが、給金を上げ、恐ろしく強い女性たちが目を光らせていることもあって現状はほぼない。


 泳がせているメイド長のイレーゼだけは外部とやりとりを続けて入るみたいだが、使い魔で監視していたので、こちらも収穫があった。バドロフ子爵に情報を流している男の寝床を見つけたのだ。


 もうイレーゼは用済みだ。落ち着いたら処分するとして、先ずは仲介人に消えてもらおう。


 * * *


 ヴォルデンク領に侵入した害虫を駆除するため、今日は俺がアイラと一緒に兵を引き連れて町を歩いている。


 当主代理を危険な現場に連れて行きたくはないのだが、わかりやすい成果を残しておく必要があるため仕方なく参加してもらったのだ。


 護衛は兵の二人とベラトリックス。彼らにアイラを任せると決めていた。




 仲介人が住んでいる家の裏口に俺が待機すると、連れてきた兵が玄関ドアをこじ開けて中に入った。


 ドタバタと物音が聞こえると、家の中が慌ただしくなる。


 しばらくして二階の窓から男が二人飛び降りてきた。


 どっちが仲介人だ?


 瞬時に判断できない。であれば、両方を叩くだけである。


「悪いが捕まってもらうぞ」


 立ち上がろうとしている男二人に槍を横に振るう。穂先ではなく柄の部分を当てると、まとめて吹き飛ばした。


 家の外壁に当たって気を失ったので、注意を払いつつ顔を確かめる。


「こいつらは違う」


 ベラトリックスから聞いていた人相とは全く似ていない。裏口から出てくる気配はないので、まだ家の中にいるのだろう。


 気絶させた男どもは、どうして先に逃げようとしたんだ?


 何か持っていないかと荷物を漁っていると、数枚の羊皮紙が見つかった。


 読んでみるとバドロフ子爵からの指示書だとわかる。冒険者崩れのチンピラを雇って町を荒らせといった内容だ。予想したとおりで驚きはない。


 焼き捨てるような時間がないため、こいつらは証拠を隠すために逃げだそうとしたのか。


「気をつけろ相手は武器を持っている!」


 家の中から兵の声が聞こえた。無事に追い詰めているようだが拘束まではできてない。戦闘音が俺の耳にまで届いている。激しく抗されているみたいだ。


 家に残っているのは仲介人だけじゃないな。他にも何人かいるようだ。


 助けに行こうと思い奪い取った羊皮紙を懐にしまい、裏口のドアノブに手をかける。


 今度は二階の壁が吹き飛んだ。


 石の破片が宙を舞い、その中に男が三名混ざっている。


「ベラトリックスのやつ、派手に暴れているな」


 兵二人だけじゃ負けていたと思うから連れてきて良かった。やはり頼れる仲間である。


 地面に落ちると、男は大きくバウンドしてからゴロゴロと転がる。三人のうち意識があるのは一人だけのようだ。フラフラと揺れながらも剣を持って立ち上がろうとしている。


 顔を見ると仲介人でだとわかった。


「お前を拘束する! 逃げれば命はないぞ!」


 警告すると俺の方を見た。


 動きが止まる。逃げるか、それとも戦うか悩んでいるようだが、俺が倒した二人を見ると剣を向けてくる。


 何を考えているのかわかった。


 奪い取った羊皮紙を取り出すと、見せつけるようにしてヒラヒラと動かす。


「返せ」

「欲しいなら奪い取って見せろ」


 ちっと、舌打ちが聞こえた。


「見られたら殺せと言われている。死んでもらうぞ」

「やれるなら、やってみろ」


 目の間にいた仲介人の姿が消えた。


 魔法ではない。身体能力強化の効果が高く、一瞬だけ見逃してしまったのだ。


 左側から殺気を感じたので反対側に飛びながら槍を振るう。


 刀身と衝突した。


 相手は地面に足が付いているので踏ん張れるため、俺は吹き飛ばされてしまった。


 足から着地すると勢いは殺せず後ろに滑る。


「死ねぇぇぇぇ!」


 どうやら俺はバドロフ子爵だけじゃなく、仲介人にも相当恨まれているようだ。叫びながら剣を振り上げている。


 体のバランスを崩していて避けられない。槍で受け止める。


 思っていたよりも力が強いぞ。俺も身体能力を強化しているがやや負けている。


 ぐぐっと押し込まれている。刀身が顔に近づいてきた。


「バドロフ様を侮辱した罪、死で償え」


 勝ちを確信したらしく、主の名前まで口に出しやがった。


「意外と慕われているんだな」

「当然だ」


 仲介人の力がさらに入った。後数秒で、目の前にある剣で切り裂かれてしまうだろう。だがそれは、この場に俺一人しかいなかった場合に限る話だ。


『エネルギージャベリン』


 二階から半透明の槍が数本放たれると、仲介人の四肢に突き刺さったのだった。


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