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調査結果を教えてもらえないでしょうか

 バドロフ子爵が帰った後も屋敷内は騒がしかった。


 解毒ポーションを使ってもヴォルデンク男爵の意識は戻らず、寝たきりの状態だ。医者の話によると即効性のある毒だったため体に大きなダメージを受けてしまい、衰弱死する可能性が高いとのこと。回復魔法は毒や病による後遺症には効果を発揮しないため、トエーリエが来ても何も出来ない。


 当主は目覚めない。だが領地の運営は続けなければいけない。


 そういった事情があるため、アイラが代理として動くこととなる。


 最初の仕事は、ヴォルデンク男爵の紅茶に毒を入れた犯人の捜索だが、これはすぐに見つかった。夜逃げしようとしたメイドがいたので、捕まえたらすぐに白状したのだ。


 金貨一枚で引き受けたらしい。


 依頼の相手は偽名を使っていて正体は不明だが、バドロフ子爵か、その関係者だろう。


 毒を盛ったメイドは、アイラが領地の状況を詳しく把握してから簡易的な裁判にかけられて処刑される予定だ。罪が一族まで及ぶかまでは聞いてないが、重大な事件なので無関係とはいかないはず。


 真面目に働き続けていれば家族と幸せに暮らせただろうに。


 目先の欲望に溺れた人間の末路だった。


 その間、俺は屋敷に滞在して働いている人たちの調査を行っており、一週間ほどかけて終わらせている。


 * * *


「調査結果を教えてもらえないでしょうか」


 部屋には俺たちだけだ。聞き耳を立てているメイドなんてのもいない。


 正直に話すべきだろう。


 重くなってしまった口を開く。


「信頼できる物は専属医ぐらいです。不正は蔓延し、忠誠心が高いとは言えず、使用人の誰が裏切っても不思議ではありません」


 報告を聞いたアイラは背もたりに体重を預け、深いため息を吐いた。


「私の専属メイドだったカルロナも、ですか?」

「はい。彼女はたまに町に出ると、アイラ様のことを良くも悪くも言いふらしています。領民は好みの男性まで知っているようでした」


 顔を真っ赤にさせ、プルプルと震えている。


 こともあろうか乙女の秘密を暴露しているのだから無理はないだろう。


 俺だって胸が大きく、体毛の少ない女性が好きだ、なんてことを知られたら恥ずかしくて国内じゃ生きていけない。


 即刻、誰も知らない場所へ旅立つ。


「料理人は食材を横領しておりましたし、警備をしている兵たちは賄賂をもらって屋敷の情報を流しています」

「最悪ですね……もう誰も頼れない……どうしてこうなったのでしょうか」


 詳しいことを何も知らされてなかったようで、アイラは落胆している。


 時間が無かったので調べきれず、疑問に答える情報はもっていない。


「原因はわかりません。また全員を調査できたわけではないので、どこまで不正がはびこっているのかすら把握できてない危険な状態です。早めに把握した方が良いでしょう」


 俺一人で情報を集めるのには限界があるため、すべてを把握したいのであれば協力者が必要だ。


 ベラトリックスたちも来るだろうし、助けてもらおう。


「そうですね。間違いありません。ヴォルデンク家の名にかけてすべての不正を調べ、是正させてみせます」


 返事をしたアイラは顔を上げて手を当てる。


 内部は頼れず、外敵に狙われいて、相当まいっているようだ。


「もう、信じられるのはポルンさんだけです」


 俺に言ったわけじゃないだろう。思わず漏れた言葉だ。


 護衛と調査の仕事が終わったので去っても良いのだが、このまま見捨てるのも寝覚めが悪いので距離を取る様なことはしない。


 この前、バドロフ子爵を挑発したこともあって最後まで付き合うと決めている。


「信じて、頼って良いですよ。最後までお付き合いしますから」


 アイラは勢いよくこちらを向いた。


 期待した目をしている。


「いいんですか? 父様が倒れているので、報酬の話は後回しになってしまいますよ?」

「問題ありません。お金には困ってませんから」


 俺には便利なお財布がある。


 足りなくなったら国に戻ってメルベル宰相におねだりすればいい。必要なだけ渡してくれるはずだ。


「ありがとうございます!」


 椅子を立ち上がると俺に近づき、手を取って喜んでくれた。


 男とは違ってゴツゴツしていない。柔らかい感触が心地よい。


 残念ながらすぐに手を離されてしまい、アイラは一歩後ろに下がる。


「実はこれからについて、少し考えていたんです。バドロフ子爵はまた仕掛けてくるでしょう。その前に準備をしておきたいのです」

「具体的な考えはありますか?」

「先ずは領内にはびこっている不正をただしたいです」


 外敵と戦う前に内部崩壊したら困るからな。当然だろう。


「その後、領内の警備の強化をします。予算も確保しているので町や村の方はなんとかなるでしょう。問題はルビー鉱山の方です」


 金があるなら、そっちにも兵や冒険者を派遣すれば良い。


 どうして悩んでいるのだ?


「監視の目が届かないので、警備するついでにルビーを盗み出す危険があります」

「でしたら、私の仲間を呼び寄せます。信頼できる人間なので監視役にはもってこいかと」

「信頼できる方ですか?」

「でなければアイラ様にご紹介したいと思いません」

「なら安心ですね。協力をお願いしましょう」


 決意に満ちた目をしている。


 誘拐されたか弱い令嬢の姿はない。


 領地の立て直しに燃えているアイラなら、何があっても戦うだろう。


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