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私たちじゃダメなですか?

「それでポルン様は、これからどこに行くのですか?」


 話がまとまったところでベラトリックスが聞いてきた。


 巫女であるミュールの事情をどこまで話すか悩ましいが、当面の目的は伝えても問題はないだろう。


「ポエーハイム王国に行く」

「え、あそこですか……?」


 生まれ故郷だというのに嫌そうな表情をした。ヴァリィ、トエーリエも同じ反応だ。


 あんな酷い顔は初めてみたので、思わず口元が緩んでしまう。


「笑わないでください! プルドがいるんですよ! ポルン様を邪魔者だと考えて襲ってくるかもしれませんよ!」

「メルベルがいるから大丈夫だ。アイツがバカどもの暴走を止めてくれる」

「……そうかもしれませんが。別の問題がでるかもしれません」


 チラリとベラトリックスは俺の背後にいるミュールへ視線を向けた。


 汚染獣と取引したことがバレるんじゃないかって心配しているんだろう。


「その話は別でしましょうか」


 ヴァリィが間に入って危険な話題を終わらそうとした。情報が漏れないように配慮してくれたんだろうが、不要な気づかいだ。


「その必要はない。事情があって巫女にはメルベルの正体を伝えている」

「大丈夫なんですか?」


 剣の柄に軽く手を乗せて警戒しながらヴァリィが聞いている。


 少しでも懸念があるようなことを口にしたら、ミュールを斬り殺してしまうかもしれない。そういった静かな殺意と覚悟を感じた。まったく気の早いヤツだな。


「三人は勇者の村についてどこまで知っている?」

「勇者候補となったら訪れる場所、と言うこと以外は何も知りません。何か関係あるんですか?」


 貴族階級で元騎士団長のヴァリィが知らないのであれば、トエーリエやベラトリックスも似たようなもんだろう。今後のためにも最初から説明した方が良さそうだ。


「偶然にも関係あるんだよ。村には候補生が光属性の適性を上げるために修行する洞窟があるんだが、そこに転移魔法陣があった」

「中に入ったんですか?」

「ちょっとした事故があってな。転移先は樹海だった」

「ッッ!!」


 予想していたとおり三人は驚いているので、構わず話を続ける。


「樹海では色々あったんだが、それは今度話そう。結果として俺は無事に戻ってきて、濃い瘴気の中でもたくましく生きている植物を手に入れた」


 腰にぶら下げている袋を開いて採取した草を見せる。


 汚染された土に入れていることもあって、今のところ枯れる気配はない。


「こいつは瘴気に耐性がある。成分を調べれば人に応用できるかもしれない」

「お考えがわかりました。瘴気の中で生きられる植物を育て研究、耐性ポーションを作る計画なんですね。そのためには瘴気……いえ、汚染獣の力が必要ということですか。だからメルベルと会う。そこまでは理解できましたが、なぜ巫女まで必要なのでしょうか?」


 まだ少しライバル心が残っているのか、ベラトリックスの口調はやや厳しかった。


 メルベルの正体を教えた理由までは理解したのだろうが、巫女の必要性に疑問を持っているようだ。疑わしそうな目で見ている。


「外見は可憐な少女に見える巫女だが、生きてる年月は百年以上。俺たちの数倍は確実に生きていて、瘴気や薬、ポーションに関する知識は豊富にある。それに今は汚染獣からも狙われているようで、身を守るためにもメルベルの力は借りたい」

「私たちじゃダメですか?」

「巫女は瘴気への耐性が一般人よりも高い。知識も豊富だし適任だ」


 体内に埋められた汚染獣と保有している光属性の魔力によって、瘴気が必要な体になっているため、樹海で生息していた植物の栽培が問題なくできる貴重な人物である。また長年、秘薬やポーションの作成をしていることもあって経験も豊富だ。これほど適した人間はいないだろう。


「何よりベラトリックスたちは俺と一緒に汚染獣と戦うんだろ?」


 反論はできないようで黙ってしまった。


 三人は納得してくれたようだ。話し合いはこの程度でいいだろう。


「ここは血の臭いが濃い。他の魔物が来る前に出発しよう」


 魔法で爆殺したため、近くには狼の肉や血が飛び散っている。長くとどまっていたら腹を空かせた別の魔物が来るかもしれないので場所を変えたい。


 ミュールを背負子に乗せてから移動を再開する。


 三人は黙って後を付いてきてくれていて、周囲の警戒をしてくれているので俺は前を見るだけでいい。森での移動は大分楽になった。


 それでも何度か魔物に遭遇してしまったが、ベラトリックスが遠距離から魔法で撃退したため、たいした苦労はしていない。やはり仲間がいると安定感が違う。


 樹海に転移したときにも三人がいたら、あの特殊な個体を消滅させられたかもしれないと思わせてくれるほどだ。


 仲間、か。


 一度捨てようとしたのに都合がよすぎるかもしれないが、汚染獣を根絶させたいのであれば一緒に連れていくべきだ。素直に頼ろう。今の俺には必要なことだ。


 特殊な汚染獣、耐性ポーション、樹海、メルベルとの契約……問題は山積みであるが、仲間と一緒なら解決できるはず。そう信じて前に進もう。



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