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屁こき亭主

作者: おもながゆりこ

昔、夫と結婚して間もない頃の事。




新婚ですもの。


そりゃお互いの前でオナラなんてしません事よ。




リビングで一緒に夕飯を食べている時に、夫の会社から電話がかかってきました。


夫は何やら話しながらトイレへ入って行きました。


中でまだ延々と仕事の話をしています。


そして


「はい、それでは失礼します」


と真面目に言って、電話を切った途端に




ババッ!ババッ!バウーーーーン!




と、凄まじいオナラの音が響き渡りました。




当時住んでいたアパートは、リビングのすぐ横がトイレで、嫌でも聞こえます。


ずっと我慢していたんだろうし、恥ずかしいだろうし、聞こえなかった振りをしてあげようかとも思いましたが、


いかんせん距離が近すぎ、丸聞こえもいい所です。


こらえきれず笑っていると、彼が恥ずかしげな顔でトイレから出てきました。




いいんですよ、生身の人間ですもの。


屁なんて屁ですわ。


そんな事で私の愛情は減りません事よ。




その後、後片付けを済ませた私が寝室の前まで行ってみたら


私が部屋の真ん前にいる事に気付いていない夫が




ぶううう、ぶううう、ぶうううう、ぶううううう。




と中で何度もオナラをしています。




この人、さぞかし気持ちいいだろうな、と思いながら襖を開け、


「私、何も聞こえなかった」


と言ってあげました。


夫は恥ずかしいやら、なんやらで


「ふん」


などと言っています。


「なんで、ふん?」


と聞くと、また


「ふん」


と拗ねたように言います。


そこで私はこう返しました。


「ふん、じゃなくて、屁でしょ」


夫は


「うまいじゃない」


と言って、その後は二人で喋れなくなるほど笑いました。




こうして人は夫婦になっていくんですね。




オナラは、今もお互いの前で積極的にはしませんが、いないと思えばブースカします。


いいの、いいの。


家族ですから。


夫婦ですから。


屁はあくまで屁なんだから。


夫婦よ、ふーふ。へーへじゃありません事よ。




オナラであちこち移動出来たらいいですよね。


交通費がかからない。




おー楽しい毎日。


今日も私たちは屁も何も乗り越えていきますわ。




屁こき亭主万歳。

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