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第1話 犯罪

犯罪といったらロリだろと思ったのですが、個人的には源氏物語の紫式部的なのが一番犯罪を感じるんですよね。

小さい子を自分好みに育てるというか。

ですので小さいころから知ってる女の子と大きくなってから付き合うというシチュエーションで書きました。

明るい感じの話です。

高校2年生の頃、俺はバイトを始めた。

場所は、隣の家に出来た定食屋だ。

そこの店主は変わり者で有名で放っておくと一人で星を見に行ったりするのだが、料理の上ではぴか一だし、話も面白いからその店はいつも繁盛していた。

俺のことも何故か実の息子の様に可愛がってくれて、料理や勉強、恋愛に関してまでいろいろと相談に乗ってくれたものだ。

そんなおやじの元でのバイトは内容も滅茶苦茶で料理を作らされたこともあったし、住んでいる部屋の掃除や家事手伝いをさせられたこともあった。

まあ片親の俺にとっては家族というものを感じさせられて凄く楽しかったけどな。


「おやじー。部屋の掃除終わったぞ」


「おお悪いな。ちょうど小学校からさやかが帰ってきたんだ。仕込みに忙しいから相手してやってくれ。」


おやじがそう言うと小学六年生のさやかちゃんは笑顔で俺に近づいて来た。


「お兄さん。一緒に宿題やろー。」


俺はさやかちゃんの頭を撫でると言った。


「いいよ。一緒にやろう。それにしてもさやかちゃんはちゃんと勉強して偉いなあ。」


さやかちゃんは嬉しそうに答えた。


「えへへ。お兄さんが褒めてくれるから勉強好きなんだ。でもお兄さんはもっと好きだよ」


俺たちの様子を見たオヤジが俺に言った。


「おいおい。モテねえからって俺の娘に色目を使ってるんじゃねえぞ。」


「使ってねえよ。大体、男子校で女の子の知り合いもいないし、女子との接し方すらよく分からないんだからモテないのはしょうがないだろ。俺だってモテられるならモテてるさ。」


「はあ。環境を言い訳にしてるうちは一生無理だぞ。恋人なんて案外誰でも良いんだよ。付き合ってりゃ勝手に好きになるからな。それを最初から最高の恋人を得ようとするから打つ手がなくなるんだよ。そういうのはまず自分の顔を見てからいえ。」


「おやじ。おやじは俺をなめてるぞ。」


「どういう意味だよ」


「良いか。小さい頃からずっと女子と接することなく夢ばかり見てきた男の妄想力をなめないことだ。おやじの言う近所の女子と付き合っては別れるようなマイルドヤンキーの価値観なんて絶対にごめんだな。そういう価値観に染まるくらいなら俺は一生独身を貫く。」


「いや。お前の言うことは分かるぞ。だけど恋愛や結婚ってそういうもんじゃねえんだよ。相手のことは嫌いじゃないけど好きとまでは言えない。でも他に良い人がいないから付き合い続けて結婚をする。そんな妥協の産物なんだ。」


「それはオヤジが妥協するからだろ。俺は諦めない。絶対に可愛くて一途で話していて楽しくて優しい。そんな理想の女の子と出会って見せる。」


「はあ。馬鹿につける薬はないんだな。」


そんな会話から早5年。

俺はそこそこの企業に就職し一人暮らしを始めた。

そんな俺からオヤジに伝えたいことがある。

俺は夢をかなえた。

俺には今、可愛くて、一途で話していて楽しくて優しい彼女がいる。

まあただ一つの問題点はオヤジの娘だってことなんだがな。


「いやー。時がたつのは早いですねー。もう出会って5年になるんですもんね」


「そうだな。初めて会ったときはまだ小学6年生だったんだもんな」


部屋のテーブルで俺と向かい合ってビーフシチューを食べているのは、高校2年生になったさやかだ。

昔の印象からどうしても小さい頃のままの様に感じてしまうが、こうして改めて見ると凄く可愛らしい。しかも、近寄りがたさの様なものが一切なくさやかの優しい雰囲気が外見にもにじみ出ているせいか気兼ねの様なものは一切感じさせない。うちの街のアイドルというのはまさしくこういう娘を言うんだろう。

ちなみにビーフシチューは彼女の手作りである。


「小学校6年生でしたか。そんな娘と付き合っているなんて。正直引きますね。」


「しょうがないだろ。俺だってあのちびっこと恋人同士になるなんて思ってもいなかったさ。」


「えー。なんですかそれ?出会ったころは私のこと好きじゃなかったんですか?私は一目ぼれだったんですよ。」


「小学生でか?」


「はい。当時から好きだって言ってたじゃないですか。」


「そういえば言ってたかもな。まさかそういう意味の好きだったとは思わなかったけどな。」


「相手にされてないのは薄々感じてましたけどね。その点、私が大きくなるまでにお兄さんの魅力に気づく人がいなかったのはラッキーでした。まあ。お兄さんに恋人がいても奪い取るつもりでしたけど。」


「さやかは本当に可愛いなあ。」


「急にどうしたんですか?」


「思い出したんだよ。俺が大学の時の同じクラスの女子をお店に連れてきた時も凄い不機嫌になって怒ってたもんな。」


「当たり前ですよ。私の前でお兄さんに色目を使うなんて許すわけないじゃないですか。お兄さんは私の物なんですから。」


こういう独占欲を隠さないところもさやかの可愛いところだ。

俺たちは食事を食べ終わると台所に並んで食器を洗ったり片づけを始めた。


「えへへ。こうやって並んで作業するのって、何か夫婦みたいで良いですね。」


「そうだな。オヤジと美奈子さんも良くこうやって二人で作業してたもんな」


「はい。私、あの様子に憧れがあったのでこういう瞬間に凄く幸せを感じるんです。」


さやかは満面の笑みで俺にそう言った。

俺はそれを見てこの子は大切にしなくちゃいけないなと改めて感じる。


「それにしても料理上手くなったなー。オヤジの味に似てきててびっくりしたよ。」


「本当ですか?嬉しいです。」


料理が美味しいのはお世辞じゃなくて断固たる事実だ。

朝やってきて短い時間であんなに美味しいビーフシチューを作るなんて俺には絶対真似できない。


「オヤジにいろいろと習ってるのか?」


「そうですね。最近はお店を任されることもあるんですよ。」


「そうか。それは凄いじゃないか。相変わらず頑張っててさやかは偉いなあ。」


俺は思わずさやかの頭を撫でた。

さやかは嬉しそうに言った。


「当然ですよ。私にはお兄さんに美味しいものを作ってあげたいという目標があるんですからね。」


最近のさやかは休みの日や学校のない日に俺の家を訪ねて来ては料理を振舞ってくれる。

なんでもさやかの母親の美奈子さんは「まるで通い妻ねえ。」とさやかに言っていたとこの前さやかが嬉しそうに教えてくれた。


片づけが終わると俺たちは隣り合ってソファーに座った。

昼ご飯を食べ終わった後の休日の午後というものは、穏やかで心地よい時間だ。

ましてや一人ではなくさやかと一緒だと思うと自然と心が温かくなる。


しばらくするとさやかはこちらに寄りかかって気持ちよさそうに眠りだした。

俺はリモコンを取ると目の前にあるテレビをつける。


「おっ。今日は野球やってるんだな」


さやかは俺の言葉を聞くと目を開けて俺からリモコンを取りテレビを消した。

そしてまた俺に寄りかかって目を閉じた。


うるさかったのだろうか。

俺は今度はテレビをつけて音量を消した。

するとさやかは立ち上がって俺からリモコンを取り上げてテレビを消して言った。


「なんでテレビつけるんですか?」


「いやー。野球やってたから。」


「私が甘えてきてるんですよ。集中してくださいよ」


「お前は本当に可愛いなあ。」


「そんなこと言ってもごまかされませんよ。」


そういうとさやかはリモコンをわざわざ机の上に置くとソファーに戻ってきて俺の膝を枕にして横になった。


「これも甘えてるのか?」


「そうです。よそ見した罰として膝枕してください。頭をなでてくれても良いんですよ。」


そういうとさやかは目をつぶった。

俺はさやかの頭をなでながらぼんやりとさやかを眺めた。

彼女が俺にだけ見せる無防備な姿。

彼女の安らかな寝顔を見て彼女のぬくもりを感じていると俺は彼女と付き合っているんだなということを強く実感する。

男子校で女子とは無縁だった中高時代、サークルやゼミに女子はいたが全く相手にされなかった大学時代。

その頃の俺が今の様子を知ったら驚くに違いない。


それから俺たちはしばらくの間、のんびりとした時を過ごした。

その後、二人でゲームをしたり、最近の話をしているとあっという間に夜になった。


「先輩。もう夜ですね。何が食べたいですか?」


「今日の夕飯は外で食べないか?実はお店を予約してあるんだ。」


「本当ですか?構わないですけど珍しいですね。」


俺はさやかを連れ立ってマンションを出ると電車に乗って都心部へと向かった。

都心部につくと駅の近くのホテルに入る。

徐々に落ち着かない様子になるさやかが可愛くてそっと手をつなぐと、恥ずかしそうな様子で手をつなぎ返してきた。

ホテルの中にある有名なフレンチレストランに入り、席に着くとさやかが言った。


「大丈夫なんですか?こんなところに来て。場違い感が凄いのですが。」


「こういう所はちゃんと高校生なんだな」


「当たり前ですよ。高校生にとって外食って言ったらファミレスですよ。こんな高級レストランなんて身に余りますよ」


「でも料理人の家に生まれたんだ。興味はあるだろうし、勉強になるだろ。」


さやかは俺の言葉に驚いた様子を見せた。


「まさか私のために連れてきてくれたんですか。」


「それ以外ありえないだろ。この前初めてのボーナスが出たんだ。せっかくだからお前が喜ぶようなことに使いたくてな。」


俺の言葉にさやかは胸を張って言った。


「さすが私の彼氏ですね。友達にも彼氏がいる娘はいますけど、高級レストランに連れて行ってもらったなんて私位なものです。」


「まあ俺は社会人だからな。高校生に比べたらお金もあるしある程度自由にはできるさ。」


「へえ。やっぱり社会人ってすごいんですね。なんだかお兄さんを少し遠くに感じてしまって複雑です。」


「何言ってるんだよ。俺はお前とじゃなかったら絶対にこんなところ来てないぞ。お前の前だからこそこうやって頑張ってかっこつけてるんだよ。」


「えへへ。私は幸せ者ですね。お兄さんのこと諦めないで本当に良かったです。」


その後もしばらく緊張した様子だったが実際に料理が出てくると興味が勝ったのか出てくる料理を興味深そうに眺めたり、シェフに色々、質問をしたりしていた。

帰り道、俺はさやかを家まで送っていくことにした。


途中でさやかが右手を差し出してきたので左手で手をつないだ。


「お兄さん。今日は本当にありがとうございました。何か夢みたいでした、実を言うと私、2つだけお兄さんに不満があったんです。」


「何だ?」


「まずは、勝手に家を出て行って、一人暮らしを始めたことです。私、本当にびっくりしたんですよ。」


「なんでだよ。大学に行くときに一人暮らしを始める奴なんて珍しくないだろ。」


「私と会える時間が減るじゃないですか。大学受験で会えない間も大学に入ったら沢山、会えるって思って楽しみにしてたんですよ」


「そうか。それでよく俺の家に遊びに来てたんだな。」


「はい。かえって二人きりの時間が増えて関係が親密になったのは嬉しい誤算でした。」


「もう一つは何だ?」


「二つ目はお父さんの元で働くのをやめて会社に就職してしまったことです。私、お父さんとお母さんみたいにお兄さんとお店をやるのが夢だったんですよ。」


「そうか。」


「でも今日、働いて稼いだお金で私にあんな夢のような時間を過ごさせてくれたから許してあげます。」


「実をいうと俺も高校3年生の時、オヤジの元に就職しようと思ったんだ。」


「そうなんですか?」


「でもオヤジに断られた。俺が楽しい人生を送れているのは俺が料理屋を経営しているからじゃねえ。俺自身が頑張っているからだ。お前は俺の真似じゃなくて自分自身の生きる道を見つけろってな。」


「お父さんめ。余計なことを。」


「でもこれで良かったと思ってるんだ。たしかにお前とお店をやることはできないけど、その代わりにこうやって稼ぎでお前を色々なところに連れて行ってやれるだろ。俺は俺のやり方でお前を幸せにしたいと思ってるんだ。」


俺がそう言うとちょうどさやかの家の前についた。

さやかは笑顔で言った。


「お兄さん。そこまで考えてくれてるんですね。」


「当たり前だろ」


「じゃあ、私を幸せにするために今から一つ頑張っていただいても良いですか?」


「今からか?」


俺の言葉を聞かずさやかは店の中に入り大きな声で言った。


「お父さん。私、今日友達と遊びに行くって言ったけどあれは嘘で、本当はお兄さんの家に居たんだ。私、お兄さんと付き合ってるの」


店からはどたどたという音が響き、オヤジのうるさい声が聞こえてきた。


「あのロリコン野郎。俺の娘に手を出しやがったな。そこにいるんだろ。ぶん殴ってやる。」


はあ。

これは俺も覚悟を決めるしかなさそうだ。

俺もまた大きな声で叫びながら店に入った。


「ロリコンじゃねえよ。ちゃんと大人になるまで待っただろ。」


さやかは俺たちの様子を楽しそうに眺めていたのだった。


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