転生したらエルフの姫でした5
朝になると、ショーンとアクアが起こしにきてくれる。
「今日は、ニア様がお呼びですので」
そうショーンに言われ身支度を整えて母様に会いに行く。
会う際は、ショーンとアクアは今日は別室に待機するとのことだった。
「おはようございます母様。今日はどうされましたか?」
「おはようルーズ。よく眠れたようね。良かった…今日呼んだ理由は、あなたの使い魔についてよ。サン様が召喚されたことから、あなたには半年後に試練に挑んでもらうわ。本当は少し先でも良かったのだけど時間の件もあるし、仕方ないわねぇ…」
「半年後…ですか?分かりました。 母様はサンについて色々知ってるのでしょうか?私のことを孫だと話したのですがそうなると父様は……」
捲し立てるようにそう言うと母様は少し困った顔をしてから首を横に振った 。
「ごめんなさいルーズ。とりあえず試練に挑むと分かるから」
そう言われると何も言えなくなり、とりあえず試練に向けて頑張るしか無い。
そのまま挨拶をし退室したあと、ショーンとアクアにも 、半年後に試練を受けることが決まったことを伝える。
2人も驚いた様子だったけど、どこか納得した表情をしていた。
「ルーズ様、半年後ならもう祈祷品の木彫りを作成しましょう〜」
そうアクアに言われて、精霊樹の所で材料の木を貰うことにした。精霊樹は魂の帰る場所のため、切ることは出来ない。その為落ちている木を拾う。
元が大きいだけに落ちている木も中々大きい。
失敗した時も考えて3本拾って、形をどうするか考える。
んー。やっぱり動物の形となると、サンの猫の形かなぁ…
そう思い何度も何度も鍛錬の間に木を削る。
ショーンとアクアも興味津々に木彫りを見守っていた。
夜になり、1人の部屋でサンを呼ぶ。
「サン、出てきてください。」
「はいはーい、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンッ!!」
目の前の空間が光りクルクルと回りながらスタッと地面に着地する。
前世の記憶でも見たのだろうか?相変わらず緩いなぁと思いながら、本を渡す。
「サン様も、よく休めた様で良かったです。これ読み終わりましたので。ありがとうございました。」
「んにゃ、いいよっ!簡単だったでしょ?分かりやすいのにしたんだよ!光属性と闇属性が少ないことは分かったかな?」
「はい、分かりました。早速なのですが…鍛錬をお願いできますか?」
「いいよー。基礎だけどね。半年後になったんでしょ? 任せてよっ。さてと、とりあえず光属性の治癒魔法から 教えるね。まず治癒とは言っても無くした物は戻せませんっ!」
「戻らない…のでしょうか?」
「んにゃ。そうだよ。死んだ人を生き返らせるとか、無くなった手足を生やすとかも無理だねぇ。それは時間を持ってしても変えられない。そもそもさ、死んだ人が蘇ってたら魂はどうなると思う?」
魂…。身体をある程度修復して戻すにしても魂はもう身体にない。身体だけ蘇っても動かす意識や思いが無ければ倒れたままになるだろうし…。
手足にしても失われた時点で治療魔法でも生やすことは出来ないのか…。
「そうですね…。では治癒とはどういった事が可能なのですか?」
「んー、死や無くした物以外の治療や痛みの緩和、病気をある程度は治したり遅らせたりかなぁ。まあ、無くなってない腕とかだったらある程度治すことはできるよ。その代わり魔力が大分取られるけどね」
なるほど。緩和かぁ…緩和ケアとか出来そうだなぁ…
魔力の量で言えばきっと私はエルフの中でも1番多い。
「分かりました。魔力に関しては自信があります。お願いします。」
「ふふ。その強い目は母譲りなんだろうね。まず治療にも3段階あって、まず初歩がヒール。疲れや軽い怪我病気などは治せる。中級がヒーリング。疲れは勿論、ヒールで治らない怪我も治る。上級がトータルヒール。ここからは、難しいけど、複数人に使えてエリア内に居る人は治せる。 そもそも光属性自体が珍しく使う魔力も大きいからね。ヒールである程度は大丈夫だと思うよ。」
そこから昼は様々な属性とショーンとアクアとの鍛錬
夜はサンと光属性の鍛錬と目まぐるしく日々が過ぎて行く。
半年後、祈祷品の猫の木彫りも完成したし、ある程度治癒魔法も覚えた。武器にしても、色々な武器を使えるけど、得意なのは弓と双剣だった。弓はアクアから。双剣はショーンからプレゼントしてもらった。
ようやく試練の時がきた。緊張するけどやりきるしかない。外の世界を見るため、また父の件もある。
見送ってくれるみんなに、必ず帰ってきますと告げる。
荷物をしっかり持ってさあ、行こうか。
門から出てひたすら森の道を行く。
周りはずっと森で景色がずっと一緒だなぁ。
ある程度進み暗くなって来る前に寝床を探す。
大きな木の上に3角のテントを引っ掛け広げる。
これで簡易テントの完成。魔法でできているため中は見た目より大分広く、6畳が2部屋とお風呂トイレがある。
拡張魔法が込められてあるらしく、母様から借りた。
昔の、有名なドワーフが作ったらしく国宝レベルのお値段らしい。
すっごく快適…。疲れてたのもあり、そのまま寝てしまった。
翌朝になり、昨日の夜にサンを召喚し忘れてた事を思い出して慌てて召喚する。
「ちょっと…忘れるとか酷くないかな?」
目をキッと釣りあげて見てくる。見た目が猫なだけに可愛い…
「ごめんなさい。次からは絶対呼びますから。」
「んー、まあいいよ。この辺かぁ…もうすぐ魔物が出てくるよ。エルフの村周辺の結界の効果が切れちゃうから。戦闘に関しては余程危なくない限り手伝えないからね」
周囲をチラリと確認してから、サンが肩に乗る。
「魔物…その為に訓練してきたので頑張ります。」
そう答えると満足そうに笑い姿を消した。
光属性の光の屈曲を使い自身の姿を隠す魔法らしい。
サンのレベルになると匂いまでも消せるらしく魔物も気付かない。
なんて便利な!!と思ったけど今回の試練では姿を消して魔物をすり抜けたらダメとのことで、渋々諦めた。
そのまま、少し歩くと気配が変わり目の前に2m程の白い狼が飛び出してきた。確か名前がジャイアントウルフ。
素早い動きと、鋭利な爪と、簡単な風属性の魔法を使ってくる。
単体のうちに仕留めないと。仲間を呼ばれると厄介だ。
双剣を取り出し双剣に魔力を纏わせる。
風属性の魔力を、纏わせ刀身が光ったのを確認し、こちらを切り裂こうとした手を容赦なく切り落とす。
「グゥゥウウァァァア」 唸り声を上げ一旦距離を取られる。
逃げられても困るため風属性を使いスピードを早めてそのまま首を落とす。
ボトッ!!という音と一緒に首が落ち、身体が地面に倒れる。
ふぅ。しっかり動けてる。良かった…とホッとしたのも束の間サンが慌てた様子で声を張る。
「ちょいちょい、血を出させすぎだよ。他の魔物が寄ってきてしまうから早く魔石取って離れるよ」
サンの言葉通りすぐにこちらに向かってきている魔物の気配が数匹ある。あー…。 やばい。
とりあえず魔石だけ慌てて取り出しそこから魔物を避けるように離れる。
「首を落とすにしても、切断面を凍らせるとかして血が出ないように次から気をつけてね。」
「分かりました。気をつけます。」
「ならよし。」満足そうにサンが頷きまた姿を隠す。