いざ、商業ギルド〜福祉用具店を開きます〜7
部屋に戻り寝る前に、ショーンとアクア、リーフとサンを集めて治癒魔法について少し話をしようとするも疲れているのか頭が回らない。
「おーい。ルーズ?今日はもう寝よう?一気に詰め込み過ぎても良い考えは浮かばないからね。1つずつ落ち着いてからまた一緒に考えよう」
そう言いながら、広げていた紙をサンが器用に直していく。
進めなきゃいけないのに…
その考えが顔に出ていたのかサンが傍に来る。
「ルーズ。今はまず店を開くことに集中しよう。店を開く前に倒れでもしたらそれこそ、何も出来なくなってしまうよ」
「ルーズ様、今日は寝ましょう〜?」
ショーンも私を優しく抱きしめながらベッド押し込んでくる。
うん…確かに。詰め込み過ぎてたかな…。
皆に心配かけちゃ駄目だね。
出来ることは全てしないとって焦り過ぎてた。
「分かったよ。ありがとう。今日は皆で寝よう?」
私がそう言うと嬉しそうにショーンもアクアもベッドに入る。
その日は疲れてたのと安心したのか夢は何も見ないでゆっくりと寝た。
朝起きてからアクアが髪を可愛くお団子にしてくれた。
「くぅ〜とってもお似合いですよルーズ様」
アクアもショーンも褒めてくれる。
今日は先王の訪問とアルト王子と話す事とソイの紹介の面接がある日だ。
昨日作った入浴剤も忘れないように鞄に詰める。
「では、ルーズ様行ってきますね」
ショーンを見送り、私とアクアとリーフで城に向かう。
城に着いてからは、メイドを呼び止めアルト王子に訪問後に伺う事を伝えて貰い、先王マーレイ王の部屋を訪れると医師のレナートはいつもの事だが、王妃のユッカも居る。
「店の方は順調に進んでますかな?」
ベットの上から優しい笑顔を浮かべる。
「はい、お陰様で良い物件を紹介して貰えて今はリフォームを依頼しています。後これを。良ければお使い下さい」
「これは……?」
「入浴剤です。カメレ様が入浴が好きとの事で作りました。お風呂の時に水球に入れてから入浴すると肌の保湿にもなりますし、香りも良く落ち着くかと思います」
「保湿ですって!?私も匂いを確かめさせて下さい!」
ユッカが保湿と聞き興味津々だ。
「こちらはユッカ様に。皆様の分をお作りしてきましたのでどうぞ」
「まぁ!ありがとうございます!」
早速匂いを嗅いではうっとりしている。
女性の美への追求はどの世界も一緒か……。
レナートには、何の素材と薬を使用したかを紙に書いたのと一緒に渡す。
「この薬を混ぜてますが他にも良いのがあれば教えてください」
「分かりました。それにしても…本当に色々と思い浮かびますね。お湯で保湿など思いつきませんでした。王妃様も大変喜んで居られて」
確かに。
早速夜に、お風呂に入れると大切そうに抱えて居る。
「ふふ。女性にも人気が出そうですね」
「間違いないですね」
レナートと2人で笑って居ると、王妃に呼ばれる。
「ルーズ様方に、今日はお礼を伝えたくて」
ん?なんの事だ?
「カメレの事ですよ」
表情に出ていたのか少し笑いながらマーレイ王が話す。
「ユッカは小さい時からカメレに懐いてましてね。ずっと心配していたんですよ。手紙のやり取りはありますが、会いに行く事は公務や護衛の都合もあり、頻繁には行けませんから」
「えぇ。カメレ様には婚約前から良くして頂きましたし婚約の後もとても喜んでくれて子どもたちにも、沢山のプレゼントを贈って下さったわ。だからルーズ様がカメレ様の所へ訪問して話しが出来る事や身体の事も見て下さりとても、感謝しております」
王妃がゆっくりと頭を下げる。
「頭を上げてください。私達としてもカメレ様と関われることで色々気付かせて貰ったりと楽しく思っておりますので」
私がそう言うとゆっくり頭を上げて微笑む。
「ありがとうございます……そのカメレ様は元気でした?」
「元気でしたよ。今は車椅子を製作中ですので」
「そうですか。良かった…カメレと車椅子仲間になりますね」
マーレイ王が、自分の車椅子を見て笑う。
その後は皮膚の状態等を見させて貰う。
皮膚の発赤も、マシになっている。
体位変換と薬が効いたのだろう。
体位変換にしても少し起きてしまうので時間を調整したいとの事でレナートと話し合い夜中の寝てる時は3時間半に1回になった。
オムツもある程度形になったのでお試しとしてレナートに少し渡しておく。
手触りを確認してから吸水力に驚いていた。
夜に使ってまた感想は次の時に話してくれるそうだ。
「ルーズ様、今は獣人国のキャラバンが来ているのはご存知?」
「えぇ。ユッカ様。知ってます。また時間がある時に皆で回る予定です」
「そう…」
表情を見るに、王妃もカメレ様の悩みを知っているのかな?
「カメレ様…ですか?」
私がそう聞くと王妃が少し硬い表情を浮かべる。
「えぇ。ずっと前にカメレ様から聖女様の話を聞いて。最近手紙でまた少し話されていたから…」
そうか……。
気にされていたし、私としても獣人国には行く予定だったからそれを早めて聖女様に会って話をして、それをカメレ様に伝えられたら……。
「私としても獣人国には行きたいと思っておりましたので店が落ち着いてからになりますが、行って聖女様に会う事は出来るのでしょうか?」
私がそう言うと王妃が顔を上げ嬉しそうに話す。
「えぇ!こちらから獣人国の王に伝える事は出来ますわ」
「分かりました。ではまた店が落ち着いたらこちらから、声を掛けさせて頂きます」
話が纏まった所で、先王と王妃の部屋を後にして、メイドに案内されアルト王子の部屋に向かう。
「こちらでございます」
メイドが扉の前の兵に、声を掛けると聞こえていたのかアルト王子が中から扉を開けてくれる。
「お待ちしておりました。ルーズ様、アクア様、リーフ様」
部屋の中は広く一面の壁が本棚になっており、机の上には書きかけの書類が見える事から、執務室の役割もあるのだろう。
案内された椅子に座るとメイドが茶菓子を用意してくれてアクアは早速、ケーキを嬉しそうに口に運んでいる。
「今日、お呼びさせて頂いたのは使い魔についての話なのですが…ルーズ様、ある程度お気付きですよね…?」
使い魔……ね。
「引き継ぎの件でしょうか?」
私がそう聞くと、王子が苦笑いを浮かべ頷く。
そっか。うん。
先王から使い魔の話を聞いた時にふと思った。
維持がもう限界なのでは?と。
この国に来る前に山賊に襲われたが、その山賊を私が倒すまで捕まえられて無かったから。
今の国王は引き継がないのか?と。
でも、それをこちらから聞くことはしなかった。
何か事情があるだろうし、何よりも、聞いて良いのか分からなくて。
「国王の父は魔力量が少ないのです。なので召喚しても維持が出来ません…。今はお爺様が何とか維持をしてますが…ご存知の通り召喚出来る数も減ってきてるのが現状でして…お爺様の身体の事もありますし早く僕が引き継ぎたくて。エルフは魔力の扱いに優れていると聞きます。ルーズ様お力をお貸し頂けないでしょうか?」
アルトが思い詰めた様子で頭を深く下げる。
私に出来る事はしたいけど……
「アルト様、確かにエルフは魔力量、魔力循環共に優れています。可能な限りお手伝いはさせて頂こうかと思いますが、お爺様は了承しているのですか?」
「……いいえ、正式な引き継ぎは2年後になってます。ですがそれだとお爺様が心配なんです…」
気持ちはとっても分かる。だけど……
「私達はアルト王子に協力を惜しむつもりはありません。ですがまず、話をしっかり家族でしてください。その後にお手伝いさせて頂きますので」
大切な家族が弱っていくのを見るのは辛くて、心配になり焦る気持ちは分かる……。
今なんて余計にそうだろう。
車椅子に乗りできる事が増えてくると、その前の状態を思い出し余計に不安になるのだろう。
だけど、しっかり話し合って欲しい。
アルト王子が大切に思い心配なように、その家族もアルト王子の事を大切に思っているのだから。
私がそう言うと、暫く考えた後アルト王子が頷く。
「……そうですよね。分かりました。1度しっかりと家族で話し合ってみます」
私が笑って頷くとアルト王子も優しく頷く。
「では、私達は少し席を外しますね〜。リーフ様、少し散歩に行きましょう〜!」
アクアがリーフの手を握りスっと立ち上がると、メイドに何やら話し、メイドと部屋を出ていく。
おぉ……
アルト王子と2人きり……
何を話せば……
「ルーズ様、今日の髪型よくお似合いですね。とても綺麗です」
真っ直ぐ目を見て、優しく声を掛けてくれる。
「ありがとうございます。アクアがしてくれて」
褒めてくれるのは嬉しい、でも男性に褒められる事が慣れてないだけに照れる。
その後2人で紅茶を飲みながら他愛ない話をしているとドアが勢い良く開く。
「お兄様!!ルーズ様と2人きりなんてずるいですわ!」
ドレスで慌てて走ってきたのか髪が解けかけている。
「あ〜…ユイカ…」
「もう!何ですの!その私が来て残念そうな顔は!私だってルーズ様と話をしたいです!」
ユイカが私の隣に座り、軽く抱きしめてくる。
「ルーズ様、私の部屋でも話しませんか?」
「ダメだよユイカ。今日約束してたのは僕だから」
「むぅ…そうですが、お兄様はもうお話はされたでしょう?」
「そうだけど……」
バツが悪そうにアルト王子が口ごもる。
「2人とも仲良しさんですね。ユイカ様、本日は時間もあまり無いので次ゆっくりと話しませんか?」
「ん…確かに.ゆっくり話が出来る方が嬉しいですわ。ルーズ様またお時間がある時に色々お話しましょうね!お菓子も美味しいのを沢山用意させて頂きますわ!」
私が頷くと、嬉しそうだ。
「それではルーズ様、お誘い楽しみにしてますわ」
スキップしそうな勢いで手を振りユイカが部屋から出ていく。
「ルーズ様、ただ今戻りました〜」
ユイカと入れ替わりでアクアとリーフが戻ってくる。
そろそろ時間かな……
「アルト様、今日は失礼致しますね。お茶菓子美味しかったです。ありがとうございました」
「分かりました。僕こそ話を聞いて頂きありがとうございました。門まで送りますので」
アルト王子が立ち上がり、一緒に門まで歩き、馬車に乗り込む。




