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いざ、商業ギルド〜福祉用具店を開きます〜4

「聖女を……ラフィー様を…守れなかったの。王族として何度も声明は出したわ。聖女も必死に戦ってくれたでしょう。あの場に立つ力さえ無かった私達にどうして責めることが出来るの…」

カメレの目から涙がポロポロと零れ落ちる。

どうしてだろう?

目の前の老婆が当時の少女の様に見える。

ずっとやり切れなかったのだろう。ずっと……


誰かのせいにして、行き場の無い思いをぶつけて誰が幸せになれたのだろうか。

失った命は誰かを責めても戻ってこない…

きっと、誰も幸せになれない。


「私達王族は、聖女様を獣人の国で保護してもらうようにしたの。聖女様もそれを望まれて…。最後に会った時に私何も言えなくて…ただ泣いて。それなのに抱きしめてくれた。ごめんなさいって……」


それから人間の国では今でも光属性を持つ人は産まれていない。

医術にしても前の世界に比べ、まだまだ進歩しておらず光属性さえ居ない。だからこそ光属性は貴重なんだと。



「今も…その聖女は裏切り者と呼ばれているのですか?」


「……一部の者達にはまだ呼ばれているわ。でもそれよりも感謝してる人達の方が圧倒的に多い。だって勇者達が居なければ今のこの国、国民の命も無かったかもしれないんだから。」


そう言いながらカメレが棚を指差す。

「あの本をレナート」

レナートがカメレに言われた本を手に取り私に渡してくれる。


これは……絵本…?

「私が作ったの。賢王の話のように本にする事で広めようと。勇者達の戦いと守ってくれた私達の事を」


ペラペラと捲って見る。色とりどりの色彩を使い優しいタッチで描かれた可愛い絵。

最後のページが人々の心に問いかける形で終わっている。


「ルーズ様……申し出は大変有難いのですが、この国では光属性というだけで危険に巻き込まれてしまうかもしれません…。それに私だけルーズ様にお願いして治癒魔法を受けるのは…出来ません」


そう…。でもカメレ様ならそう言うかなと聖女の話を聞きながら思っていた。

儘ならぬ物だ。

前世と違い今は治癒魔法を使えるのに癒す事さえ出来ないんだから……。

「分かりました」

「でも、気持ちは本当に嬉しいわ。レナートもありがとう」

「いえ…」

本当は治癒魔法を使う方が良いのは分かっているんだけど、私もレナートも本人の意思を尊重する事の大切さも分かるだけに何も言えない。


「ルーズ様…もしもこれから先、獣人国に行くのなら聖女…ラフィー様を見て貰えないでしょうか?私の勝手な思いになるけれど、あの方がどうしても心配で…獣人国の使者から色々話は聞くけれど、あの方も、もう長くはないみたいなの……私からの手紙だと思い出したく無い記憶が蘇ってしまわないか。そう思うと書けないのです………」


ずっと考えて悩んでいた思いを話して少しスッキリした表情からまた思い悩む表情に変わる。

でも、そっか。

最後に会ったのがもう何十年も前になるのか。

そこからずっと色々な感情を抱えていたんだろう。

心配してると伝える事さえ出来ずに……。


獣人国。

いつかは行ってみたいと思っていたけれど、早めに行けるように母様に話を通して貰っても良いかもしれない。

「分かりました。今すぐは無理ですが行く時には、ラフィー様に私も会ってみたいです」


私が笑ってそう言うとカメレ様も笑う。




そこからは治癒魔法は無しでどのようなサービスが欲しいか、今何が困っているか等を聞き取りしながら考えていく。


車椅子にしても注文をして貰えることになった。

オーダーメイドで色々デザインを話し合う。

生地の質感、色、刺繍は必要か等を聞きながら個人にあった動きが出来るものとの事で、車椅子の横側が開くタイプ、足を置くフットサポートが動くタイプに決定した。


「ふふふ。足が悪くなって本当に困った事が多かったのだけど足が悪い事でこうやってルーズ様と出逢えて色々選びながら作っていく。そう思うと、この足が繋いでくれた縁なんでしょうね…少しだけこの足が好きになりました」


車椅子に刺繍する光属性の模様を紙にデザインしながらカメレが話す。

前向きな気持ちになれたのならこれ程嬉しいことは無い。


車椅子が届き次第また持って来させて頂く事を伝えカメレの屋敷を出る。


帰り道、このままヒュドの店に向かう道中、デザインの絵に見蕩れていると、リーフも横に座る。

「このデザイン綺麗ですね」

「そうだね。聖女様が光属性だったからこそ、その形を考えたんだろうね…」

「それだけじゃ無くルーズ様もでしょう?」

そうなのかな?

そうだと嬉しいなぁ…。


ヒュドにもデザイン画を見せながら車椅子の説明をする。


「ふん…今度はここを開くようにか……面白い!後はそうじゃな、予算的に、車椅子のシートを魔力を込める事で暖かくも冷たくも出来てももいいかもしれんのぉ。いやでもそれなら後付けタイプにしても…。シートだけで作ってみるかの」


ワクワクとしているジュドに見送られ、刺繍の店に着く。



こじんまりとした小さな店で看板には針の絵が描かれている。

サハラが刺繍ならこの店と太鼓判を押していたけれど少し緊張しながらドアを開けると中には若い女性が3人いる。


壁には刺繍のタペストリーが飾られていてその刺繍がまたすごく綺麗…

影の所は糸を変えて影をしっかり浮かび上がらせていて見蕩れてしまう。

「いらっしゃいませ」

50代位かな?刺繍が綺麗なショールを肩にかけて髪を1つに纏めた上品な女性が声を掛けてくれる。

「こんにちは。サハラから契約したとの事で今日は刺繍を、お願いしにきました」

「ありがとうございます。サハラ様に話は聞かせて頂いております。貴女がルーズ様ですね。私はこの刺繍屋を営んでおりますメリッサと申します」

メリッサに奥の部屋に案内され刺繍のデザインを見せる。

「まぁ……光属性……珍しいですね。聖女様がデザインモデルなのでしょうか?」


私が頷くと嬉しそうだ。

「私の父が聖女様に命を助けられましたの。父は兵士で。いつも聖女様に感謝していました…まさかルーズ様との初めての取引が聖女様のデザインだなんて……ふふ。不思議な縁ですね。お任せ下さいませ。必ず良い仕上がりに仕立てますから」

そう言いながら早速メリッサが楽しそうに糸を選んでいる。

きっと素敵な出来になるだろう。


完成が7日後との事で見るのが私も凄く楽しみだ。



店を出て空を見るも、もうすぐ夕方か……

沢山話したからなぁ。




あともう1件。

ラグに紹介して貰ったリフォーム等、内装工事の店に行かないと。

店の完成は早い方が良い。


ラグの店を過ぎて15分程進んだ所にアイアンで出来たオシャレな看板を付けた3階建ての建物を見つける。

「ここですね」

「だね…。結構古い建物だね……誰か居るかな…」

ドアを3回叩くも反応が無い。

あと1回だけ叩いて誰も居なかったらまた明日にしよう。

叩こうとした時ドアが勢い良くガンッ!と開く。

「はいはいはーいっ!!どなたですか〜!!」

…熊?大きな身体がモコモコの毛皮で包まれている。

いや……やっぱり熊だ……。つぶらな瞳で可愛いらしい

。体も声も大きいなぁ。

「んん!?お!!お客さん!?ご依頼ですか〜?」

「はい、そうでs「あぁ!!何この生き物!?可愛い!!触りたい!あっ…ふわふわ……」

サンが視界に入った途端、熊が凄い勢いでサンを捕まえ抱きしめている。

モフモフ×もふもふ…その光景が、昔絵本で見た童話の様で少し和みながらリーフと眺める。



「すみません、依頼をしたいんですが」

私がそう言うと、ハッとした顔をした後サンを抱っこしまま嬉しそうに笑う。


「あぁ!そうだった!!どんな依頼ですか〜?」

「えっとラグさんから紹介して貰ったんですけど、店の改装を」

「ぁあ!!君が!!!ラグから聞いてるよ〜面白い事を始めた子が居るって!ふふふっ君がそうなんだねぇっ!いいよ!いいよ!!1回現場を見て話したいから明日の昼間なんてどうかな?」

明日の昼なら大丈夫。

「大丈夫です。よろしくお願いします。場所はここで時間は昼の1の鐘が鳴る頃で大丈夫でしょうか?」

「うんうん!!問題ないよ〜。じゃあ、また明日よろしくね〜!」


ふぅ……

今日のやる事は終わった。

カメレの車椅子の製作依頼と店の改装依頼。

疲れたけど、後はケアプラン作成もしないと。



家に帰ると、ショーンとソイが出迎えてくれて今日の訪問の報告を聞く。

先王褥瘡の肌も大分良くなってるとの事。

今日は先王マーレイ王と、王子のアルトが庭を散歩していたと。

その際マーレイ王にアルトが何かをお願いしていたが断れてアルトがルーズ様と話したいと言っていたと報告を受ける。


アルト王子が私に何の用だろうか……?

んー……

次の訪問の時にアルト王子とも少し話そうか…。


その後は、こちらも今日の報告をして授業をしている子どもたちにカメレの症状を話し、ケアプランを一緒に考える。

「この方はお風呂が好きなんですよね……お風呂を楽しんで貰えるように何が出来るかな…?」



入浴だけじゃなく楽しむ……

あっ!入浴剤!!

「ねぇサハラ……」

「どうしましたか?」

「お風呂に入れる保湿剤って人間の国だとあるのかな?」

「お風呂に入れるのですか…?薬を……?いえ、ありませんが……」


無いなら作れば良い!


保湿ケアも出来る良い匂いの入浴剤があれば売れそう。

子どもたちも薬をお風呂に入れると聞き驚いてる。


スーやナキ達も呼んで、そこからは作りたい商品の効果と匂いも選べるように何種類も作りたい事を話す。


今回は小さな子どもたちも一緒に色々な花、匂いが良い魔物素材を保湿のクリームと色々組み合わせて液体状にしてみる。

「私はこの匂いが好きです〜」

「クンクン」

アクアとサンや子どもたちはハニー系の甘い匂いに夢中。


「私はこの爽やかな匂いですね」

ショーン、スー、ソイ、リーフ、サテラは爽やかなレモン系の匂い。


ナキ、私と少しの子どもたちは、花の優しい香り。



とりあえずこの3種類の香りが人気だな……

色々な匂いを嗅ぎすぎて少し鼻もおかしくなってきたし、この3種類で決定にしよう。


それを何個か作り各々使ってみる事にした。


あ。レナートの意見も聞きたい。保湿剤が他に良いのがあるかもしれないし……

そうなると先王のマーレイ王にも渡したい。

店のお礼としても喜んで貰えるかも…。






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