いざ、王城へ15
「これで終わりですか?」
アクアが名残惜しそうに聞いてくる。
「そうみたいだね。これの後に会いに行って事故にあったんだろうね……ねぇ、それより…サン!!光の精霊様ってサンの事だよね!?」
「あっはぁ……うん。そうだねぇ…。今じゃあの子は、賢王って呼ばれてるんだね」
懐かしそうに目を細め笑う。
「あんまり人間の争いには介入したく無かったんだけどね、何をあの子が成し遂げるのか見たくなったんだよね。使い魔にしてもそんなにも見れるようになっていたなんてね…」
「会わなかったの?」
「そうだね…会わなかったってより、忘れてたの方が正しいかもね。人間は脆く寿命も短く儚いって………それでもあの子は成し遂げたんだよね。凄い子だ」
サンが褒める事なんて珍しい……
優しい表情を浮かべるサンを見て少し胸がキュッとする。
サンは一体どれだけの人を見送ってきたのだろう…
どれだけの別れを……。
「でも、会えなかったのだけは悲しいですね……」
ショーンが本を優しく撫でながら話す。
「そうだね…でもルーズがいつか言ってたみたいに、死後の世界がもしあるのなら沢山話せてるといいね」
「種族ごとに考えた方や送り方は違いますが、それだと会えてると良いですね……」
ショーンがそう言いながら空を見る。
前に1度だけサンにだけ話した事を、覚えててくれたのか。
でもそうだなぁ……
この世界にも死後の世界がもしも、あるのなら沢山シュンじぃと話せてたら良いなぁ……。
誰に聞くかで、話は変わるし見えなかった所も見えてくる。
一人一人思いがあり、歩いてきた人生があって…。
それをこれからも支えていけるように、もっと向き合って頑張っていこう。
皆でその後、思い出話やこれからの事を話し合った。
明日もまた、先王のマーレイ王に会いに行く。
その時賢王の話をもっと聞いてみよう。
次の日、日記を返しながら色々な話をまた聞けた。
賢王が亡くなり見送りの国葬で沢山の種族の人がお別れを伝えにこの国に訪れたと。
魔人族は、淡く光る大きな白い花を。
獣人族は、緑の小さな沢山の耳花を。
エルフ族からは、光りながら色が変わる花を。
様々な種族が列をなして異なる花束を贈るその光景はとても綺麗で幻想的だった事から、様々な人の心に響き絵として残っていると。
賢王が残した使い魔も次の王がそのまま契約を維持し代々そうやって引き継ぎながら今に至るのか……。
私の表情を見てマーレイ王が誇らし気に話す。
「ルーズ様、この使い魔契約は確かに代償はありますがそれでもこの国を次の世代により良くして繋げていける。その力があります。だからこそ私は今のこの身体も誇りに思っているのです。貴女方にもこうして会えましたし私はもう本当に、満足しています」
誇りか……。
そこからは魔導具の魔力式浴槽と魔力式タオルの話をする。
是非使ってみたいとの事で完成した物を渡して今後の販売方法や商人ギルドへの口利きなどをお願いする。
レナートが使うのが楽しみだとワクワクしていたのを見て作って良かったと心から思った。
マーレイ王から商人ギルドへの紹介状を手配して貰い、魔導具も次に会う時までに使用してみて感想をまとめておくとの事だった。
帰路に着き家に着くとスーからジュドから出来たと使いが来たとの話があった。
おぉ!流石ジュド!!
2日で作るとは……。
「明日来てくれとの事でしたっ!」
明日か。
マーレイ王への訪問は無いし、授業にも使えるし早速明日取りに行こう。
皆を集めて、とりあえず今日魔力式浴槽と魔力式タオルを渡してきた事と、先王に書いて貰った紹介状を見せて話し合う。
「これは…マーレイ王のですね。直ぐに書いて貰えるなんて…流石ルーズ様方です」
サハラが紹介状を見ながら嬉しそうだ。
車椅子とベビーカーも明日取りに行って、一緒に登録出来るかも確認する。
可能との事でこれで4つの商品を売れる。
ベビーカーも孤児院の方でも使えるし、スーやナキも楽しみだと言ってくれた。
リーフとサンとランと部屋に戻り、ゆっくり寛いで居るとサンが横に座り尻尾を振りランをあやしながら話し出す。
「ねぇ、ルーズ。マーレイ王が『誇り』と言った時どうして少し悲しそうにしたの?」
バレてたか…
表情を変えたつもりは無いんだけどなぁ……。
よく見てくれてる。
リーフも横に来て真っ直ぐ私を見てる。
「昔にね…よく考えたなぁと思って。」
リーフが首を傾げる。
「あぁ…そうだね。リーフ。私には前世の記憶があって今してる介護もね、その世界の時の仕事なんだよ。この世界に来てから私に何が出来るか、何がしたいかって考えた時にね……この世界にも子どもを助ける場所や、最後の瞬間に『その人らしさ』を守りたいって思ってね……」
「前世の記憶……その世界でも介護の仕事は楽しかったのですね。今ルーズ様は毎日楽しそうにされてますから」
そう言われると……そうだね。
楽しかったし、やりがいもあった。
少しでも誰かの役に立てて…
でも同時に……
「分からなくもなってたんだ。生きるって何だろって……この世界よりも医療も凄く進んでてね、魔法が無い代わりに魔法でも出来ない様な事が医療で出来たの」
「それは凄い世界ですね」
少しだけ目を輝かせながらリーフが話す。
「そうだね。凄かった。食べれなくなっても医療の進歩で栄養を取れたり人の命を延ばすことが出来た。意識がなくても生きていける…。話せなくても、動けなくても……。でも同時にね、考えてしまうんだよ」
「考える…ですか?」
どう伝えれば良いのか。
どう話せば良いのか……
否定したい訳じゃない。どうしたら……
私が少しの間何も話せずに居る間、サンとリーフは何も言わずに待ってくれる。
それが少し安心した。
「話せない、動けない人達の今の気持ちや思ってる事ってどう汲み取れば良いのかなって……。想像は出来るし考える事は沢山したの。でもそれは私の考えになるでしょ?今も授業で教えてるけれど、「尊厳」「傾聴」「その人らしさ」それが伝えられないって……どんなに辛いんだろうかって」
「………」
サンもリーフも何も言わない。
ただ、聞いてくれる。
「だからと言ってね、それが悪いとか否定する気は一切無いの!私も大事な人が、死ぬか延命かってなると、生きて欲しいって思うから。ただね、マーレイ王が『誇り』って言ってたでしょ??私も本当によく考えたなぁ…って。意識も無い、伝える事も出来ない。何も出来ないのが、本当に「その人らしさ」なのだろうか。その人の『誇り』は?って。長い間生きてきて伝えたい事は沢山あるはずで……。生きて元気な時に自分の最後どうしたいかってあんまりみんな考え無いんだよ。『死』は怖いから。でもどの生き物でも訪れる。逃げられない。だからこそ最後はしっかり伝えてて欲しいんだよね。考えてて欲しいなぁって……少しでも家族にもその方にも寄り添いたいから」
「……私はその世界を見た事は無いので、何とも言えませんが日記やマーレイ王を見てると私も少し思う事があります。精霊は死という概念が無いのですが…私にも何かを残せますか……?」
表情は変わらないのに、何故だろう…
リーフが少し不安そうに見える…。
「残せるよ…残そうよ!一緒にこれからも頑張ってくれる?」
私がそう言うとリーフが大きく頷く。
「気持ちは落ち着いたかい?」
「うん!心配かけてごめんね。もう大丈夫。私は私の出来ることを頑張る」
「そうだね、出来ることを1つずつ進めていこう。あまりに手を広げてしまうと、こぼれ落ちてしまうから」
そう話す表情が……
サンも長い長い時間を過ごす中、色々な物がこぼれ落ちてしまったりしたのだろうか…。
今の私では想像も出来ない長い時間…。
これから、もっとサンに笑って貰えるように私に何が出来るだろうか…サンの寂しさを少しでも埋めれるように……。
そう思いサンの方を見る。横に居たランが遊び疲れたのかスヤスヤと寝ている。
3人で少し笑いランの寝顔を見ながら皆で一緒に眠る。
次の日、サン、リーフ、ショーン、ソイを連れてヒュドの店に向かう。
「こんにちはー!」
「おぉ!来よったか!みてくれ!!」
上機嫌なヒュドが車椅子とベビーカーを持ってきてくれる。
「お主の言うように、畳めるようにもしておる。ロックはこれを引っ張ると……」
カチャと音がしてしっかりロックがかかっている。
凄い!!
「それとなタイヤ何じゃが……」
触って見ると硬さもあり、動きも滑らかだ……
これは……凄い……
しっかりタイヤだよ!!これだよ!!
「傷んで来た場合じゃが、粘液をもう一度塗り補修する事でまた使える筈じゃ。」
修理も出来るのか。
ソイが乗りたそうにソワソワしている。
「ありがとうヒュドさん!」
そう伝えると照れたのか頬をかいている。
「早速だけど、ソイ乗ってみる?」
「良いのですか?」
ヒュドも私も頷き乗って自分で動かしてみる。
「これは……凄いです!自分でも動かせるのが、また良いですね!」
ソイが興奮しながらタイヤを動かし横に移動してみたりロックしてみたりと、嬉しそうだ。
「ワシも作ってて、面白くなってきてな…材料を追加しながら後2台ずつ違うパターンも作ってみたんじゃ」
そう言いながら、ヒュドが奥から大きめな車椅子2台と少しコンパクトなベビーカーと台車のようなベビーカーと2台を持ってくる。
「こっちの車椅子何じゃが、更にクッション性とデザインにこだわって見ての…これを外してゆっくり倒すと……」
リクライニング機能!!
しっかり背もたれが下がっている。
これは……めっちゃ良い……
「あとこっちの車椅子は、獣人族用じゃな。身体の大きな奴も居るから、それに合わせたサイズじゃ。ちっとばかし押す時に力は要るがの」
確かに……
普通の車椅子よりも2倍近くでかい。
でも押す人も大きかったら問題無いのか……
種族事によっての欲しい機能は違うもんね……
前世じゃ種族間の違いなんて考えた事無かっただけに、ジュドの発想には助けられる。
「このベビーカーは背もたれが、そんなに倒れない代わりにコンパクトにして、こっちは獣人族の多児子用じゃ。一度に3人は産むからの」
それでこの台車のような形か……
横にしてもクッションが入っており柔らかい。
「どれも本当に凄いよ!!これ全て購入させてくれる?」
「あぁ。勿論じゃわい。買ってくれんと逆に困ってしまうわい」
そう言ってジュドが豪快に笑う。
そこから、ショーンと私とジュドでベビーカーと車椅子自体の専売契約を結び、次の注文分の前金も支払う。
後ろでソイとリーフが交互に車椅子に乗っては動かし、サンがそれをジッと見てる。
「よし!これで契約完了じゃな!全て後2台ずつ追加との事じゃが……1週間もあれば出来るわい」
本当凄いスピードだな……
また、出来たら使いを出すとの事でジュドに見送られ
昼からは購入した車椅子を早速1台授業で使ってみる。
子どもたちも意見を言い合いながら動かしてる。
「押すスピードはゆっくりのが良いよね!」
「ロックをかける時はしっかりかかってるか確認もだよ!」
「この足置きも注意しないと危なそうだよー!」
「次!僕が乗りたい!」
しっかり考え育ってくれてるのを見ながら、その場をショーンに任せて次はベビーカーを孤児院の方に持って行く。
「これがっ!!」
キラキラとした目でスーとナキが嬉しそうに子どもを乗せてみる。
「抱っこしなくても動けて凄く楽ですっ!」
「これは貴族にも売れそうですね…ルーズ様、これの座面の所を刺繍入りなどにも出来ますか?」
サハラが嬉しそうにランを乗せてあやしているスーを見ながら話す。
「貴族女性は、オリジナルや特別感に弱いのです。貴女だけのデザインを作れるという事にすると、更に売れるかと…」
成程…。確かに!
オシャレ感や特別感をプラスする事で更に売れそうだ。
流石サハラ……
頼りになる……
「一度ジュドに確認してみるけど、多分大丈夫だと思う……でも、そうなると刺繍を入れてくれる店を探さないと…」
「それなら紹介したい店がありますわ。この生地でしたら問題無く出来るかと…」
顔も広いし本当に助かる。
早速、帰ってきて早々になるけれど、ジュドに使いを出し「問題無い」との事だった。
生地にしてもこちらで数種類用意して、それを選んで貰い刺繍を入れてジュドに組み立てて貰う。
番号を振っておく事で間違いも無いだろうと。
オーダメイドベビーカーか……。
サハラに伝えると商業ギルドに申請に行くついでに早速、刺繍屋に出向き相手方から是非契約させて欲しいとの事で契約を結んできたと。
トントン拍子に事が進む。
皆と話し合い協力して支えて貰いながら、仕事をするこの日々が本当に楽しい。
次の日はリクライニング出来る車椅子を持って王城に行くと、レナートが嬉しそうに感想を伝えてくれる。
「これは!!なんて凄い!マーレイ様!これなら散歩も出来ますよ!」
「これなら押してもらう事で、できるね…」
嬉しそうな2人を見てこちらも嬉しい限りだ。
「あぁ!ルーズ様!ありがとうございます!あの魔導具もどちらも本当に便利で…久しぶりにゆっくりとマーレイ様に入浴して頂けました!タオルで拭く事も無いので皮膚の心配もありませんし本当に助かってます!その上……この車椅子があればもっと簡単にお風呂場まで行けますし!」
レポートです!と凄い量の紙を渡される。
どういった患者に必要かや、介助時の違い等をびっしり書かれている。
興奮して寝る時間を削ったのか、クマが薄ら目元に浮かぶも楽しそうな表情は変わらない。
途中からは王女のユイカも来て車椅子を押してみながら、マーレイ王と色々話している。
「お爺様!!少し廊下を散歩しませんか?」
「あぁ。行こうか」
目尻が優しく垂れ下がり嬉しそうに頷く。
廊下をゆっくり歩き、所々に飾ってある花の前で止まっては花を眺め話して笑っている。
そんな2人を周りも暖かく見ている。




