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いざ、王城へ14〜賢王の日記〜

そこからは、本当に忙しかった。


捕らえた王妃と王子を調べあげ協力した者達からも事情を聞き、脅されていた者達には安全を約束する為に王妃と王子の死刑執行。戦争に行っていた国民達に帰還命令を出して、獣人国には使者を送り賠償金額を決める事で停戦協定を結び、国民達には国庫から食料を給付しながら、治安維持の為にも兵士を巡回させたり…。


特に苦労したのが、王妃に協力していた貴族の洗い出し作業だ。自分がピンチだと分かるやベラベラ喋り出し次々余罪が溢れ返った。

奴隷を購入していた貴族も中には居て、奴隷の保護と、身元の確認…。

帰る場所が無い者達も中には居て、本人の要望次第ではこの国で保護し働いて貰うことに。

捕まえた貴族達は罪の大きさにより、死刑や追放、お家取り潰し……。



レンやレイス、レジスタンスメンバーに空いた貴族領の統括を任せ、第4王妃の人脈や力も借りながら国が落ち着くまでに2年。

前の暮らしとまでは、まだいかないが歩く人達の目に未来を見据える力強さが見える。

店の活気も増えて子どもたちも元気に走り回っている。

平民だろうと優秀なら取り上げ、貴族だろうと罰する。

それを徹底して行ってきた。



城のバルコニーで町の様子を観察しながら考え事をしていると、第4王妃のラーナがゆっくりとこちらに歩いて来る。

「ダレイオ様…お疲れの様ですが...」

「ラーナ様…いえ、大丈夫です。心配ありがとうございます」

ふぅ…とため息を吐きながら、ヨシヨシと頭を撫でてくれる。

「また、強がるのですか?あまり寝れてないのか目の下にクマが出来てますよ…」

お見通しか…。

書類の確認をしながら椅子で寝落ちしてたりしてるしゆっくりベットで寝たのなんて、いつだったか……


「あまり無理しないようにして下さいね…。ダレイオ様…お願いがあるのですが……」

神妙な表情で不安そうにこちらを真っ直ぐに見ている。

「何でしょうか?」

「この国も、大分と落ち着きましたね…。実はずっと考えていたのですが、私はこの国を去ろうと思っております」


去る?………?え!?国を!?

驚いて口をパクパクとしたまま何も言え無い。

「私はこの国が良くなってもここにいる理由には、ならないのです…それに!外の世界も沢山見て見たい…数名の護衛を連れてこの国を出る事を許して貰えないでしょうか…?」

その言葉にハッとした。

ここにいる理由……。

王が実は死んでいてこの国に縛られる理由はもう無いのに、それでも居てくれたのは…俺の為か……。

この国はラーナ様にとっては良い思い出も辛い思い出も沢山ある。

今まで沢山戦い抜いてきたんだ…。

なら答えなんて決まっている。


「許すも何も…感謝しかありませんから。寂しくなりますね…ラーナ様…」

「ダレイオ様…またいつか会いに来ますから。新しい思い出を沢山持って」

そう言って嬉しそうに微笑む姿が、光に照らされて綺麗だった。


そこからは他愛も無い話をゆっくりした。

「ねぇダレイオ様覚えてます?私がこの城に嫁いで来た時の事…ふふ!その顔は覚えてませんね。でも私はずっと覚えてますよ。これからの人生…どうなるのか…第4王妃なんて…と悲しみに暮れていた私にすぐに花を持ってきてくれた貴方の事を」


花?…渡しただろうか……

「花って言っても、花の絵ですよ。何輪も咲き誇る綺麗な花の絵…これなら枯れないからって。枯れる事は悪いことじゃないけれど残しておける花も、綺麗だからって。その花の絵が本当に綺麗で……」

思い出しながら、時々こちらを見ながらゆっくり嬉しそうに話してくれる。


「でも、ダレイオ様が大きくなるにつれ心配が増えました。綺麗な花の絵を描いていた子が何もかも楽しくないって顔して作り笑いを必死に浮かべてましたから…。でも今はもう大丈夫ですね。仲間も増えて…毎日忙しくも楽しそうにされておられる。本当に良かった」

あぁ。

毎日今は楽しくて仕方ない。

皆で少しずつ国を良くしていく事が。

自分より下の子達が伸び伸び笑い合える環境にしていく事が……。

そしていつかシュンやエルフの皆と、レイスやレン仲間達と楽しく食事しながら話し合いたい……。


「私は何処に居ようと応援してますから」

そう言って優しく抱きしめてくれる。

もう大丈夫だと言うように。



そこから準備等で1ヶ月後、ラーナ様は旅に出た。

第4王妃という位を返上し、後継者として王に自分を指名して。


護衛には沢山の兵士が願い出た。ラーナ様の人望だろう。

その中でも選りすぐりの腕利きを5人とメイドを3人。

見送りにはレンやレイスも来た。

皆に笑顔で見送られ、春の暖かい日に照らされながら最後まで手を振っていた。



ラーナ様が旅に出てから、その抜けた穴を埋めるのは中々に大変だった。

城の備品のチェックから、庭師のカウンセラーまで。

本当に細々とした様々な事をしてくれていたんだと痛感した日々だった。

多岐に渡り支えてくれていたんだと実感した。



そこから3年後。

国の内部の事が少し落ち着いた頃、自分が王子で城に降りてレイス達と遊んでいた時に知り合っていたルーナと結婚した。

レジスタンスで再会してから心を支えて貰って惹かれていった。


前王のこともあり、王は妻を1人しか娶れないように決めた。

それと後継者に選ばられた者以外の子は、好きに生きるも良い、選ばれた者を支える為に臣下に下るも良い。

好きなように、争い無く生きていけるよう…

人間の人生など短いのだから、楽しく過ごせるよう。

後継者争い等を繰り返してはいけない。


そうして国の法も変えていき5年後には、他の種族達との交流も行うようにしていったが……

これもまた苦労の連続だった。


人間は他種族に比べ力も弱く、寿命も短い。

時間の流れが違うのだから、交流を今しても次の世代がどうなるか分からないと断られたり。

それに誘拐し奴隷にして儲けていた裏社会の人間達からも嫌がらせが酷かった。


奴隷販売や誘拐に関わった者は死刑になるようにしたからだろう。

何度も命を狙われた。


自分が死んでしまっては、他種族との交流など困難になる。

そう考えた結果エルフの族長に、使い魔召喚についての手紙を送った。

それなら数ヶ月過ぎた頃、書斎で1人で仕事をしていたら、目を開けるのが困難になる程の強い光が。

「使い魔について話に来たよ」

綺麗な透き通った声……。

目をゆっくり開けると精霊様が目の前に立っていた。

「精霊様…?精霊様!!」

まさか精霊が来てくれるとは……

「驚いたみたいだね、君が使い魔について知りたいと聞いたからね。君が望む使い魔は普通の使い魔とは別だろうから」

「驚きましたが…また会えて嬉しく思います。本当にあの時はお世話になりました。感謝しております」

そう言うと手を横に振りながら優しく話す。

「いいよ。それで……君はどんな使い魔がほしい?」


どんな……か

守って貰える…そこまで考えて気付く。

自分は守って貰えたとして、家族は……?

仲間は……?国は…?

あぁ。そっか。

全部守りたいんだ。

全部必要なんだ。なら答えは……

「沢山の小さな使い魔と契約する方法はありますか?」

「あはははっ!!あるよ!あるっ!でもそうか……君はその選択をするのか…良いよ。教えてあげる。でも数が増える分、魔力が足りないから君の身体をゆっくり蝕んで行く事になる。それでも良いの?」

精霊様が驚いた表情を浮かべた後、こちらの考えが分かったのかお腹を抱えて笑う。


笑いが収まると、こちらを試すように見る。


身体を蝕むか……

でも今すぐにでは無い。

自分を守る為にも、自分の守りたい物の為にも……

「構いません。教えて頂けますか?」

「分かった。いいよ」


精霊様が空間に指で文字を書き、魔法の術式を教えて貰いながらゆっくり唱えていく。

「問題の魔力なんだけど、身体で補うからここに血を垂らして」

小さな銀のトレーの底が見えなくなる位の血を垂らすと、その血がフワリと浮かんで消える。


「出来たね、さぁ目にゆっくり魔力を集めてみて」

ポカポカと目の周辺が暖かくなる。

色々見えてくる。これは土の中だろうか?

次は…そう思いながらまた魔力を込めた瞬間に、吐き気が襲う。

「おぇえぇぇ!」

「あははっ!そうなるだろねぇ…一気に視界を広げると酔うんだよ。ゆっくり、ゆっくり。まずは2つから」

2つの場面が写し出されるも今回は問題ない。

「大丈夫そうだね。それをゆっくり慣らして。慣れたらもう1個増やしてってしていって。じゃあね」


返事を言う前にフワリと光って消えた……

お礼を言いたかったのに…。

またでも何年後かにフラっと現れそうだ。



3年が経ち、使い魔の視界の数は今じゃ85まで増えた。

見たい場面で切り替える事で随分と役に立つ。

そのおかげもあり、奴隷商は全て潰せた。

どんなに逃げても空には鳥が、隙間からはネズミや虫達と色々監視ができる。


この3年の間にエルフの村とは正式に国として友好を結んだ。

族長と数名のエルフと、こちらも数名の護衛を付けて中間地点にて盟約を交わした。

奴隷販売の禁止、エルフの保護と返還など。

まだ人間の中には他種族に対して否定的な人も多く国に呼ぶ事は叶わなかった。

それでもシュンからの手紙を手渡され読むと、シュンは相変わらず女性とは無縁のようだ。

まぁ…ガサツだしなぁ…。

良い奴なんだが。

でも元気な様で安心した。



20年が過ぎる頃には、魔人、ドワーフとも盟約を結べた。

少しずつ、魔人やドワーフも移住希望者を受け入れていき国民にしても他種族に対しての理解が深まっていった。

色々な問題もあったけれどその度に話し合い解決してこれた。


軌道に乗り出した時にお世話になったラーナ様が亡くなってしまった。

他の種族とゆっくりだが国交が出来てきた事を喜んでくれていた……

最後まで元気でいつも笑って過ごしていたらしい。

身近な者達のみで見送った。



この国の王になり30年が過ぎようとしていた。


もう、自分も年をとった。

長かったが、ようやくエルフの村に正式に呼ばれる事になった。

シュンも元気そうだし、早く会いたいものだ。


なぁ、シュン。

お前はまだ若いままだろうな…。

この何十年もシュンからしたら数年位の感覚なのだろう。

俺はもう大分年を取ったよ。


沢山顔を見て話したい事があるんだ。

少しずつだが他の種族とも交流が出来て、国交も出来てきたんだ。

なぁ?知ってるか?


魔人領では、魔物を食べる花があるらしいんだ。

お前のことだから、面白い!と喜んでくれるだろう。


なぁ……いつも、お前は表情を見てすぐに俺の気持ちに気付いてくれたよな。

もう今は、沢山笑えるんだ。

孫も産まれそうなんだ。

早く会いたいよ。






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