転生したらエルフの姫でした3
そうして1年が過ぎた頃、少しずつシュンじいの寝ている時間が増えて行った。
ご飯も殆ど口にすることが出来なくなってきて、身体も細くなってご飯にしても、前世の知識で飲み込めるように刻んでみたりペースト状にしてみたり色々試して見たけれどそれでも食べれなくて。
エルフは体内の魔力が尽きるとそのまま死んでしまう
シュンじいの体内の魔力も少しずつ減ってきていた。
前世も沢山色々な人を看取ってきただけに、分かる。
人が亡くなる前は独特な匂いがしたり、ゆっくりゆっくり弱くなっていく。
もうシュンじいは長くない……。
意識がある時には、思い出すようにぽつりぽつりと昔の話をしてくれた。
「ルーズ様よ…お願いがあっての…この金貨をワシが亡くなれば届けて欲しいんじゃよ。ここエルフの村に置いとくより約束を果たしてくれた奴の家族の元へ……」
シュンじいはゆっくり語り出した。
昔、エルフの村に人間の国から1人の少年が迷い込んで来た。エルフの村自体隠れていて様々な手順を踏まないと来れないはずだが……。
全身酷い怪我をしており森の中に倒れていてそれを見つけたのがシュンじいだったと。
見つけたのがシュンじいだったのでそのまま監視役も任されしばらくこの村に住んだそう。
シュンじいの治療の甲斐もあり元気になった少年に
魚の釣竿を使った釣り方から料理の様々な作り方、またはナンパの仕方など教えて貰い、エルフの里には無かったことだらけでとても楽しく過ごしていたと。
「ただ問題は起こっての…ある日エルフの子どもたち2人が消えたのじゃ。真っ先に我らエルフはその人間を怪しみ疑った。奴はただ、口をつむぎ、震えていた。泣きそうな顔をしてな。ワシは監視役としても、友としても見ていたから奴じゃないと仲間に訴え話し合った。結果その時の族長、ゾア様が奴に3日の猶予を与えた……。1人で連れ戻してこいとな……罠の可能性もあり、他のエルフの同行は認めなんだ。」
「1人で……。それで?どうなったの?…」
結果、2日後に血だらけでその人間と無傷なエルフの子どもたちが帰ってきたそう。
その時にその少年は、実は人間の国の第1王子で権力争い中に怪我を負わされ命からがら逃げ延びたのが、このエルフの村だったこと、エルフの子どもたちの誘拐は少年が居ることを突き止めた、第二王子達の仕業だった事を話した。
人間の争いに巻き込んでしまい申し訳ないと何度も何度も謝られたと。
逃げずに王になる為に戦うと決めた少年が、他の種族とも外交を結びエルフ達が安心して人間の国に来れるようにするとシュンじいと約束をした。
その少年が国に戻り戦い勝つ事でエルフ達の人間への意識、人間からエルフ達への意識をゆっくり変えてくれた。
そして使節団としてエルフの里に来てシュンじいと会う少し前に事故で亡くなってしまったと。
ただ、その子孫たちも思いを繋ぎ交流を引き継いでくれたからこそ今も人間の国とエルフの村の交流があるのだそう。
「人間は儚く脆い生き物じゃが…短い一生の中で奴は変えてくれた。この金貨も後で知ったのじゃが特別な物らしくてのぅ。ワシが亡くなって金貨を埋めてしまうくらいなら奴の家族の手元に返そうと思ってのぅ……。最後に奴には会えなかったが、今も奴の思いを引き継いでくれたもの達へのぅ…ルーズ様、これを…頼みましたぞ」
金貨を大切そうに撫でた後に、優しく私に渡してくれた。
その金貨が託された事もあり重く感じる。
けれど…
「うん、試練に受かって絶対にこれを渡すよ」
私がそう言うとシュンじいは、安心した様に笑った後ゆっくりと目を閉じた。
そこから数日眠った後にゆっくりと息を引き取った。
安らかな表情だった。
アクアに母様へ報告して貰えるように頼む。
エルフは、200歳位から見た目も歳をとり始める。
そして、内包している魔力の量や質によって寿命は大きく変わる。250歳で亡くなるエルフもいれば、500歳近くまで生きるエルフも居る。
そして魔力の消滅と同時に息を引き取る。
死ぬと、魂が1番大きな大樹の精霊樹の中に還り、そうして暮らしを村を守る。という考えなのだそうだ。
親しい者を集め、火属性が使える葬火という魔法で、見送る。
火がゆっくりと優しくシュンじいを包み込む。
火の色も淡いオレンジ色で、辺りをまるで始まりの朝日のように暖かく映し出す。
お母様も来ていて目を赤くし静かに泣いていた。
もちろん私も泣いた。
花を添えて、灰は大樹の周りに埋める。
暫く私は座ったまま大樹の傍から動けなかった。
1人、また1人と帰って行く。
ショーンが私の後ろに来て背中合わせに座る。
「すみません、ルーズ様、質問してもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。ショーンどうしたの?」
「悲しい思いをしてまで関わる事で縁を繋ぎ、そこまでするのはどうしてですか?」
そう言われたら、どうしてなんだろう…
前世の時は仕事で色々な人を見送ってきた。
だけど、今は仕事では無い。
前世の時はしんどくて疲れて本当嫌になったことも何度もある。
労働に給料が見合ってるか?と言われたらそうじゃ無かったし、無理な要望も多くて本当に大変だった……そして、接する内に仲良くなったとしても、いつかは見送ることをしなくちゃいけなくて…。
でも今もそれをする理由はきっと……
「その人自身の思いを、大事にして最後に穏やかな気持ちになって欲しいからかなぁ…私1人が出来ることなんて限られては居るけれど、それでも0じゃないなら私が動くことに意味ができるんだと思うの。あとね、ありがとうって言ってくれたり一緒に過ごせた日々は、私の中でもとても意味のある、すごく大切な時間になるの。だから縁を繋ぐのかな」
「ーーそうなんですね……無礼な質問を申し訳ありませんでした。」
「本当に〜ショーンと違って私はルーズ様の決めた事は何でも応援しますからねぇ〜」
横からシュッと現れたアクアがニマニマしてる。
「私だってその気持ちは一緒だ。応援はしている!ただ聞いてみたかった」
アクアに頬をつつかれたショーンがアクアの頬を引っ張る。
「ふふっ!まあまあ2人とも。ショーン質問ありがとう。おかげでやりたい事が明確になったよ。アクアもいつもありがとうね。」
さて、私のやりたい事は決まった。
世界を周りながら介護や福祉という考え方を広めていきたい。
1人でも多くの人を助けよう。
そして、その楽しさを色々な人と共有したい。
その為にも、鍛錬をもっと頑張らないと。
外の世界は危険がいっぱいなのだから、力があるに越したことは無い。
8歳になると使い魔を召喚する儀式がある。
使い魔は契約すると契約を解除されない限り一生を主人と過ごす。主人が亡くなれば使い魔は、元の場所に戻りまたその次、呼ばれる時を待つらしく。
契約も解除も、双方の同意が必要。
8歳にならないと出来ない理由が、魔力が安定してないと出来ないからとのことだった。
魔力が暴発したり、召喚しても襲われることもあるらしく。
「儀式の時の服はこちらを着てください。」
ショーンが渡してくれた服は、加護降ろしの際にも着た事がある真っ白のロングワンピース。
違うのは、後ろに私の属性である、光の模様、風の模様、水の模様が描かれている事かな。
早速着て鏡の前で確かめて見ると、身体を動かす度に模様も動いてる様に見えて凄く綺麗だ。
「加護は守るもの。使い魔を守り、また自身をも守ってくれるようにという願いが込められているんです。」
「なるほどね、すっごく素敵…ショーンありがとう」
「いいえ。ルーズ様、とてもお似合いですよ」
アクアに呼ばれ、加護降ろしを行った部屋に行く。
母様とお付の人と、おじいさまが居て見守ってくれる。
何かあればおじい様が、助けに入るとのことだった。
「私もおじい様も居るから安心して頑張りなさい」
母様が私の肩に手を置きながら優しく声をかけてくれる。
緊張していたものの、落ち着き言葉を紡ぐ。
「私を守る者、私と共に歩む者、生涯の契りを結ぶ者、我が前に姿を現したまえ」
目の前が眩い光に包まれる。
光が消えるのを少し待つも、少しマシになるものの眩しいままでずっと光ってる。
え?あれ?
こんなに眩しいの続くもんなの?
LED並に明るいし、なんなら強くなってきた。
車のライトを近距離で当てられたみたいに……
眩しいぃいいぃいー!!目ガァァ!目ガァァァァ!
目を閉じてる間に周りの人の気配も消えている。
目を開けれずに居ると、「はろはろー」とふざけた声が
聞こえてきた。
「え?…今何か…「はろはろー」やっぱり聞こえた!
すみません、少し眩し過ぎるんで光を抑えてもらえますか?」