いざ、王城へ13〜賢王の日記〜
「あぁ。そうだ。昔1度王国祭りで見た事がある…ダレイオ様…」
誰かがポツリとそう話す声が聞こえる。
頷こうとした瞬間強い衝撃を頬に感じ椅子から倒れる。
え…何だ……何が…
「お前!!お前達のせいで!俺は!俺達は!!」
レイスに殴られたのだと胸ぐらを捕まれた時に気付く。
「なぁ!王子さんよ!!今まで一体何をしてたんだ!!お前なら戦争を止められたんじゃ?…なぁ!!」
苦しそうな表情を浮かべ泣き叫びながらレイスが叫ぶ
「本当に申し訳ない!!あの時の自分は力も無く平和に慣れ過ぎていたんだ!このまま自分は王になるのだと産まれた時からの運命を嘆いては、違う生き方をしたいと願っていた。でも今は違う!戦うって決めたんだ!だから信じてくれとは言わないし言えない…でも絶対に変えて見せるからっ!!……謝っても償いなんて出来ないことは分かっている…だからこそ自分で終わらせないといけないんだ!…頼むみんな……力を貸してくれないだろうか…」
虫の良い話だろう…
逃げたのに、帰ってきて力を貸してくれなんて。
分かってる。だけど自分一人じゃ情けないけど、どうにもならない。
頭を下げお願いする事しか…
「いいよ。ダレイオを信じる」
レンが、立ち上がりながらこちらに近付いてくる。
「頭を下げてないで顔を上げて。」
その声に顔を上げると真っ直ぐレンと目が合う。
「ねぇ、ダレイオ。君はいつも、ふとした時に何もかも面白くないって顔をしてたよね…でも今は本当に頼ってくれてるって分かる。きっと色々あったんだよね?でも戻って来てくれた。それで充分だよ」
優しく肩をトントンと叩き笑ってくれる。
レン……
ありがとう…。
レンの言葉に皆も頷いてくれる。
レイスを除いて……。
「レイス!本当は君も分かってるんでしょ?」
「あぁ!分かってる!!分かってるんだ……ダレイオは悪くないって。だけど!「ダレイオも殺されかけたんじゃないかな……」
レンがレイスの言葉を過りそう話すとレイスが勢い良くこちらに来る。
「そうなのか?ダレイオ…話してくれよ。何があったのか…」
レイスと皆に今までの事をエルフの指輪や精霊様の事を伏せながら話す。
王妃が第2王妃に殺され、第4王妃に助けられながら何とか森に逃げた事。そこからエルフ達に助けて貰った事。そのエルフの村で第2王妃が仕掛けて来た事……。
王になりエルフや他の種族達とも交流を行いながら国を守っていきたい事。
「そうか…ダレイオお前も…分かった。お前に手を貸すよ。でも!絶対いい国にしてくれよ!!約束だ」
約束…
どんどん増えていくのに、それが嬉しく思う。
そこからは、城の内部の様子を細かに伝えながら皆で作戦を話し合う。
レジスタンス総勢56人…
8人のチームが7つ。
城の中の兵士の数には到底及ばない。
人数差をどう埋めていくか……
そう考え話し合いをしていると扉を叩く音がして、レイスが見に行く。
「おい!ダレイオお客さんだぞ。この方が俺達に情報をくれてるんだが…知り合いだったんだな」
レイスと一緒に戻ってきた女性を見てハッとする。
良かった…生きていた……。
第4王妃の手配で逃走の手助けをしてくれたメイドだ。
途中はぐれてしまったが…。
「ダレイオ様……あの時は私の力が足りないばかりに。でも生きていてくださって良かった。本当に良かった…」
目を潤ませながらゆっくりこちらに近付き優しく抱きしめてくれる。
「こちらこそ、すまなかった…貴女も無事で良かった」
暫く2人で再会を喜んでいるとレンが申し訳無さそうに、トントンと城内地図を叩く。
慌てたように、メイドが離れコホン!と咳払いしてから話し出す。
「すみません。伝言を伝えに本日は参りました。決行の日なのですが4日後の夜でどうでしょうか?その日は多くの兵達は遠征訓練がありますので確実に城内の警備は手薄です。」
4日後…
皆の頷きを確認してレイスが了承する。
4日後か……早いな…
人数差の問題点は、遠征で兵が減るから何とかなるだろうか…
「見張りにしましても、薬で眠らておきますので問題無いかと。また従者の殆どはこちら側ですから安心してください」
流石、抜け目が無いな…。
極力、人が死ぬ事は避けられるそうだ。
人望の点でも賢さの点でも第4王妃は抜きん出ている。
「それなら楽に城を落とせるな。」
「でも、今回訓練が例年より早いですね…やはり新兵を少しでも戦場に送る為ですか?」
レイスが、安心したように話すも、レンの表情は固い。
確かに…いつもの訓練の時期とはズレてる。
それ程兵士が、足らないというのか…。
「えぇ。獣人国との戦争で足りていないのもあるのですが、日にちを早めるように、こちらも働きかけましたので」
貴族たちと協力し、圧力でもかけたのだろう。
そこから少し城内の説明をして、メイドを見送る。
「では皆様、また4日後の夜に城内で会いましょう」
そこからは情報共有を行いながら様々な作戦を考え物を用意する。
防具や武器はもちろんの事、寝かせる為の薬を煙玉に加工してみたり…。
直接飲むより効果は大分落ちるが、ふらつく程度だけでも無いよりマシだ。
王が居る部屋はレンを含め2チームが向かい、残りのチームが俺とレイス含め王妃。
そうして、あっという間に4日が過ぎていった。
夕方の暗くなる前から、チームで別れて城を目指す。
門に着くと第4王妃の手先の者たちが開けてくれて城内に入る。
女達はメイドに、男達は兵士や庭師に変装する。
「じゃあまた後で。レイス、ダレイオをよろしくね」
レンがそう言うとレイスがフン!と鼻を鳴らす。
「俺に守られる程こいつは弱くないみたいだからよ」
確かに。逃げた時よりも今の方が間違い無く強いだろうし…レイスより強いだろう。
それを笑いながらレンがチームを率いて離れて行く。
庭師の格好の奴等は外で問題発生した時用に隠れて待機してもらった。
「さて行くか…」
兵士を装って王妃が居る部屋に向かう。
部屋の前では第4王妃がこの日の為に手配した兵達が見張りをしている。
「交代の時間です。何か申し送りはありますか?」
「いいえ、ありません!」
スムーズに交代し中を扉の前から伺う。
静かだ…。中には第4王妃王子その派閥の貴族達が居るとの事だったが……。
何かおかしい。スムーズに行けたのは良い事なのだが何だろう胸騒ぎが……
「おい!お前達所属を言え!」
扉が開いたと思うと、中から兵士が2人出てきて剣を抜く。
やはり……誰か王妃側にリークしているのか…。
ちらりとレイスの方を見ると、レイスもこちら見ながら頷く。
仕方ないっか…。
「我々は!!!」
レイスが声を上げそちらに兵達の視線が向いた瞬間、用意していた煙玉を強く投げる。
中から煙が溢れ出し、それと同時にシュンがくれた魔石を兵達にぶつける。
中から突風が吹き出しドン!!!と兵達の身体が吹き飛びドアにぶつかる。
今だ!!レイスが残りの仲間たちに聞こえるように叫び扉の中に入る。
大きな机で話し合ってる面々に向けて、魔石を一気に何個もぶつける。
凄まじい風が中に居た者達を壁まで吹き飛ばす。
「お前…それ……何て威力なんだよ…風の威力もだが勢いと言い本当に…武器より怖ぇ……」
中の様子を見て全員倒れているのを確認しレイスが呆れながらボヤいているのを尻目に王妃を探す。
居た……王妃……。
一際、豪華な格好をしており一目でわかる。
風の魔石の勢いで吹き飛び壁に打ち付けられ床に這いつくばりながら、叫び散らしている。
「ぐぅ……あぐうぅ痛いぃ!何なのよ!!ちょっと!!ねぇ!こんな事して…死罪よ!誰か捕まえなさいっ!!早く!」
乱れた髪を、直そうともせずにギャーギャーと喚く喚く。
やはり、付けてたか。
衝撃緩和効果のある魔導具……
他の者達は気絶してる所を見ると付けてなかったのか……
王妃らしい。従者には勿体無いと渡さなかったのだろう。
「良く喚くなぁ…お前が俺にした事は覚えているだろ?」
そう言いながら近付くと、少し顔を上げこちらを見る。
「まさか……生きていた?嘘!!そんな…彼奴ら!!騙しやがったのかぁあ!!許さない!許さない…死罪にしてやる…」
驚愕に顔を歪ませたかと思うと、次は顔を怒りに染め赤くしこちらを睨みながら喚く。
本当に、滑稽だな。
どうせ誘拐犯の元締めに、金だけ貰い逃げる為に殺せたとでも騙されたのだろう。
「おいダレイオ、とりあえず縛ったぞ。こいつはどうする?」
王妃以外は紐で縛り終えレイスが王妃を見下しながらこちらに来る。
さて…ここで殺す訳にもいかない。
「縛ってくれ、レンの方に行こうか」
縛るのはレイスに任せ、仲間達と合流しに行く。
その途中も王妃が喋る喋る。
「このクソガキ!!」「クソクソ!」
「誰かぁ!誰かぁ!」「お前も死ねば良かったのに!」
うるさいなぁ…と思いながら引っ張って行く。
ここだな…
待ち合わせの場所に着くと、レンのチームの1人がソワソワして立っている。
「ダレイオ様!少し来て頂けますか?」
焦った様子の仲間に頷き王妃は仲間に預けレイスと2人で向かう。
「レン?来たぞ」
「あぁ!ダレイオ…王子はそこで縛って寝かせてるよ。それで……王なんだけど。ちょっと顔を見てくれないか?」
別室に移動しベットで寝ている王の顔を見る。
これは……
え?…誰だ?
どういうことだ……まさかまさか。
ベットで寝ていたのは王では無い。
王は一体どこへ?嫌な想像が浮かぶが……
レイスに王妃もここに連れてきて欲しい事を伝える。「やっぱり…違うよね…王子も起こそうか?」
レンにお願いし、気絶させてる王子も起こす。
「兄…上?生きていたのか!!クソ!なんだ!何で縛られているんだ!おい!解け!」
起きるなりギャーギャーと……。
少し待つとレイスが王妃を引き摺ってくる。
王子を脅しながら、王妃に話を聞くとまぁ…出るわ出るわ。
王は1年前には殺していたと。
継承させてからの毒殺予定だったのが、誤って毒を飲ませてしまい死亡。
慌てて身代わりを見繕い病気が悪化したと言い張りここに寝かせていたと。
見舞い等にしても、顔をカーテンで見えないようにして自分達の陣営側の貴族と医者も脅して協力させていたと。
何ともまぁ……。お粗末な結果だ。
王が死んでいた事を伝える為にも第4王妃陣営を呼び
状況を説明する。
現れた第4王妃の側近の何人かは所々血の着いた服を着ているのを見るに、裏で戦ってくれていたのだろう。
ここまですんなり楽に来れた訳だ……。
「ダレイオ様、お久しぶりですね。成長なさって…。本当に良かった…」
「お久しぶりです。ラーナ様。今回も助けて頂きありがとうございます」
そう言うと、ふふと優しく微笑まれる。
変わってない…優しい笑顔……。
その笑顔を見てこの戦いは終わった事を実感する。




