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いざ、王城へ10〜賢王の日記〜

1時間ほど歩き川の近くに着くと、光が止まりその先に岩の洞穴が見える。

ここって事か……

丁度辺りも明るくなって来た頃だ。


敵が何人居るかだな…

マントがあるとは言え戦闘が始まってから、外に出ていた敵が戻ってきて、後ろから攻撃されるのだけは避けたい。


そうなると、外に出ているかもしれない奴らを先に探して倒しておかないとな…


「ここまで案内ありがとうございます。外に出ているかもしれない敵の場所って分かりますか?」

こちらの話が分かるか微妙だけど、試しに聞いてみる


「分かるよ。」

お?え?……綺麗な声…

いや!喋れるの?この玉…。

凄いけど、初めから喋ってくれよっ!

いや、落ち着こう。精霊様だぞ。ふぅー。

「あ…話せたんですね…その…案内して貰えますか?」

伺う様にそう聞くとふよふよとまた進み出す。



こっちって事か……。

光が止まり川に着くと、水浴びしている男組4人を発見する。

武器も岸に置いてあるな。弓で狙うのに丁度良い。


マントを頭の深くまで被り姿を隠し狙いを定め、放つ。

まず1人目…「あぁ!いぃてぇええ!」

残りの3人も慌てて周りを見るも、遅い。

2人目3人目4人目……

次々に狙いを定め仕留めていく。

痺れ薬を矢に塗ってあるから、震えながらも動けない

しっかり全員動けない事を確認しマントを外し近付く。

こいつら…何処かで見た顔だ…。


「あがぁ…王…じぃい……」

王子だと何故知って…あぁ!!第2王子の取り巻き貴族の従者達!

ここに居るって事は誘拐犯の仲間達って事か。

生かしておく方がリスクが高い。

今はまだ第1王子が生きていたとバレるのも困る。

殺すしか無いか……

ダガーを握り締めていると光の玉が目の前に移動しクルクルと回る。



「ねぇ、その子達こちらで貰って良いかな?」

「構いません。ですがどうされるのでしょうか?」

「こちらで裁くんだよ。エルフの子どもに手を出した報いは必要でしょう?誰が裏で糸を引いてたも、しっかり聞かないとね……」

優しい声の裏で静かな怒りを感じる。

確かに人間の方で裁くより、精霊様に任せる方が良いだろう。


「分かりました。それならどうぞ。」

「ありがとう」

4人の周りを光りながら飛び円を描くと、パッと4人が消える。


「!?」


「あぁ。門を開いてエルフの村の地下室に落としたんだよ。今回の誘拐犯は全員こちらで裁くから」

地下室に…流石というか魔力量が本当桁違いだ……

「お願いします」


「外に出てるのはこれで終わり。後は中に8人」

8人か…全部で12人だったって事か。

思ったより少ないと見るか多いと見るか。

実行犯はこの人数でも、貴族との繋がりがどこまで広がってるかだな…。

こいつらの雇い主の貴族連中にしても、ロクなもんじゃ無かったし。



洞穴の前まで戻り、ゆっくり中に入る。

中はジメジメとしており暗く、奥から悪臭が流れてくる。

途中何個か罠があったがその度に、光の点滅で教えてくれた為怪我をせずに済んだ。

通路をゆっくり進むと、ある程度広い空間に出る。

布を被せられた檻が4つ置いてあり、2人が見張りか…

4つ…

他にも誘拐されてる人達が居るって事か。

どこまで腐っているのか…。


ゆっくり敵の後ろから近付き1人の背中を刺す、叫び遠くの仲間を呼ばれると面倒なので、口に水球を出し声を塞ぐも声が漏れこちらの異変に気付いたもう1人がパニックになったのか、火球を様々な方に放つ。


1つの火球が、檻の被せてる布に当たり燃え広がり中から叫び声が聞こえる。

マズイ!!早く消さないと!

慌てて水魔法で消火するも、火球が足に当たり、ジュッ!と音がし激痛が走る。

痛みを振り切り、消火されたのを確認してから相手に接近し敵の腹を刺し倒す。

ふぅ……

敵が精霊様により、門に消えた事を確認し檻に近付く。



被せていた布は少し燃えたが中は無事で、獣人の子どもが2人。

「その燃えた布…認識阻害、探知無効化、音の阻害効果の術式が込めてあるね。他の無事なの貰っていい?」


高度な術式…

これを人間側で作れるのなんて本当にひと握りだろう…

「分かりました。人間側で持ってても、ろくな事に使われて無いですから。」

喜んで居る精霊様を尻目に獣人の子達が怯えながらこちらを見ている。

助けに来た事を伝え、檻の鍵を水魔法を使いダガーの周りに纏わせ、切るもキイィンと高い音が鳴るだけで切れない。

「そのダガーでも切れない所を見るに、恐らくその鍵も魔導具になってるね。鍵を探す方が良さそうだよ」

鍵……

「鍵くらいなら良いかな…良いよね…。よしっ!!私が鍵を持ってきてあげるよ」

精霊様が何やら1人でポソポソ話し、どうやら鍵を持ってきてくれるらしい。

「良いのですか?」

「あまり、精霊自体が戦う事は人間の問題が絡んでるから出来ないんだけど、サポートなら…ね。それより足怪我してるよ?」

ずっとズキズキと痛い、でも今は我慢するしか……



「んー、治療となると結構魔力使うからなぁ…」

「治療魔法なのですが、自分よりも捕まってる子達にお願い出来ますか?」

「出来るけど…君は優しいね…君も足が痛いだろうに……。痛みを無くすことなら出来るからしとくね。…ヨッ!」


玉が縦に振れると、痛みが消えた。

え?ヨッ!で消したの?

掛け声の割に効果が凄すぎて…何だか笑いが込み上げる。

「フフ…ありがとうございます。痛みが消えました。」

「良いよ。傷が治った訳じゃ無いからね!それは気をつけてよ…さて鍵を探して取ってくる待ってて。」

そう言うや、玉がスーッと奥に消えていく。



ふぅ…

救出に来て初めて人を刺した。

弓だと遠距離だし感触は無いけど、ダガーだとやはり独特な嫌な感触だ……落ち着くと思い出して手が震える。

「あの…本当に助けてくれるの…?」

男の子の方の獣人が震えて泣きながらも聞いてくる。

もう1人の子は弟だろうか?背中に隠しているが顔がそっくりだ。

「あぁ。助けるよ絶対に。弟か?」

「あ、あ、ありがとう…うん。弟なの。お兄ちゃんの、僕が守らないと」

そうか…

お兄ちゃんが守らなきゃか……

自分とは無縁な言葉だ。弟の第2王子に命を狙われてる様じゃな…

「そっか。偉いな…」

「お兄ちゃん、痛いの?」

痛い?傷は…そうだな痛かった。

「泣いちゃいそうなお顔…」

あー。うん。そうだね…

弟ともっと向き合っていれば結果は違ったのかなと…そう思ってしまったんだ。でももう遅い。



「お話中ごめんね、あったよ鍵」

「どぅあ!?」

すぐ横からの声でびっくりした

「どぅあ??とりあえずはい。これ。奥の部屋に保管されてたよ。奥にはガラの悪い感じのが、6人揃ってたよ」

奥に全員居たのか……

とりあえず恥ずかしい気持ちを誤魔化し鍵を受け取り開ける。



「ありがとう。お兄ちゃんと光の玉様」

おずおずと出てきた獣人の子を連れて、残り3つの檻も布を剥がし鍵を開けていく。

3つ目の檻には、獣人の綺麗な女の人が1人

2つ目の檻には、魔族の竜人の男の子2人

最後の1つの檻にエルフの子達が居た。


「君たちがミーアとカリアだね。良かった。助けに来たよ」

どちらの子も怪我は無さそうだ。

「あ…人間のお兄ちゃん…帰れるの?」

不安そうにミーアが服の裾を握ってくる。


「大丈夫。帰れるよ。精霊様と一緒に来たからね。」

そう伝えると安心したのか泣きながら抱きついてくる。ヨシヨシと頭を撫で落ち着いたようだ。


さて…

奥の敵をどう倒すか……

倒してる間子どもたち6人をどうするか……


「あの…助けて頂きありがとうございます。私が子どもたちをここで守ってましょうか?その!ご迷惑じゃ無ければですが…」


綺麗な獣人の女の人が、子どもたちを抱きしめながら話す。獣人だし戦闘力はある程度あるだろう。

子どもを連れて行く訳には、行かないから助かる。


「助かります。この子達を、お願いします。精霊様もここでこの方と残って子ども達を守ってて貰ってもよろしいでしょうか?」


「分かった。精霊の名に誓い守るよ。敵はもう殺しちゃっても良いからね。情報は捕まえる子達から聞けるし。気をつけてね」

精霊様が子ども達と一緒なら、心強い…。

足の怪我もあるだけに、確かに今殺さずに倒すのは難しいだろう。



さて、行くか…。

ゆっくりと奥に進むと、また空間があるも誰も居ない。棚があり、所々に食料が置かれている様子から食糧庫か…

その奥にドアが見え声が聞こえる。

ここか…。


ドアを開けると、どうしても気付かれるだろう。

向こうは6人……

こちらは1人だ。

さて、どうするか。

何か大きな一手があれば……

そうだ、ドアを開けこちらに気を取られた瞬間にシュンから貰った火魔法が込められた魔石を中に放り投げ相手を無効化してダガーで倒していこう。




覚悟を決めドアを開け魔力を込め魔石を部屋の中に放り投げる。


ドォゴオオオオン!

思ったよりも凄い威力で爆発し、中の部屋が燃え盛り、こちらの体が吹き飛ぶ程の熱風と壊れた壁の石が飛んでくる。


シュン……おまえ…どんなけ魔力込めたんだ……。

10mと聞いてたがその倍はある威力じゃねーか。



痛む体を起こし、ゆっくり立ち上がり中を確認する。

部屋の中全てが燃え火の海だ…

この分だと流石に生きてる者は居ないだろう。


子どもたちと精霊様が待っている所に戻ろうと歩き出すと背中に衝撃と激痛が走りよろめく。

「あぐっ」

「この野郎がぁ…ヒヒ当たった。許ざねぇ」

背中を手で押さえながら振り向くと、全身ボロボロで血だらけの男がズリズリと体を床に擦り付け、ほふく前進の格好でこちらを見上げている。

顔半分は抉れているも残った目はギラギラとしている。

あの爆発で生き残りが居たとは……

「お前が王子なんだろ?」

「何故王子だと?」

「キヒヒ頼まれたんだよ…妃になぁ…お前を見つけて殺せってヒヒ」

涎を垂らしながらもニヤニヤと笑う。


王妃…第二王妃の事だろう。

いや、今じゃ母が死に正妃か。

高度な魔導具を持っていたのも納得がいく。


「そうか。だからエルフを誘拐したのか?」

「あぁ。此処を壊しても直ぐにまた、お前を殺す為に動くだろうなぁ…その綺麗な顔が苦痛に歪むのを楽しみに「もういい。死ね」


首を切り息の根を止める。

血が吹き出すのを尻目に、壁を伝いながら来た道を戻る。



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