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いざ、王城へ8〜賢王の日記〜

シュンがそれからも毎日包帯を変えてくれた。

傷も良くなってきた頃、エルフの村の族長が話をしに会いに来た。

「傷は良くなってきた頃じゃろ?」

「はい、この度は助けて頂きありがとうございます」

「あぁ。良い。シュンよ、少しこやつと2人で話がしたい。良いな?」

シュンは1度心配そうに、こちらを見たが大丈夫の意味を込めて頷くと部屋を出ていく。

「さて人払いも済んだ事じゃ、単刀直入に聞こうか。どうやって門まで辿り着いた?門にしても特殊な魔法じゃ無いと開かんはずじゃが……。」


「指輪です。砕けてしまいましたが……」

意識が戻った時に確認したら、ボロボロに砕けていた指輪を取り出し見せる。

指輪を見た時に、驚いた顔を一瞬だけ浮かべ優しく笑う。

「そうか……親愛の指輪か。それは1回しか使えぬようにしてある。それで砕けたのだろう。」

「親愛の指輪……?」

「あぁ。エルフ族を助けてくれた恩人に渡したと聞いておる。何かあった時に力になれるようにのぅ。エルフと人間の関係性は知っておるな?」


エルフは他の種族に比べ魔力の扱いが上手く、姿にしても容姿が美しい。そしてどの種族より長命。

それを人間は羨み、エルフを沢山殺した。

血を飲めば長命になり、魔力も増えると一部の人間に、信じられていたから。

また、容姿が美しく魔力が強い子を産ませる為に、監禁し子どもを無理やり孕ませたり……。

正直、関係性は最悪だ……。


私が頷くのを確認し、族長が目を細める。

「そう。人間は傲慢で弱く愚か……。だが、良い者も居る。エルフを助けようとした者が。その者に渡したのがその指輪じゃよ。」

これが……。

第四王妃の先祖が助けようとした者だったのだろう。 

「だが、その傷で門まで、良く辿り着いたのぅ。」

門……。倒れる前に見た綺麗な女性が脳裏に浮かぶ。

「あっ。その、綺麗な女性が……」

「ほぉ。女性とな……そうか。」

納得した表情を浮かべ頷く。

「まぁ、良い。この村で暫く過ごすと良い。だがな人間、エルフは寿命が長い。人間からしたら昔の、過去の出来事でも、エルフにしたら今じゃ。人間に襲われた者も居るという事…。行動には気をつけるんじゃぞ」

「分かりました。その…どうして助けてくれたのですか?指輪を持ってるとは言え、人間は貴方達に酷い事を…」


自分だったら許せないだろう。

仲間を殺されたエルフ達の話が、自分と重なって思えた。

家族を殺された自分と…。


「そうじゃなぁ…恨んではおるぞ。だがエルフを殺したのはお前さんでは、無い。同じ種族ではあるがな。ふぅ……。それにな、憎しみや恨みで固めてしまうと、助けてくれた者たちの事も忘れてしまうみたいで、それは余りに悲しい事じゃろ。」


悲しい事……。

第二王妃と父の事は、本当に憎い。だけど第四王妃達が助けてくれた。助けてくれる人が自分にも居た……。

今だってエルフ達が治療してくれたから助かった。

憎しみや恨みだけの記憶では無い…。


自分も助けてくれた人達の為にも、憎しみに固まらないで前に進まないと。


「とにかく元気になることじゃ。元気になったらシュンに村を案内して貰いなさい」

下を向いたままの私を見て族長が優しく頭を撫でてくれた。






しばらく経ち傷も大分治療のお陰で大分癒えて歩けるようになり、シュンに村を案内してもらう。

外に出た時にエルフの村の美しさに言葉を失った。

壮大な自然、大きな樹から透き通った水が湧き出す美しさ。


魔力で満ちており、葉が光を帯びている。

自然とは、ここまで人を惹きつけるのか。一瞬で心を持っていかれ立ち尽くす。

「おーい、こっちだぞ。固まってないで着いてこいよ」

気もそぞろに頷き川まで案内される。

透き通っているから、魚が泳いでいるのが見える。

岩に腰掛け、眺めているとシュンが手を水に軽く付けて、指を軽く動かすと、魚がプカァと水面に浮かんでくる。

「なっ!何を!?」

「火魔法を魚にぶつけた」

「水の中なのにか?」

「火魔法を魔力の膜で覆えば良い。それなら水の中でも消えないだろ」

ことも無さげに淡々とシュンが話し、浮いてきた魚を取る。

水の中なのに、火が消えないのか…

エルフは魔力の扱いが上手いとは聞いていたけど、余りに現実離れした魔力のコントロール能力。


「魔法とは想像とコントロールだ。人間は魔力との親和性が低く、直ぐに想像を辞める。だから下手なんだ」

呆れたように話すシュンを見て考える。

確かに……水の中でも消えない火なんて、考えた事が無い。火は水で消える。そう考え消えないように、どうするか等考えない……。


「人間達は、どうやって魚をとるんだ?」

「釣りとか網とかかな。」

「釣り…とは何だ?」

「釣りを知らないのか?」

頷くシュンを見て、竿を作って見せる事にした。

よくしなる木と、糸、針、ウキを用意する。

針は形を伝え加工して貰った。

「ここに餌を引っ掛けて、こうやって遠くに飛ばして後は待つんだよ」

「人間は、面白いなぁ…」

「そうかな?」

竿を振りポチャンと針が水の中に落ちるのを見ながらシュンが話す。

「あぁ。人間は魔法を使うのは上手くないから、こうやって道具を考える。」


確かに。人間は弱い種族だけど、弱いからこそ色々な知恵を絞り考える。魔法がダメなら道具で補う。

「そうだね、それに、この話しながら待つ時間も楽しいもんだよ」

そうか…とシュンが呟き、2人でゆっくり釣りをする。

「この、竿は良いな。釣り上げる瞬間が楽しいな!」

ウキが沈み魚を釣り上げると嬉しそうに笑う。

「人間は長命では無いからこそ、時間の過ごし方が上手いな…。エルフは寿命が長い。それは良くも悪くも退屈なもんだ」

「退屈…か…」

「あぁ。他の生き物達を見てると余計に思うよ。必死に生きるって事を僕達はしてるのだろうかと…。お前にしても僕より先に老いて死ぬだろうし、他の種族とは初めて話したけどそう思うと何だか切ないなぁ…」


シュンより長く生きることは何か不慮な事故など無い限りあり得ないだろう。

寿命が長いってのは必ずしも、幸せでは無いのかもしれない……。

だがそうだなぁ。

「シュンは、必死に生きるって何だと思う?」

その質問に、シュンが眉を顰め頭を掻きながら考える



「何て言うかな…ジャイアントボアなんか3年だ。3年で死んでしまう。だからこそ、殆どが子を作り狩を教え巣立たせる。だか、エルフは違うんだ。子どもを作るのは半数程だ。寿命が長い分いつでも出来ると思うのか。ゆっくりだが、じわじわと数が減ってるんだ…必死に生きるってのは、自分の人生を歩みながら何かを託していく事かと思う」


なるほどなぁ…。

託すか……。

自分もいつか誰かに何かを託すのだろうか。

必死に生きる事が、シュンの考え方とすると、自分は必死に生きてはなかったな。と痛感する。

「そうか…託すのか。良い考えだと思うよ」

そう言うと少し照れ臭そうにシュンが笑う。



それにしてもエルフはそもそも少ないだけに、減っていってるのは深刻だな……

エルフの恋愛事情を聞いてると、余り恋愛などに興味が無いらしい事が分かった。

「逆に人間はどうやって相手を見つけるんだ?」

相手か…

自分も立場上、婚約者すら居たことが無いけれど、町に降りていた時、町人達はナンパしたりしてるのをよく見かけた。

町に降りた時に知り合った同世代の男友達もどこの誰が可愛いとか話してたっけ。



「ナンパ…か…?」

「お!何だそれは?」

いや、これは良いのか曖昧なんだけど…。

「んー、綺麗な人達が居たら声をかけてる男をよく見たけど……」

「おぉ!それだ!それをしてみよう!褒めると良いんだな!」

盛り上がったシュンに連れられ、人通りの多い道に出る。


やはりエルフは綺麗な人が多いなぁと見てると、シュンが早速、スレンダー美人のエルフに声を掛けに行っていた。

「お姉さん!き、綺麗ですね!」

噛んでるし、言われた方もビクッてなってるし……

「あ、ありがとう。」

そう言いながらもお姉さんは足早に去っていく。

警戒されまくってる……。

「これが人間流なんだよな?…出来てたか?」

いや、出来ては無いと思う……。

曖昧に頷くと、またシュンが声を掛けに行くも同じように逃げられてる。


「1回、お前もしてみろよ。」

戻ってきたシュンにそう言われるも、自分自身はした事ないし、とりあえずよく見てた方法を試しみるか…


シュンが後ろで見守ってるのを感じながら、声をかけようとして待ってると族長がすごい勢いでこちらに走ってくるのが見える。


「お前らぁあ!何してるんじゃぁぁあ!」

あぁー…遠目からでも怒っているのが、分かる。


「ぞ、族長…ナンパというものを…」

2人揃ってパァン!と頭を叩かれる。

「痛い…」

「シュン!!一体何をしておる!?お前もじゃ!元気になれとは言ったが、このような元気なのは要らん!」

「いや…その…エルフは子どもが少ないという話をして人間達はこうやって相手を見つけると聞いて…」

シュンが、そう話すと族長が盛大にため息を吐く音が聞こえ、族長の方を見ることが出来ない。


「はぁ………。まぁそれは分かるが、この方法は無しじゃ。良いな?」

「「はい、すみませんでした。」」

2人揃って頭を下げる。

「まぁ…分かったなら良い。エルフの総数は確かに減ってはおる…あまり恋愛に興味が無いのも事実。だが誰でも良い訳でも無かろう」


「「はい…」」

「シュンもダレイオも他の方法を考えなさい。」

「「はい…」」

「よし。なら良い。エルフの事を思ってした事ならな」

族長が居なくなってからシュンと他の方法を考える。

「誰にでも声を掛けるじゃなくて祭りみたいにしたらどうだろ?」

「祭り?祭事は舞などだろ?」

「いや、そうじゃなくて例えば2年に1回男性から気になる女性1人に花を贈るんだよ。女性はそれを受け取っても受け取らなくても良いみたいな…」

「花か……それならボアとかのが俺は良いけどな。食えるし。」


ナンパを提案した身として言うのも悪いと思うけど、シュンは色々ダメな気がする……。


「おい、何だよその目……花な!分かったよ!1回族長に提案してみる」

ジト目が通じたのだろう。良かった。ボアを女性に贈るのはどうかと思うよ。

ブロック肉でも恋愛と結び付かないよ…

「そうしてみてくれ。」


シュンが後日、族長に伝えると1度開催してみても良いかという事になった。



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