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いざ、王城へ7〜賢王の日記〜

【救ってくれたエルフ族との思い出を日記に綴る。どうか今後もエルフ族との交流を絶やさず続けてくれる事を願う。】


昔から何でも私は器用にこなせた。

剣術、魔法、勉強。

正妃から産まれた私は、産声を上げた瞬間から王になる道が決まっており、それ以外の可能性を考える事は必要無かった

。いつからだろうか。城で働く者達を目で追いかけるようになった。

どうして庭師になったのだろうか。どうして兵士を選んだのだろうか。どうして…と。

考えても自分には王になる道しかないのに。

それがいつからか、窮屈に感じるようになっていた。

ただ、考えても仕方が無い事だと考える事を放棄した。

次々に産まれてくる兄弟達は、2つに別れた。

お兄ちゃんと慕ってくれる者と、正妃から産まれた私を疎ましく妬み思う者。



家族の愛に溢れた生活だったとは言えない。

本にあるような、メイドが楽しそうに語ってくれたような家族とは違った。

第二王妃は、自分の子を王にならせたかったのだろう。第三王妃は、自由になりたかったのだろう。

第四王妃は、優しすぎる人だった。


そして母は疲れてきていたのだろう。

大臣達に上手く操られ権力や欲に溺れていく父、王に。

母は次第に私と会わないようにしていった。


そんな環境で育ったからだろうか、笑う事さえ苦痛になっていく日々だった。

擦り寄って来る者達の相手を適当にいなし、与えられた優秀な王子という立場を全うする。


友と呼べる者も、居ない。友を作ると第二王妃が害するだろう事は目に見えていた。権力争いに巻き込んでしまう事を私は恐れたんだ。


そうして、周りを諦め、嘘の笑顔が上手くなり、将来の事も何も希望を持てず、憂さ晴らしに半年に1度、変装をし身分も行商の親に着いて行き修行中だと偽り、隠れて町に遊びにいくようになった。

町に下りて、様々な物を見て知った。


出店の活気、人々の笑い声、昼から酒を飲み喧嘩してる冒険者、同世代の子達とも、気を使わず媚びられる事も無く思いっきり遊べる。

眺めるだけじゃ無い、そこには、自由があった。

「優秀で完璧な第一王子」を演じなくて良い。

それがとても楽しかった。



15歳になり少し経った頃、メイドが血相を変えて呼びに来た。母に毒が盛られたと。

医者を呼んでくるようにメイドに伝え、慌てて向かうと、血を吐き絨毯とドレスを赤く染め母が倒れていた。

今でもその光景は鮮明に思い出す…。

倒れた母を起こし、ベットに寝かせ口をゆすぐ水を持ってきたメイドと介抱し、医者が来たのは30分後だった。

その間に母は息を引き取った。

何故、来るのに30分もかかったのか医者に詰め寄る。

早く来てくれて、解毒剤があれば……。

助かったかもしれない。そう思うと冷静では居られなくなった。

こちらに向かう前にメイドに呼びに行かせた筈だと。


顔面を白くさせ、硬直した医者は言う。

ついさっき、呼ばれたと。

その前に呼びに来た物は居ないと。


どういうことだ。確かに、呼びに行かせた筈だ。

そう叫び、周りのメイド達から呼びに行かせた筈のメイドを探すも見付からない。

騒ぎを聞きつけ、父と第二王妃達が集まる。

第三王妃と第四王妃が、母を見て顔を青くする中、第二王妃だけが、顔を扇で隠しこちらにだけ見える様に満面の笑みを浮かべていた。

醜悪でありながら、無邪気さもある笑顔……。

その後ろで医者を呼びに行かせた筈のメイドも第二王妃の後ろで舌を出す。



…あぁ。そうか。嵌められたのだ。

このメイドは第二王妃側についていたのだろう。

だから、医者を呼ばなかった。


怒りに身を任せ気付けば、第二王妃に叫びながら飛びかかり兵士に慌てて押さえ付けられる。

「王子が、正妃様が亡くなり取り乱しておられる様子。王よ、どうされますか?」

第二王妃が父に聞く。

「襲いかかるとは…。仕方ない。暫し地下に連れて行くのだ。」


何故だ。何故なんだ。母が亡くなったんだぞ。

何故そんなに冷静でいられるんだ…。

力が抜け兵達に地下室に連れて行かれ、母の血の付いた服が夢では無い事を突き付けてきて。

良い母親では無かったのかもしれない。

でも、この世で1人だけの母親だったんだ……


何時間か経った頃、声がした。

「少しだけ王子と2人で話をさせてください。これは皆さんで……」

第四王妃……?

人払いを済まし、黒のマントで姿を隠し第四王妃が部屋に入って来て話をする。

「ここからお逃げ下さいませ。第二王妃が貴方の命も狙っております。王はもう、聞く耳すら持ちませぬ。毒が貴方の部屋から見付かったとの兵の戯言を信じており……どうか、お願いです。生きて下さい。」

涙を流し、第四王妃がいつも付けていた指輪を渡してくる。

「これは……」

声と呼ぶには小さな声を、聞き抱きしめられる。

第四王妃の涙が肩を濡らす。

「ごめんなさい。貴方のお母さんを守れず、私の力が弱かったからです…。この指輪は私達に代々伝わるエルフ族の門を開く指輪です。昔、祖先がエルフの子を助けたからとお礼に頂いた物です。これがあればエルフの村に逃げられます。エルフは義理堅い種族です。貴方様がどこに逃げても追手がかかるでしょう。ですがエルフの村ならば見付かりません。」


エルフの…。

「どうか森まで逃げてください。これを……」

そう言って、町まで下りてた時の変装セットを渡される。

「貴方の執事から預かりました。さぁ着替えて、すぐに、出ますよ!」

涙を拭い立たされ、手を引かれる。

途中見張りの兵士に止められるかと思ったが、意識を失い倒れている。

「睡眠薬を混ぜたスープを差し入れしましたので。」

何か渡していたのはこれだったのか…

馬小屋まで逃げた先に、第四王妃専属のメイドが馬を連れ待っていた。

「ここからは、この子の案内でお逃げください。私はここから先には行けません。ですがどうか、お元気で……」

最後に第四王妃にお礼を伝えメイドと森を目指す。

道中、第二王妃の追手に何度も襲われ、メイドとはぐれ傷を負い血まみれになり、倒れる。


あぁ……ここまでか……。

こんな事なら優秀な第一王子なんて肩書きを捨て、自由に生きれば良かった。

もっともっと、色々経験して……

目を開けられ無くなった時、綺麗な声がした。


「血まみれ…ん?でもこの指輪って……そうか。この子に渡したんだね。分かった良いよ。門まで連れていこう。」

一瞬だけ見えたのは、眩い光を纏った綺麗で幻想的で儚げな女性だった。



次に目を覚ました時、少し年上位のエルフの青年が椅子に座りながら包帯を外してた時だった。

「え?ここって……」

「起きたな?ここはエルフの村。僕はシュン。君は?」

優しげな目が今でも記憶に残っている。

その目を見た時、あぁ…助かったんだ。逃げきれた。

次こそ、好きなように生きよう。

必死に。

そう思った。

「治療してくれてありがとう。私は…いや、俺はダレイオ。」

「そうか、ダレイオよろしく」

この出会いが、自分のこれまでの生き方を変えてくれる出会いだった。










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