いざ、王城へ5
前の世界とは全く違う世界だからやはり、病気も知らないのがあるなぁ…
種族や、魔力、環境が違うのだからそりゃそうなんだろうけど。とりあえずどんな病気か聞いて、治療方針等色々確認しないと。
「黒弱病とはどういった病気なのでしょうか?」
私がそう聞くとレナートが頷きカルテを見ながら話す。
「王家代々の病気でして、年齢と共に体の中の魔力が1箇所に固まり、血液の流れを悪くする事で、立てなくなり足に力が入らなくなり寝たきりの状態になっていきます。 食事にしても摂取量が減っており、皮膚も弱くなり発赤ができます。」
なるほどなぁ。
発赤か。何処にどの程度のなのか。
「1度、皮膚状態を確認しても宜しいでしょうか?」
「どうぞ。」
マーレイ王の許可を取り背中を観察する。
背中からお尻の方にかけて皮膚が赤くなっている。
これは褥瘡……
「寝てる間などは、体位変換してますか?」
「いいえ、しておりません。」
マーレイ王も、首をゆっくり振る。
稼働領域なども、調べると、会話に問題は無い、ただ首から下にかけてあまり動かせないようだ。
「すみませんが、じょくそうとは?これは病気だからなるのでは?」
レナートが隣に立ち一緒に確認しながら聞いてくる。
「病気だから…では無く、寝たりきりの方や、同じ姿勢でずっと居ることで皮膚の血流が滞る為、なります。ベットにしてももう少し柔らかいのが良いかもしれません。後はこまめに体位を変えましょう。」
「なるほど…分かりました。ではそのように人員を組み直します。」
レナートと、マーレイ王とその後話し合い、2時間起きに体位変換、ベットのマットを交換してみる事とクッションを細長い形と三角の形を作り、確認しながらポジショニングを行う事になった。
前の世界だとエアマットや、自動体位変換マットがあったけど、この世界には無いからなぁ…。
「後、ルーズ様、そのアクア様が記録されている紙の形式なのですがとても分かりやすく纏められてますね…参考にさせて貰っても?」
レナートが、記録を頼んでいたアクアが書いてるアセスメントシートを興味深そうに見る。
これも前の世界のやり方と一緒にしてある。
生活環境、心身の状態、問題点、家族や本人の要望などを分かりやすく表にしてある。
「えぇ、構いません、どうぞ。あの…黒弱病が王家代々との事なのですが、それはどうしてなのでしょうか?」
「それは……」
レナートが言葉に詰まり、マーレイ王をチラリと見る。
「良い。レナート。余から話そう…」
マーレイ王が、こちらを見ながらゆっくり話す。
「この国には門が5つある。そして、人間は他の種族に比べ弱い…賢王の時代、王位継承権で揉めた。沢山の民の血が流れ、そなた達エルフ族にも迷惑をかけた。賢王は精霊に願った…目が欲しいと。様々な所に潜ませ裏切り等無い目。その結果小型の鳥やネズミ、虫達と契約する術式を作った。それを各門や町に潜ませ見守り監視する。悪意を。ただ、多大な魔力を払い引き継ぐと同時に身体がゆっくりと蝕まれる……。それが黒弱病……。そんな顔をしないでおくれ。この力は望んで継いでいますから」
こちらを気遣い、優しくマーレイ王が笑う。
光属性の魔法でそれは治せないのだろうか?
そう思うもサンの尻尾は横に揺れて治せないと伝えてきて、悔しい気持ちになる。
出来ないのか…
使い魔の契約の為の「対価」だから…か。
対価は無かった事にならない……。
必死に覚えても、魔法は万全じゃない…
「それが…そうなのですね…痛みなどは無いのでしょうか?」
「痛みは薬がよく効いており、今は問題無いですね」痛みは薬で抑制できてるみたいだ。良かった。
ずっと痛いのは耐えられないだろう…。
「マーレイ王、ご飯はどの程度食べれてますか?」
「あまり、スープ以外食べれては無いねぇ…」
ぎこちない苦笑いを浮かべマーレイ王が答える。
「食事はどういった物を召し上がられてるか拝見しても?」
「かまわないよ。レナート」
「かしこまりました。料理長を呼んできてくれ。」
レナートがメイドに声をかけ料理長を呼んできてもらう。
「お待たせ致しました。料理をとの事でしたのでお」
パンと野菜が沢山のスープ、魚のムニエル、デザートにはヨーグルト。
普通食か。
確かに美味しそうで栄養面も考えられているのが分かる。ただ、野菜が大きめでこれは飲み込むのも、噛む力が弱くなっていると一苦労だろうし、ムニエルにしても盛り付けの為か切り身が大きい。
問題なく話せてはいるけどもう少しペーストにしてみたらどうだろうか?
マーレイ王にしても、皮膚の確認の時痩せている事が気になった。
一度料理長に提案してみる。
ショーンとアクアはシュン爺の時に見ているからか、頷いてくれ、リーフはジッと見ている。
「ペーストですか…それだと王にお出しするには見た目が……」
見た目か…でもそれで誤嚥を起こしたら……
「見た目は確かに良くは無いかもしれません。ですが料理とは食べて元気になってもらう事が重要では無いのでしょうか?…無理して食べているとそれが喉に詰まり、誤嚥性肺炎と言う病にもなる可能性があり命にも関わります。その人に合った食事形態にしないと危険なのです。」
「命に……それは…分かりました。一度全てペーストにさせていただきます」
料理長の目を見て伝えると、初めは渋っていたけれど、命にかかわると分かると青ざめ頷いてくれ、一度ペーストにしてマーレイ王に食べてもらい、レナートと観察する事にした。
食事の際には体をしっかり起こし、飲み込めているか、ムセは無いか。
「こっちの方が飲み込みやすい…味もそこまで変では無いね。」
初めは恐る恐る口に含んでいたけれど、完食してくれた。
良かった。
本当に誤嚥性肺炎は怖いと思う。
高齢者は特に悪化すると死亡リスクが高い。
今のところトロミも無く食べれそうだ。
レナートにも確認し、しばらくペーストにして見る事にした。
食事の形態にしても、普通食→きざみ食→ペースト食とあり、きざみ食の中にも、その人にあったきざみ具合があるので、ある程度食べれるようになってきたら、きざみ食に戻しても良いと思う。
それも、マーレイ王、レナート、料理長に伝える。
後はお風呂、排泄などはどうしているのだろか。
レナートに聞くと、お風呂はレナートと従者で暖かいお湯を浸したタオルで体を拭っているとの事だった。
ストレッチャー式の機械浴とかだと、そのまま入浴もできるのだけどこの世界には無いしなぁ…。
シュン爺の寝たきりの時は、お湯が好きじゃないとの事で水属性のクリーン魔法を使っていた。薄い膜が体を覆い汚れを浮かせる。それをそのままバケツに捨てる。
エルフに温泉や入浴の概念が無くて、私がお風呂を作った時は、お風呂大好き派と、水浴び派で別れた。
「マーレイ王は、お風呂は好きですか?」
「好きだったけど、今はこの体だからね…。」
体を見てため息を吐きながら、寂しそうな表情を浮かべる。
どうにか湯船に入らせてあげたい。車椅子が出来たらそれでお風呂まで連れて行き、入浴出来ないだろうか?
それか、水属性の魔法で暖かい水球を作るとか。
一度アクアやみんなで考えてみよう。
この世界には魔法があるんだから。
排泄問題も今はトイレに行けないので、オムツ対応をしているとの事だった。
オムツにしても前世の様な物では無く、綿と布。
吸水性はあまり良くない。
これも、これから改良していかないとな…。
エルフは体が衰え魔力が弱くなると排泄が止まっていた。食物は魔力として循環し排出されない。
種族の差、環境の差が本当に大きい。
車椅子にしても、出来次第マーレイ王にも試してもらう約束をし、ひとまず2日に一度訪問させてもらう形で決まった。
「皆さんこれからもどうかよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
レナートと握手をしていると、マーレイ王がベットの横に置いていた黒い本を渡してくる。
「これを。」
古い本なのか所々表紙の色が剥げて色が変わっている
「これは…?」
「金貨をまた託して下さったとの事、そのエルフの方と約束していた賢王の日記だよ。家でゆっくり読んでまた次会う時に渡してくれたらいいからね」
これがシュン爺から聞いていた友の賢王のものか…。
ゆっくり家で読ませて貰おう。
「ありがとうございます。大切に読ませて頂きますね」
「では、皆様こちらへ。」
レナートとマーレイ王の部屋を一緒に退出し、門まで送って貰い帰路に着く。
家に着き、皆を集めて今日のマーレイ王に会った話をする。
暫くは、私達で訪問するけど、ゆくゆくは介護を習ってくれているソイをリーダーに、子どもたちにも仕事をしてもらう為黒弱病の事は控え、情報を伝え、できる事を考えてもらう。私のケアプランでして貰うけど、1人1人が向き合ってもらう為に。
その際にお風呂が好きならどうにか入浴して貰えないか。の意見が多く上がる。




