いざ、王城へ4
「昔に聞いて、一緒に試したんだよ。君と同じような事をしていたドワーフとね。色々な魔物の素材を使ってね。」
「そのドワーフの名は?」
「ワバだよ」
サンの言葉にヒュドが目を見開き、前のめりになる。
「何故その名を知っておる!?ジジィは歴史から名は消されたはずじゃ!まさか…」
「そう、そのまさか。時空を切り開き拡張するテント。それを一緒に作ったのは私だからだよ。」
サンが淡々と答える。何でも無いように。
「光の精霊神…か。でも、姿が……」
「あー…まぁ、そうだねぇ。あの時とは、違うね。今は色々あってこの姿なんだよ。使い魔って事にしてね。」
今のサンの姿は私の記憶から選んだ猫の姿だもんね…
でも、精霊神の時はどんな姿だったんだろ。初めて見た時から猫だから、私も見たことないな……
後で2人の時にでも、聞いてみようか。
そんな事を考えてる間にヒュドも力が抜けたの、椅子に深く座り直す。
「はぁー…深くは聞かん。だが光の精霊神とはな…またエラいもんを連れて居るのぅ。まさかそっちの嬢ちゃんも精霊神とでも言うんじゃ無いじゃろなぁ…」
「私は精霊神とは、また違います。」
ヒュドがため息を着きリーフを見るも、リーフが否定すると安心したような顔を浮かべる。
「私も今は精霊神では無いよ。『元』精霊神。それにしてもワバを知ってるんだね。変わった事をしてるから、そうかなぁ?とは思ってたけどね。縁とは面白い物だね。」
嬉しそうにサンが笑う。
「あの、歴史から消されたとは?」
私がそう聞くと、ヒュドがゆっくり頷き答える。
「ドワーフが武器を作ることに重きを置いてるのは、知っておるじゃろ?だからこそ、武器を作らぬドワーフはドワーフでは無いと言う考えが、今より酷くてのぅ……。本当なら時空魔法を術式に組み込むのは歴史的大発見になる程じゃ。だが、武器では無い。だからこそ無かった事にされてのぅ。ワシは、ワバの孫に当たる関係じゃ。だからこそ悔しくてなぁ…。それでこの仕事にしたんじゃ。」
孫とはまた…凄い縁だな。いや孫だからこそ、便利屋なのか。
「そうなんだね」
「まぁ、面白くない依頼は受けんがのぅ。おかげで金欠じゃわい。それにお前さんだってエルフなのに外に出て色々してるんじゃろ?変わってるじゃろ。」
確かになぁ。私も前世があるから外に出たかったし、こうやって色々してるけど、周りから見たら変わり者か…そう思うと変わり者同士だ。と笑ってしまう。
「まあ、ええわぃ。とりあえず車椅子とベビーカーは任してくれ。素材は1個ずつ作る位ならあるでな。出来たら使いを出すから見に来てくれたらええわぃ。」
無事に依頼も出せて前払い金として、銀貨を2枚渡し家路に着く。
「面白いドワーフだったね。ルーズ帰ったら2人で話をしようか。話したいと顔に書いてるよ?」
私がいつサンに姿の事を、切り出そうかと考えてるのを見かねたたのだろう。
「そんなに顔に出てた?」
「ソワソワと何度も見ているの位、流石に分かるよ」
「そっか。うん、話そう。」
門の前に着くと、ショーンが待っていてくれた。
そのまま、アクアとソイとスーを呼んできてもらい、
無事に依頼を頼めた事や今日あった事を聞く。
「今日王城から使いがあり、先王との面会時間が明日になりました。」
思ったより早く時間を作ってくれたみたいだ。
「分かった。少しサンと2人で話をしたいんだけど良いかな?」
そう伝えるとショーンが頷き、皆が部屋を出ていく。
サンが机の上に座り目線が合うようにしてくれる。
「ルーズ、2人になった事だし話を聞いてくれる?」
私が頷くのを確認し、サンの体が光り輝き人型になる。金色が太陽の様にキラキラと輝き腰まである髪、深い海を思わす、青い綺麗な目。
「ふぅ。やっぱりこの姿は凄く疲れるし維持が出来ない。戻るね。」
思わず見蕩れているとすぐにまた、猫のいつもの姿に戻る。
「今のが本来のサンの姿なの……?」
「そうだよー。ただ形を作るのが凄く魔力を使うんだよ。今はもう精霊じゃ無いからね…使い魔として契約してる分今の姿のが楽でね。普通は精霊が使い魔契約なんて出来ないから。」
出来ないの?ならサンは何で使い魔に……。
「んー。『存在自体を使い魔に変えた』んだよ。そんな事出来るのか?って顔してるね。普通精霊が使い魔になろう。とする事は無いからね…。次の世代を作り力を渡し役目を終え、魔力となりこの世界を巡る。でもルイは精霊として、少し変わった子だったんだ。感情が昔からどの精霊よりも強く内に秘めててね。だから心配で力を失っても、魔力に完全に戻らず様々な場所を巡りながら様子を見守っていたんだ。そしたら……」
「母様と結ばれ子どもができた?」
「ふふ。そう。前世の記憶を持っているルーズ。君がね。魂の時点で君は他と全く違った。だからどう育つのか?力は?悪人だったら?……。だから、ルイにも協力して貰い存在自体を変えた。使い魔になったんだ。痛みと残り少ない魔力と本来の姿を代償に。」
「姿まで……その…サンは私がこの世界に来た事どう思ってる?」
何と言われるか不安で聞きながらも、下を向いたままサンの顔が見れない。
「凄く嬉しく思っているよ。どうなるか。は分からない。でもルーズ。君と会えた事は本当に嬉しい。素直で優しく一生懸命でみんなの事を大切に思っている。大丈夫だから不安がらないで。傍に居るからね。」
サンの言葉を聞いて涙が止まらない。
安堵や喜び安心感。前の世界の時、家族と仲は良くなくて、「家族」に憧れ焦がれ。
この世界で出会って支えてくれる人達が優しくて…。
優しく受け入れてくれて大丈夫だと伝えてくれる。
私、転生して良かった…。
居場所を見つけられたから。
「サン、傍に居てくれてありがとう。」
そう伝えるとまた優しく微笑んでくれた。
次の日朝からまたしっかりと支度をして、ショーンとサンとリーフ、アクアで迎えに来た馬車に乗り込む。
王城につき手紙を門番に渡すと、すぐに一室に案内してくれる。
前とまた違う部屋だけど、ホコリ1つ無く清潔感に溢れている。
暫く待っていると、青いドレスを纏った王妃が護衛を1人連れて現れる。
「お待たせ致しました。本日はお越し頂きありがとうございます。早速ですが、お義父様の所に、御案内致しますわ」
「よろしくお願い致します。」
王妃の後を歩き、城から少し離れた所にある石造りの大きな塔に、案内される。
中に入ると執事やメイドが頭を下げ一列に並び、装飾こそ少ないが、しっかり隅々まで手入れされており、綺麗だ。
そのままホールを抜け、2階に上がり1番奥の部屋のドアの前で王妃が立ち止まる。
「皆様こちらへ。お義父様、宜しいでしょうか?」
「どうぞ。」
中から、掠れた声が聞こえ、ドアが開かれる。
ベットの上に、金の髪を横に1つに纏め、白のガウンを羽織り、優しい目をした80代位のお爺ちゃんがクッションで体を支えながら、座っている。
「皆様、初めまして。この様な体制で申し訳ない。私がヴァン国代33代目ルーシア・マーレイ、横に立っておるのが、王家お抱え医のレナート」
「レナートです。マーレイ様の主治医をしております。」
レナートがゆっくりお辞儀をする。茶色の短髪、つり目。40代位の細身でシュッとした印象だ。
「初めまして。風のニアの娘、ルーズです。こちらが、ショーン、アクア、リーフ。私の使い魔のサンです。」
「皆様の挨拶も済んだみたいですので、それではお義父様、私はこちらで下がらせて頂きますね。後はルーズ様、よろしくお願い致します。」
「あぁ。ありがとうユッカ。」
挨拶が済んだタイミングで王妃がこちらに礼をして、退出する。
「すまないね、ユッカには出て行って貰うよう頼んでおいたんだよ。息子達もあの子も心配性でね。」
先王が少し困ったように眉を下げ話す。
「もう、先は長くないみたいだからね。それでも長く生きた方だ。後悔は何も無いんだ。ただ、それを言うと悲しそうにするんだよ。」
長くないと分かっているからこそ、少しでも一緒に過ごしたい、何かしたいのだろう…。
『死』は誰にでも訪れる、逃げられない。
前の世界でもそうだったけど、見送る方も、見送られる方も苦しい時間が今なのだろう。
長くないと分かっている。この時…。
「そう…なのですね。あの、マーレイ王の体の状態をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
そう聞くと、マーレイ王が頷きレナートに目線を送る。
「それでは私から説明させて頂きます。マーレイ様はご年齢もありますが、黒弱病に罹っております。ご飯もあまり食べれておらず皮膚の弱りも見られます。」
お?こくじゃくびょう?
何だそれ……。聞いた事ない。前世でも無かった病気だ。
チラリとサンを見るも、サンも知らないのか尻尾をゆらりと横に揺らす。




