いざ、王城へ3
次の日、朝早くから約束通りムキムキのおじさんが時間を伝えに来た。
赤子を連れて昼前に来るとの事で、それまでは介護の授業を少ししてから子どもたちの希望で、8歳から上の子には、木の剣を使い剣術を教える。
力があるに越したことはないし、楽しそうだ。
「ルーズ様方は、お強いのですねぇ。私も貴族様の所で剣術を見て来ましたが、ルーズ様方は、洗練されておられるのが分かります。」
小さな子ども達の相手をしてくれていたサハラがこちらを見ながら話す。
素直に剣術を褒めて貰えるのは嬉しい。
ショーンのおかげかな。
そうしていると、赤子を連れた女性が来たとの事で、
私とサンとリーフだけ抜けて別室に案内する。
「どうぞ、お座り下さい。」
そう声を掛けソファに座る。
「ありがとうございます。ラグ様より紹介して頂き参りました、ナキと申します。本日はお時間を作ってくださりとても感謝しております。」
赤ちゃんを抱っこしながらナキがゆっくり頭を下げる。女の子だろうか?手をアムアムしながらこちらを見て笑ってくれる。
可愛ぃ…ランと同い年だし良い友達になれるかなぁ…
ん?そういや、ラグって?………。あー!!
あのムキムキのおじさん。名前聞いてなかったな…。
「いえ、こちらとしても孤児院で働いてくれる人を探しておりましたので。孤児院の話はラグさんより聞いてるのでしょうか?」
「はい、聞いております。是非働きたいと思いますが、本当にこの子を…連れて来て良いのですか?」
赤ちゃんをあやしながら不安そうにしている。
「大丈夫ですよ。他にも子どもを連れて来て他の子の世話もしながら働いてくれてる人も居ますので。」
そう答えると、安心した表情を浮かべる。
「そうなのですね…良かったぁ。他に赤ちゃんは居ますでしょうか?もし居るなら、乳母になれると思うのですが…」
キタァア!乳母さん!それは凄く助かる!!
「それは凄く助かります。1人居ますので。」
ランのミルクは、スーにお願いして出勤前買ってきて貰ってたけど手間だし乳母さんは探してたんだけど、なかなか見付からなくて、本当助かる。
給料の面などを伝え問題ないとの事で、明日から早速働いてもらう事になった。
これで孤児院の方はスーとナキ、授業が無い時はサハラも入れて3人かぁ。
何とか形になってきた。私とショーンやアクアが介護で出てる時も安心して任せれる。
さて、そろそろ授業を行うにも、車椅子とか実物が欲しいなぁ……。
基本は教えたから後は移動や移乗の練習もしたい。
ユイカに聞いた便利屋に明日行ってみようかな。
そう思い、サンとリーフとショーンとアクアを呼ぶ。
「孤児院の方も今日来てた人を採用したから、車椅子とか色々作成依頼していこうと思う。ユイカ様から聞いたドワーフがしてる、便利屋に明日、行こうと思うんだけど。サンとリーフと私で行こうと思うの。」
アクアには孤児院の方の小さい子どもたち、ショーンに年長組の子どもたちの剣術の指導をお願いする。
「おぉ!ドワーフかぁ。あの子達は物作りに関してはプロだからね。楽しみだなぁっ!」
サンがワクワクし、尻尾をユラユラ揺らし嬉しそうだ。
「そういや、昔魔法が施されてるテントがあったでしょ?あれもドワーフ製なんだよね。サンはドワーフ達と交流があったの??」
「昔だけどね。ドワーフって種族はね、武器や武具の制作で競ってるんだよ。魔剣や聖剣を作れるか、威力はどのくらいか。より強力な物をってね。でも1人だけ居たんだよね。国から追い出されても、人を倒す事よりも、人の暮らしに役立つ物を作りたいって変わり者が…ね。」
懐かしむように、大切にしていた宝物を開けるようにゆっくりサンが話す。
素敵な考えのドワーフだ。だからこそ、精霊のサンが手を貸したんだろう。
「そっか、会えるの楽しみだね。」
「あぁ。そうだね。」
次の日昼過ぎから便利屋に向かう。
南の方……初めて来たけど傭兵ギルドがある場所だったみたいで、武器や防具屋が沢山ある。
「凄い数だねぇ…あ、リーフって武器無いよね?後で見る?」
「要りません。」
「精霊は、武器を持たないよ。魔法がその分強いからね。近接戦になる事が無いんだよ」
サンが私の肩に乗りながら話す。サンが戦う所は見た事無いけど勿論強いんだろなぁ…。
店が無くなってきた所にポツンと1件だけ小さな二階建ての小屋みたいなのがある。二階も所々壁に穴が空いてる。
「あっ。ここだ。」
絵が無く看板に【便利屋】とだけ書いてある。
「すみませんー!依頼をお願いしに来ましたー!」
中に入るとカウンターに誰も居ない。
あれ?留守かなぁ…
「すみませんー!!」
「ぁあああ!もう!!うるさいのう!聞こえとるわい!」
カウンターの下から、長い髭を1つに括り小太りで背の低いおじさんが出てくる。いや、おっちゃんって感じかな…
下に居たのか。棚でもいじってたのかな?
「ごめんなさい、居ないかと思って……」
「ここで寝てたんじゃ。客もそんなに来ないからのぅ」
カウンターの下で寝てたの……?予想外だよっ!!
「はぁ。まぁええわぃ。お前さんはエルフじゃろ?また珍しいのぅ…待て、肩に乗ってるのと、そこのちっまい嬢ちゃん……。精…霊か?」
髭を優しく触っていたのに、あまりに驚きたのか髭を引っ張りながら聞いてくる。ぇえ…。髭ェ…。
「なんで分かったの?」
「んふふ。なるほどなるほど。君は魔力そのものがハッキリと見えているんだね?ルーズ、前に物の魔力が見える子が居たでしょ?それのもっと凄い版だよ。人の魔力、物の魔力、全ての魔力の流れが見えるんだよ。エルフの血は入ってないだろうに。ドワーフの中でも本当にレアな目だねぇ」
心底楽しそうに目を細めサンが笑う。
新しい玩具を発見したって顔してる…。
耳飾り自体がエルフの耳を隠してるのを見るだけじゃなく、身体に流れる魔力まで見えのか。
エルフも魔力は多いけど、精霊には敵わないし魔力の密度が全く違う。
「ぁあ。そうだ。話せるって事はやはりそうか…。目がおかしくなったのかと思ったわい。ふぅ…とりあえず話を聞こうかの」
髭から手を離し奥の部屋に案内される。
「適当に寛いでくれてええからの。それで依頼って何じゃ?」
「この絵を見て欲しくて。これは車椅子これはベビーカーどちらもブレーキを付けて安全性は確保して、また、量産型とオーダーメイドでも作れるようにしていきたくて。」
絵を見せながら、説明する。
「なるほどのぅ。これは便利じゃ。まあ、ええじゃろ。作ってやろう。だが素材を色々集めて見らんと分からん。このタイヤの所じゃが、木では傷んでしまう。金属では重すぎるじゃろ。」
確かに。全部が金属では回らないんじゃないかな。
ゴムに近い素材にしないと…
「それなんだけどさ、フロッグマンの粘液を、固めてみたらどうかな?伸縮性もあるしブヨブヨして柔らかいし頑丈でしょ?」
サンが言うとハッとしたような顔をヒュドが向けるも思い出したのか顔を歪める。
「そうじゃのう。ただ粘液だと匂いがのぅ…」
確かにすっごく臭かった。いや、もう思い出すのも嫌な位に…見た目も匂いもトラウマだよぉ……。
「それはウォータースライムと混ぜるんだよ。熱で溶かした粘液をフロッグマン3スライム7の割合だったかな?」
魔物の素材同士を合わせるのか。なるほど。
「なるほどの。流石、精霊様と言った所かのぅ。よく知っておる。だが知りすぎている。本来精霊はそんな事に興味も無いはずじゃが?何故そんな事を知ってるんじゃ?」




