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人間の国ヴァン2

「お待たせ致しました。私、クギ様より依頼されていた傭兵ギルドの副マスターを任されております。ガースと申します。本日はギルドマスターが出払っており私が対応させて頂きます。さて遺品の確認と、山賊達の討伐の報酬金、そちらの赤ちゃんの件も合わせてご報告に参りました。」

と少しぽっちゃりし、頭が寂しい40代位の男性が話す。

「皆様、宜しいですかな?」

頷くとガースが報告をしてくれる。


遺品を確認したところ、この国の住民で主に平民相手に薬屋を営んでいたもの達であったこと。

親戚を呼びこの国で一緒に暮らすと出ていき、帰ってくる途中で襲われたと思われること。


また、山賊達は指名手配もされていてギルドも探していたものの、隠れられたり中々見付からずにまた腕も立つことからなかなか討伐までは至らなかったこと。赤ちゃんの件も、親戚含め殺されている為引き取り手が居ないこと。


「そうなるとこの子はどうなるの…?」

クギに聞くと渋い顔を浮かべる。

孤児院などは無く、基本親戚の誰かが引き取って育てたりするとの事だった。その親戚も居ないとなると…。

福祉的な考えがやはり無いから預かり育てるって場所も考えも無いのだろう。

そもそも子どもだけ生き残ることも、あまり無いと。

また生き残った子どもにしても、貧民街と呼ばれる所で暮らしているとの事だった。



そうか。

国が支援をするっていう考え方自体が無いのだろう。

まあ、日本も福祉についての考えや、豊かになったのも長い歴史を考えても最近の方なんだから……。


この国に向かいながら出来ることを色々考えてたけど、孤児院という物を作ってもいいかもしれない。

この世界は、安全や保証なんて何も無いのだから。


せめて子どもを守る場所は作りたいし、この国で信頼を得るとエルフとの国交の面でも手助けになる。

エルフの調整員にしても基本は、そこまで仕事がある訳では無い。何か起こった時にエルフの村とこの国の間のやり取りを、手助けするというのが仕事だから。

日本で働いてた時みたいに何日出勤、何時〜などが無いためある程度自由に動ける。



福祉の概念をこの世界に!そう決めていたし。

来る途中何度か皆に考えは伝えてあるし…。

みんなを見ると頷いてくれる。


「この子は…ランは、私達で育てても良いでしょうか?」

「ルーズ様達ででしょうか?いや…それは…問題は無いのですがその…宜しいので?」


「問題ありません。」


私がそう答えると、クギも何も言えないみたいで、ふぅうう。とゆっくり息を吐く。


「分かりました。よろしくお願い致します。王には私から報告しておいても?」


「ええ、お願いします。それと孤児院というものを作ろうと思うのですが…」


「孤児院?それはどういったものでしょうか?」



身寄りのない子どもや、何かハンデのある子どもなどを保護し、また仕事を与えることで貧しい暮らしから抜け出すサポートをしていきたいことを伝える。

資金についても、初めはこちらで用意をすること。

ゆくゆくは国からの資金も少しは作って欲しいことを伝える。


「いやはや…風のニア様から聡明なお子様だとはお聞きしておりましたが……。ここまでとは…。1度資金の件も含め王に報告させて頂きます。」


「分かりました。お願い致します。」


上手く話も纏まったところで、クギとガースが国としての対応の返答を3日以内に出すと話し、帰っていく。




「ふぅ。疲れた。ミルクも明日には無くなるから明日は買いに行かないと…とりあえず今日は休もっか。」


部屋割りを決め、ショーン、アクア、リーフの部屋を決める。私とサンとランは同じ部屋にした。各々部屋に戻りゆっくりしランを寝かしつけているとサンが話しかけてきた。

「少し良いかい?」


「どうしたのサン。いいよ。」


「ルーズの考えは違う世界からの考えだからか驚かされることが多い。ただ、そこまでしてもエルフというだけでも長いのに、エルフと精霊の間に産まれただけにルーズは人間とは寿命が全く違うぞ。ランにしてもルーズより先に死んでしまう……それでも良いのかな?」

いつになく、真面目にサンが話す。


「心配してくれてるんだね、ありがとう。そうだね。残された方は辛いからね…でも、今から私がしていきたいことは私が、居なくても続いていくってのが理想でね。それに見送ることに関して慣れてるよ。前世の仕事がそうだったの。サンやリーフ、ショーンやアクアも居てくれるでしょ?だから大丈夫だよ。」


「そうか……なら良いかなぁ。それにしてもルーズはランの世話が上手いなぁ…」

ランの寝顔をサンが覗き込んでいる。

「そうかなぁ…前世で何度か赤ちゃんの世話をした事があるからね。年の離れた妹も居たし…。保育士って言って赤ちゃんや子どもの世話をする仕事に憧れた時もあったからかな。」


「そうか…それで余計に子どもを守りたいと思うんだろね。ショーンやアクアには前世のことは伝えておらんのだろ?」


「うん、リーフは知ってるけどね。ショーンや、アクアには内緒にしとくよ。知られたからといって何かがある訳じゃないけど、ショーンとアクアの前では、母様の子どもってだけで居たいから…」


そう話すとサンがもふもふの手でヨシヨシとしてくる

相変わらず孫思いなお婆ちゃんだなぁと嬉しくなる。

そのままベットで2人と1匹で仲良く寝た。


次の日の朝方、ランの泣き声で目が覚める。オムツを替えて最後のミルクを飲ませる。これで在庫分は終わり。

買いに行かないと…。そもそもこのミルクは大丈夫なのだろうか?今更だけど。ヤギの乳と、栄養のある実を混ぜて作った物らしいけど。

んー。乳母とか探した方が良いのかなぁ…。

長い目で見ると、子育てもできる人を雇う方が良いのかなと思う。今後孤児院となると明らか大人の数が足りない。

リーフやサンは除外して……うん。キツイな!

乳母の件ありだな……。


そう考えているとサンが起きてきた。

リビングにてショーンとアクアが朝ごはんを準備してくれている。リーフは今日の買い物は家で居るとの事でショーンとリーフは家の掃除や準備をお願いし、一応フードも被り出来るだけ顔を分かりにくして、サンとアクアとランと私で町に出ることにした。


ランの住んでた家はここからそう遠くないみたいだけど、手続きとかもあるからまだ行けないので、とりあえず市場の方に向かう。市場は結構賑わっていた。


地面で物を売る者、屋台でスープなどを売る物、少し高そうな外観の店もチラホラある。あとチラホラ獣人が居る。獣人初めて見る!!耳と尻尾がある!可愛い!!もふもふ凄い!異世感楽しい!


「ルーズ様、あまりテンションが上がると危ないですよ〜」

アクアが注意してくるも、ワクワクが止まらない。

とりあえずランの布オムツを買い足すために服屋に行く。

色んなタイプの布が置いてある。魔物の素材でできた布もありワクワクする。


「すみません、この子の布オムツを買いたいのですが…ありますか?」


「いらっしゃい!お姉さんとおつかいかな?姉妹揃って美人さんだねぇ…赤ちゃん用のオムツならここから選ぶか、1から作るかだねぇ」


そう言って店員のおばちゃんが様々なオムツを見せてくれる。

とりあえず既製品の方の布オムツを10枚買い足しておく。

使い捨てオムツは、やはりこの世界に無いのか…

そのうち作ってみるのもありだなぁ…と思いながら店を出る。


「お姉さんだなんて少し変な感じですねぇ〜」

アクアがニマニマしてるのを、横目にミルクを買いに行く。ミルクをある程度購入し、屋台でご飯を食べることにする。色々見てボアの串焼きにした。ジャイアントボアより柔らかい身が特徴的だ。


抱っこ紐はあるけど、ベビーカーなどは無いため交互にランを抱っこしながら食べていると、うさみみの獣人の3歳位の男の子がこちらをじっと見ている。目がクリクリとしていて、髪も瞳も茶色で可愛い。服の見た目からして貧民街の子だろう。

着ている服にしても、穴が空いており汚れている。


「ねぇ、そこのぼく、こっちで一緒に食べる?」


私がそう声をかけると、おずおずとこちらに来る。

横に座ってもらって串焼きを渡すと美味しそうに食べる。

そのまま暫く食べていると、18歳位の同じくうさみみの見た目がそっくりな女の人がこちらに走ってくるのが見えた。


「すみません、ご飯を食べさせてもらったみたいで。あの…お金…」

申し訳なさそうに財布から大銅貨を出す。


「お金は要らないので大丈夫です。それより話を聞かせて貰えませんか?」


「ありがとうございます…はい。それで良ければ何でも聞いてください」


その言葉に甘えて、貧民街の事について詳しく聞く。

治安的には、やはりあまり良くないらしく。

ただ、貧民街の顔と言われるお婆ちゃんが要るらしく、そのお婆ちゃんのおかげで殺人などは余程危ない事をしない限り無いとの事だった。思ってたより、まだ何とかなりそうだ。

流石に町中を殺人鬼がウロウロしてたら衛兵ギルドも動くか…。


また、このうさみみ2人の関係性については亡くなったお姉さんの子どもが、この男の子らしくヨンという名前で、今はお母さんの妹のスーが面倒を見てるとの事だった。

ただ、今は仕事が少なくて食事を食わせようにもなかなか働き先が見付からず今も仕事探しをしてその帰りとの事だった。


丁度、子どもの面倒を見れる人を探していたので、家で働かないか誘ってみる。


「ねぇ、スー良ければ家で働かない?住み込みでもいいし、給料は日払いでも週払いでも大丈夫だよ。一応1日大銅貨5枚。あ。子どもは連れてきていいからね。

慣れたり人を教える立場にまでなってくると追加でお金を払うよ。」

小銅貨が日本円で100円、

大銅貨が日本円で1000円ほど。

銀貨で1万円

金貨で10万円 白金貨で100万円 ほど。

白金貨板で1000万。白金貨板は大きな取引以外使わない。


普通にこの世界だと貧民街で1日3000円平民街でも4000円

だから給料面は良いようにしてる。


「そんなに貰えるのですか?それはとても有難いのですが、どこかのお嬢様でしょうか?」

スーが恐る恐ると聞いてくる。


確かに一応姫ではあるなぁ…と思い言葉を飲み込む。


「んー、お嬢様ってより新しい事を始める所だから賃金を上げて良い人を探してるの」

と答えると更に驚かれる。

「若いのに…凄い…是非働きたいのですが…本当にヨンを連れて行っても大丈夫ですか?…」

「全然大丈夫だよ。明日とりあえずこの場所まで来てもらえる?」場所を伝え約束をし、離れる。


「さて行こうか。」

私が話すと、アクアがキョトンとした顔をする。


「え?どこにですか〜?もう帰ります?」


「帰らないよ。スーが言ってたでしょ。貧民街の顔役のお婆ちゃんが居るって。会いに行こうか。」


「えっ!!今からですか?それに会いに行ってどうするんですか?」


「とりあえず生活に困っている子ども達を雇うこと、あと乳母もランの為にも雇いたいんだよねぇ。」


「んー。なるほど〜。分かりました。行きましょう!何かあれば私がお守りしますね!!」


「ありがとう、お願いね。」

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