転生したらエルフの姫でした。
ーー私が貴女と出会えたから。ーー
誰の声だろう。綺麗で落ち着く声だなぁ…。
「風の子の誕生だっ!」の声で私の意識は覚醒する。
「おめでとうございます!」
と嬉しそうな大勢の声が聞こえてくる。
そもそも、ここはどこなのだろうか…
周りを見渡そうにもぼやぁとした光しか見えないし、私の意識とは関係なく自分の声帯から「おんぎゃぁぁああ」という赤ちゃん独特の泣き声しか出ない。
…おんぎゃぁあ?
え?え?待って…生まれ変わった?
まさか…まさかの転生とか……?
最後の記憶が次の日休みだからと、家で酒を沢山飲んで、お風呂に入りそのまま視界が、遠のき暗くなっていく記憶…
あの時死んでしまったのか……
前世は独身で34歳。
彼氏なども居ないし職場と家の往復で毎日終わる日々。
職場も介護なだけにハードで体も心もズタボロ…。
怒鳴られる、殴られるなんて普通にある…
趣味はラノベや漫画、アニメ鑑賞でポケーと見ながら、寝落ちしては時間だけが過ぎ去っていく。
流行りの転生かぁとか色々な考えが頭をよぎるが、とりあえず目が見えるようになるまで、情報を集めるしか無いかと結論を出してそのまま目を閉じる。
まず、目が見えるようになってきて驚いたのが私を見てくる人、私の世話をしてくれる人全員が耳が長くすごく美形揃い。
どうやら母親はここの族長の立場に居ること。綺麗なグリーンの瞳と淡い水色の髪で髪の毛の全てを三つ編みにしている。
胸も私の前世の時より2倍位大きい…良い(E)カップですね…
話し方もおっとりしていて声もどこの声優さんですか?位に可愛い。なにこの愛されキャラ…
名前はニアというらしく、「風のニア様」と呼ばれている。
父親らしき人が居ないのは気がかりだけど。
私の事を風の子と称した声の人は前族長で私のおじい様の位置にあたる人で、オールバックの根元だけ青色で他は白色の渋いおじい様。
若い頃はさぞモテたでしょう。って面影がある。
「ルーズ、いい子だなぁ」
おじい様のゾアと母様が一緒にニコニコしながら抱っこしてくれる。
泣いて寝ておっぱい飲んで寝る毎日。
少しずつ、ハイハイからつかまり立ち、よちよちだけど歩くことができるようになって分かったんだけど部屋から見える景色が森、森、森の一面緑色。
一際大きな木には根元付近に窪みがあり、そこから透き通る綺麗な水が流れその木を囲むように湖があり、辿っていくと、そこから川になっている。
何あれ…どんな仕組みなの……。
家も地上からは離れた高さ。
木の周りを囲むように家が建っている。
木造建てで、とてつもなく広い。
所々木の節が光っており、とても幻想的な雰囲気。
転生したら、異世界でエルフの姫のポジション…
異世界転生にしては大当たりレベルなんじゃ…?
エルフ最高!!
もしやもしや魔法とか使えちゃうんじゃない?とオタクとしては、ニヤニヤが止まらない。
転生前は介護士で3Kと呼ばれる職だっただけに姫ポジション最高です…
3歳位になると、加護降ろしの儀式があり、そこで初めて魔法を使えるようになるらしく、お付の人達に白のワンピースに着替えさせて貰い、母様に抱っこされ沢山の人の前で大きな木の切り株の上に寝かし目隠しされる。
周りでは木の叩く音や歌、舞を踊る音が聞こえる。
「風の子ルーズを守りし精霊様、加護を与えこの子の歩む道を実りあるものに……」
母様がそう告げるとブワッと風が吹きシャワーをかけられた様にビショビショになる。
「光っておられる…」「光属性…」「加護が3つも…」と周りがどよめく声が聞こえる。
音が止み、加護降ろしの儀式が終わると首に、普段は見えないけれどエルフだけに伝わる呪文を唱えると見える加護の印が刻まれる。
「これにて加護降ろしの儀式を終える」
おじい様の声が聞こえ起こされ目隠しを外されるとそのまま抱っこされ別室に連れてこられる。
抱っこした体勢のまま、木の椅子に座り頭を撫でてもらう。
「ルーズは3属性かぁ。光の加護とは、また珍しい…
3人の導き手を付けるからのう。ただ、光となるとこの村にはおらぬ為、とりあえず2人付けよう。入っていいぞ。はぁ…光…あやつめ…」
上を見ながらため息を吐く。
気になることを呟き、手を叩いて人を呼ぶ。
その日から、私のお世話をしてくれていた沢山の女の人の中から2人選ばれたみたいで魔法の使い方を学ぶ事になった。
風の導き手が、緑色ショートカットの髪に深いエメラルドの様な透き通った綺麗な緑色の目。
歳は30代位の細身の見た目で名前はショーン。
キリッとした顔で真面目な性格。 加護は風属性。
水の導き手が水色のフワフワとしたボブヘアの髪に、瞳が黒色のボンキュッボンの20代位のゆるふわ系の名前がアクア。
性格もおっとりしておりマイペース。加護は水属性。
光の導き手に関しては、光の精霊が少なく、加護がレアで どうやら、殆ど光属性が居ないらしい。
とりあえず居ないのは仕方ないとして、ひとまず2属性を極めることに決めた。