第五話 森の入り口で、幻の〇ケモン、ゲットだぜ!
かなり間が空いてしまいましたが、ようやく投稿できました。よろしくおねがいします。
ピチチ、ピチチチ、ピチュピチュ・・・・ピチュチュチュ。
ーーー毎朝、鳥の鳴き声で目が覚めるなんて、なんて素敵なのかしら。
乙女なら誰もが一度は憧れるシチュエーションではないだろうか。
異世界に来て私はそれを毎日体験している。
都会では、こんな爽やかな鳥の鳴き声で目を覚ましたことがない。せいぜいゴミを漁りに来たカラスの鳴き声ぐらいだ。・・・カラスってどうしてあんなに人を小馬鹿にしたように鳴くんだろう。
家の周囲には結界が張られているはずなのだが、小鳥さんたちはどこからか侵入してきて、楽しそうに囀り、庭の木にとまって果実をつついている。
まぁ、危険がないから侵入できているのだろう。・・・と、信じたい。この結界に何か重大な欠陥があるとは思いたくないので。
私もちょっと出来心でパンくずをやったり、ナッツをやったりと餌付けしたから、なんだかと基地内に鳥さんをよく見かけるようになった。
自分たちに危害を加えないことがわかっているのか、私が庭で洗濯物を干したり、木になった果実を収穫していても、特に逃げるわけでもなく、近くにいる。
さすがにまだ肩や手に乗ってきたりはしないけど、いつかは・・・という野望に心がメラメラと燃える。
別に元の世界に未練なんて大してないけど、ビューチューブもテレビ放送も見れないし、家の敷地以外にはまだ怖くて足を踏み入れられない。
高知の田舎で暮らす家族はどうしているだろう。
去年お正月に帰って以来、顔を見ていない。
突然音信不通になって心配していないだろうか?
まあ、まめに連絡をとっていたわけでもないし、もしかしたらまだ私がいなくなったことにも気づいていない可能性もあるんだけど。
そこのところ、女神さまはどう処理をしてくれたのかな?
いきなり会社も休んで失踪したことになっちゃってんのかな?
だとしたら、会社から実家に連絡がいっている可能性もある。
色々考えてみたけど、答えは出ないし、今更どうすることも出来ないんだよね。
親不孝な娘でごめんなさい。
ちょっぴりしんみりした気持ちになりながら、今日も庭を訪れてくれた小鳥さんたちにパンくずを与えていると、庭の向こうの森の入り口に、何か白いものが蹲っているのが見えた。
おそるおそる柵の近くまで行ってみると、どうやら生き物らしい。
子犬くらいの大きさの白いモフモフ。
しばらく眺めていたが、じっとして動く様子がない。
「・・・犬? いや、森にいるんだし、狼とかかな? 怪我でもして動けないのかな?」
どうする?
助ける?
危険な獣かも。
もしかしたら噛みついてきたり、狂暴かもしれないし。
でも、なんだかかわいそう。
怪我をしているなら、手当だけでもしてあげた方がいいのかな?
気になって柵の前でうろうろしながら、白い毛玉の塊の様子をうかがう。
もし助けるなら、この柵の向こう側に行かなきゃダメなんだよね?
「・・・こわい、けど・・・私には結界魔法があるし」
多分、何かに襲われてもダメージはないはず。
そのための結界魔法だし。
「・・・・・よしっ!!」
ぎゅっと両手で拳を握って気合をいれる。
柵の戸を開けて、外に出る。
森の入り口にゆっくりと歩いて慎重に近づく。
近くまで来ると、白いモフモフは、元の世界でいうところのシベリアンハスキーに似た動物だった。
「狼・・・かな?」
そっと近づいて様子をうかがう。
呼吸はしている。生きている。
よく見ると、肩や足に血がついていて、怪我をしているのがわかる。
「気を失っているみたい…」
悩んだ末、家に連れて帰ることにする。
そっと体を持ち上げると、思っていたよりもずっしりと重い。
まだ子供みたいだし、小柄に見えるけど、手足も太いしがっちりとした骨格をしている。
「う・・・っあと、もう少し・・・」
傷に響くかもしれないので、慎重に抱きかかえているせいか、腕がぷるぷるする。
無事に家の中まで運び、バスタオルと毛布で寝床を準備。
その上に白いモフモフを寝かせる。
救急箱をとってきて、すぐに傷口を濡れたタオルでふき取り、消毒する。
傷口を縫うとか無理だから、しっかりカーゼを当てて、包帯でぐるぐると巻いていく。
医療知識とかないので、これ以上の対応は思いつかない。
あとは様子を見るだけかな?
お皿に水と、シーチキンの缶を開けて、出しておく。
「・・・元気になるといいな」
ーーー異世界にきて、一か月。
もしかしたら、幻の〇ケモン、ゲット・・・だぜ???