ある日、異世界の女神さまが現れた
処女作。初投稿です。
作者はメンタル豆腐です。
生ぬるい目で見守ってやってください。
「ここではない、どこか遠くへ行きたい。それがあなたの望みで間違てありませんね?」
1DKの狭いアパートの一室、突然現れた神話女神風のコスプレをした金髪美女が、厳かに私を見下ろして言った。
こたつでチューハイ片手にコンビニのおでんを食べていた私は、何が起こったのかよくわからずに、まじまじとその女性を見上げた。
ぽかんと開いた口から、くわえていたごぼう天がポトリと落ちる。
「えっ・・・?? どちら様ですか・・・っ???」
(不法侵入者っ!)
(しかも外国人??)
(すごい美人だけど・・・!!)
割り箸を握ったまま慌てて立ち上がろうとして、コタツの脚につまづき、転びそうになる。
バシッとコタツに両手を付き、何とか顔面強打を回避。
ほっ、おでんも、チューハイも無事だ。
ごぼう天は落ちてるけど。
「毎日毎秒毎分毎時間、何十回、何百回と、あなたは祈り続けていました。『ここではない、どこか遠くへ行きたい』・・・と。わたくしはその悲痛なる願いを叶えるためにここに来ました。あなたには、この地球という惑星を離れ、わたくしの管理する別の世界へと行っていただきます」
にこりともせず、何故か物悲しそうな表情をした美女は、それはそれは慈愛に満ちた目をしていらっしゃった。その眼の下に、うっすらと隈が浮かんでいる。
・・・何だかすごくお疲れの様子だ。
(・・・えっ?)
(どういうこと?)
確かに、毎日毎日鉄板で焼かれるたい焼きみたいに、働き尽くめだけれども。
使えない上司にこき使われ、ねちねちねちねちと嫌味を言われる日々。
生活のためには働かなければならず、働けど働けど我が人生楽にならず・・・。
正直、宝くじにさえ高額当選したら、喜んで引きこもりになる。
ニート、万歳!
妄想と現実逃避が趣味みたいなところのある私は、いつも、ここではないどこかへ行くことを夢想していた。
具体的な場所は存在しない。
とにかく、今、ここではないどこか遠くへ行きたいのだ!
コバルトブルーの海の広がる浜辺とか。
ちょっと寂れた温泉地。
はたまた豊かな自然に囲まれたオシャレなペンション。
・・・あれ、どこでもいいとか言いながら保養地ばっかりだな?
でも、そんな妄想が現実で叶うはずもなく、仕方なく私は現実をせこせこ生きているのだ。
「あの・・・どうして私を・・・?」
よくわからないがこれは夢だろう。
毎日残業続きで疲れていたし、おでん食べてチューハイ飲んで、コタツで寝ちゃったんだろう。
こんな夢を見るほど、私、疲れてたんだな…。
しみじみと自分の境遇を憂いていると、宝石みたいな碧い瞳の、憂い顔まで美しい金髪女性が、澄んだ悲痛な声で言った。
「夢ではありません、佐崎 芽衣菜さん。あなたが毎分毎秒、身をよじるほど切実に、神に祈る声が届きました。正直、聞いているこちらがめいってしまうほどしつこく、熱心に祈られていましたね。大丈夫です。あなたのその願いは叶えられます」
・・・えっ、そこまで?
私もしかしてノイローゼにでもなりかかってたのかな?
「おそらく、あなたの魂がたまたま、私の世界と波長が合っていたのでしょう。次元を超えて、偶然にもあなたの声はわたくしに届いていました。毎日毎日、何度も何度も・・・」
「え・・・っ、それは・・・すみませんでした?」
「・・・数多ある世界の特定の人間の魂の叫びが聞こえることは稀です。何故、この世界の神ではなく、わたくしにその声が届いたのかはわかりませんが・・・。これも、運命なのでしょう。これからあなたを、わたくしの世界へと遅れます。準備はよろしいですか?」
よ、よろしくないよ・・・?
えっ、神様っ?
・・・本物?
夢・・・じゃないの・・・!?
「ちょっと、待ってくださいっ!!!」
そして------話は少しばかり遡る。