表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/21

第6話 俺と幽霊娘たち4


『ごめんなさい、許してぇっ!! 調子に乗ったの!』



 恐怖に顔を歪めると逃げようとする奈々だが、俺は霊能力を使って奈々の身体の動きを止める。奈々は必死に抵抗するが、すぐに金縛りにあったようにピクリとも動けなくなった。



「お前、ふざけんなよ? 俺の人生めちゃくちゃにするつもりだったのか?」


『あ、あああっ……!』



 怒りの形相で詰め寄る俺に奈々は怯えきっている。まるで蛇に遭遇した小動物のような反応だ。さすがに哀れだと思ったのか、貞代が俺たちの間に入ってきた。



『お、落ち着いてください。ええっと、鳥塚玲也さんでしたよね? 私も謝りますからどうかこの子を許して下さい。お願いします』



 貞代が深々と頭を下げると、傍らの佳代もそれに倣って頭を下げる。



『ご、ごめんなさいぃっ! もう二度と悪さしないの! 許してくれたらお姉ちゃん達をファックしていいの!』


『そう、私たちをファ……ええぇぇぇっ!?』



 奈々の言葉に貞代が驚愕の声を上げる。うん、まぁ普通そうなるわな。

 つーかこのガキ全く反省してねえぞ。危ねえな、コイツ。

 俺は無言で奈々にかけた術を強化した。これでこいつは俺の許可なく霊現象を起こせないし、身体の自由も利かない。ついでに支配術式も施してあるので、逆らうこともできないはずだ。


「……とりあえず事情を説明してもらおうか」

 俺がそう言うと奈々は観念したかのように語り始めた。



 ◇

 水沼奈々の家庭は暴力的な父に支配されていた。

 唯一の味方だった母親は奈々が幼稚園の時に早世し、奈々は一人ぼっちになってしまう。奈々の父親はとんでもない男で、なんでもDVとモラハラ気質なパチンカスで趣味はギャンブルとのこと。

 口癖は「殺すぞお前」。

 好きな言葉はタイマンと執行猶予。

 嫌いな言葉は有罪、懲役に職務質問。

 社会的弱者には強く出て、警察や社会的強者にはゴマをする三下の典型である。



 なんとか我慢してきたが、度重なる虐待に耐えかねた奈々は遂に家出。

 それを保護したのが生前の貞代らしい。

 当時女子大生だった貞代は奈々のために温かい食事と風呂を用意し、児童相談所か市役所に通報しようとしたところで殺人鬼が乗り込んで来たそうだ。

 奈々を守ろうとした貞代だが、結局二人とも殺されてしまったとのこと。



「想像よりヘビーだったぜ……」



 貞代の説明を聞いて俺はげんなりしていた。

 ここまで胸糞悪い話とは思わなかったぞ。



『別に同情なんてしなくていいの。あのクソ親父は苦しんで死んでほしいけど、今の奈々はお姉ちゃんと一緒で幸せだからいいの』


『奈々ちゃん……』



 目を細めて、大事そうに奈々の頭を撫でる貞代。その顔には慈愛に満ちた母親の表情が浮かんでいた。

 う~む、こういった事情を知ってしまうとどうにも助けたくなるんだよなぁ……。

 一円の得にもならないっていうのにさ。



「あのぅ、たしか鳥塚さん。ちょっとお願いが……」



 助けるべきか思い悩んでいた時、不意に貞代から声をかけられた。

 視線を向けると貞代が両手を後ろ手に組み、恥ずかしそうにモジモジとしている。



「なんだ? 言っとくが金は貸さんぞ」


『そんなことド貧乏そうな貴方に頼みませんよ』


『顔つき……貧乏丸出し……ついでに童貞丸出し……』


『童貞で貧乏丸出し、しかも性欲全開なんて絶対モテないの』



 じゃあ一体なんの用だ?  俺は内心、貞代たちの発言に傷つきつつ、彼女の発言を待つ。すると、貞代は意を決した様子でゆっくりと口を開いた。


『私達を殺した犯人、捕まえてくれませんか?』



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ