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第2話 俺、幽霊と出会う

「食った食った……」


 俺は業務用スーパーで買った外国産の激安豚バラ肉をフライパンで焼き、醤油や砂糖、塩コショウで味付けして食べた。

 これが意外と美味しく、大量に作ったので残りは明日の昼ご飯にしよう。

 さてと、腹は満ちた。ならもうコレしかないよな?

 俺は東京に来てから購入したブツを取り出す。田舎では姉や妹がいたせいでアダルトなビデオを一度も見れなかった。

 だが今の俺は一人暮らし‼ 邪魔者など誰もいないのだ。心ゆくまで楽しめる!



「ぐふふ、ではさっそく……」



 俺はリサイクルショップで買ってきたDVDプレイヤーにAVをセットすると、ワクワクしながら画面を見つめる。

 AV会社のロゴが画面に映り、俺のワクワクが最高峰に達した瞬間、画面が砂嵐を映し出す。



「はぁっ!? ちょ……なんだよこれ! 俺はAVが見たいんだよ!」



 怒りに任せてリモコンのスイッチを連打するが、全く反応がない。クソッ、壊れてんのかよ! ま、まさかあの店長、ニセ物掴ませやがったか……!? 

 許せねぇ……ぶん殴ってやる!!

 俺はアダルトショップ店長の顔面をブチ壊してやろうとコートとカギを手に取り、玄関へと走る。しかしその時だった。



『────おいで、こっちにおいで……』



 背後から声が聞こえ、ハッとして振り向くと、なんとTV画面から黒い影のようなものが這い出してきていたのだ。

 それは腰まで伸びた長い黒髪に、病的に白い手足を白いワンピースで包んでいる。

 前髪のせいで顔はよく見えないが、女性のように見えるソレは俺に近づき、肩に手を置くと俺の耳元に顔を寄せ、囁いた。



『許さない……私を殺したお前をゆるさないぃぃっ!!』



 その瞬間、全てを理解した俺の全身にある感情が走り抜け、思わず体が震えてしまう。


「お……お、おま……」


『許さないぃ……お前を……え?』



 俺は見当違いの恨み言を吐く黒い影の顔ををがっしりと掴む。予想外の展開だったの驚いて逃げようとする女の霊だが、俺の握力は120キロある。

 決して逃げられないし、逃がすつもりもない。こいつは俺の大事なものを奪ったのだから!



「AV見れねぇーのお前のせいかぁぁぁぁっ!!」


『いやぁぁぁっ!?』



 俺はアイアンクローで女幽霊を片手で吊り上げると、流れる様な体捌きでプロレス技をかける。得意技のコブラツイストだ。

 神社生まれの俺はこの技で数々の変質者や悪霊を退治してきた。



「神社生まれを舐めるなッ!!」


『ちょっ、あなた何なんです!? なんでそんなに怒ってるんですかぁ!?』


「うるせー! 俺の宝物を……AV返せよ! 映らねーんだよ、お前のせいで!」



 幽霊へのコブラツイストは効果抜群だ。さっきまでのホラーテイストが嘘のように女幽霊はすすり泣き始めた。

 少し可哀そうになってきたが、俺の大事な宝物を壊した罪は重い。

 除霊するかどうかはともかくとして、取り合えず締め落としてから話し合いをするか。


『一時的……一時的にTV使えなくなってるだけですからぁ! ちょ……! ほ、本当に痛い……! 許してぇぇっ!!』



 俺は泣き叫ぶ女幽霊を無視しながら、怒りをぶつけるようにコブラツイストをかけ続けた。


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