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主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから  作者: 渡里あずま


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平和平和

 異世界から召喚された聖女に、浄化能力があることは聞いていた。そう、聞いてはいたのだが頭にだけ知識があるのと、体感するのとはまるで違った。

 この異世界では、夜通し移動はしない。魔国まで馬車で一週間ほどかかるのだが、それは夜に休憩するからだ。宿にこそ泊まらないが、町や村があればそこに馬車を停めて。そして人里に辿り着かなければ、本格的に暗くなる前に火を焚いて野宿する。盗賊や獣、あと魔物が出るのも夜に移動しない理由らしい

 ……とは言え夜の方がより危険と言うだけで、いつもなら昼にも盗賊や魔物は出るそうだが。


「平和ですねぇ」

「全くだ」


 今の舞は荷馬車の荷台にではなく、御者の隣に座って外に出ている。暖かい陽射しの下、のんびり呟く舞に、御者の男も同じくのんびりと答えて頷く。

 剣士などではない、一般人の舞が何故と思われるだろうが――舞がいると、魔物は勿論だが盗賊も獣もまるで寄ってこないのだ。どうやら舞が瘴気を浄化することにより、盗賊や獣にも理性が戻って悪事を働かなくなったり、闇雲に襲ってこなくなったらしい。

 いつもとは、明らかに違う状況――そんな訳で、旅立った翌日には舞が異世界から召喚された聖女だとバレた。


「……あなたは、聖女様だったんですね?」

「…………」

「沈黙は、肯定と見なします……まあ、隠し事はあっても嘘はなさそうですので。約束通り、魔国まで連れていきますね」

「いいんですか?」

「ええ。皇国は、魔国からの商品は喜んで受け入れますが……見ての通り、国外へ出る我ら商人に手助けは全くありません。だから、護衛は自分達で雇います。逆は……魔国から皇国に戻るまでは、魔王様から防御に特化した魔道具が与えられるので安心出来ますけどね」

「え」


 セバエの話に舞は声を上げ、目を見開いた。皇国の酷さは想定内だが、魔国がそこまで手厚く保護しているとは思わなかった。


「結果として、私がどちらに肩入れするかはお解りでしょう? あなたもご存じかもしれませんが、聖女様がどこにいても、世界は変わらず浄化されるんですから……それなら、聖女様の『望む場所』に連れていくべきではありませんか?」

「……ええ、その通りです。そして結果として、楽に魔国まで移動出来るのは、お互いにとって良いことだと思います」


 にこにこ、にこにこ。

 セバエと舞は、お互い笑顔で話を締め括った。交渉成立である。

 結果として最初は探り探りだったが、今ではセバエの許可を得て舞は率先して昼間は先頭の馬車、その御者台に乗って魔国までの旅を守っていた。

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