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舞の日常

 安藤舞あんどうまいは、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。

 肩を越す長さの髪は、家事と子育ての邪魔にならないようポニーテールにし。服も、同様の理由でロングTシャツにスキニーだ。動きやすく、かと言って近所のスーパーなどにそのまま出かけられるよう、だらしなくならないようにするのが舞のこだわりである。

 そんな舞は、営業職を務める六歳年上の夫・大樹ひろきと、五歳になる息子・たくみの三人で郊外の一軒家で暮らしていた。夫の会社からは少し遠いが学園都市故か交通アクセスは良いし、各種施設も充実している。だから大樹も、馬鹿みたいに早起きをしなくて良い。

 ……もっとも、舞はそんな夫と子供よりは早く起きるのだが。


(よし)


 万が一、寝坊した時の為に毎朝五時半に目覚まし時計はセットしている。

 だが、結婚する前も家事や通勤時間の関係で同じ起床時間だったので、舞は目覚まし時計が鳴る前に起きることが出来たし、一緒に寝ている大樹を起こさずにも済んでいた。


(たかが三十分、されど三十分……朝の時間は、貴重だものね)


 うんうんと心の中で頷きつつ、着替えて気合いを入れる為のピアスをつけた舞は、朝食作りと二人分のお弁当作りを始めた。そうしていると六時半くらいに、まず出勤の為にスーツを着た大樹が起きてくる。


「おはよう、舞」

「おはよう、大樹さん」


 歳の差もあるが元々が会社の先輩後輩だったので、流石に下の名前では呼ぶが、どうしてもさん付けを外せない。もっとも、夫は「それも可愛い」と言ってくれるので、それはそれで照れるが甘えさせて貰っている。

 二人で朝ご飯を食べ、食後のお茶を飲んだ頃。もうじき七時という頃に、息子の工がこちらはパジャマ姿で起きてくる。少しでも、父親に会いたい――では、残念ながらなく。朝の情報番組で出演者が、番組のマスコットキャラクターである白い鳥の親子と踊って朝七時をお知らせする為、平日は一緒に踊っているのである。


「おとうさん、おかあさん、おはよう!」

「ああ、工。おはよう」

「おはよう、たっくん」

『今日も元気に、いってみよー!』


 父子での挨拶の後、番組出演者やキャラクターの声でダンスが始まり、それを観た息子が一緒に踊る。

 そして、本日も無事踊り切ったところで大樹は工を椅子に座らせてあげた。


「おとうさん、いってらっしゃい!」

「ああ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 息子と挨拶を交わしてから、大樹は舞と一緒に玄関へと向かう。そして舞が声をかけると、靴を履き終えた大樹が笑顔で応えて家を出た。

 さて、次は工の支度とお見送りである。

 しっかり朝ご飯を食べさせた後、顔を洗ったり歯を磨いたりしてから着替えさせる。逆だと万が一、コップの水などをこぼすと新しいスモックや服を用意しなくてはいけないからだ。

 そして、八時。外に出てしばらく待っていると、幼稚園からの通園バスが舞の家の前で停まる。


「いってらっしゃい」

「おかあさん、いってきまーすっ」


 こうして今日も無事に大樹を、そして息子である工を送り出すことが出来た。

 舞の年頃だと共働きが多いが、大樹から「仕事は俺が頑張るから、家にいてほしい」と言われた為、ありがたく甘えている。妻として母として、時間はいくらあっても足りないからだ。


「さーて、次は掃除と洗濯!」


 そして家に入り、気合いを入れる為に拳を振り上げ、さて靴を脱いで中に入ろうとした時である。


「っ!?」


 玄関が、いきなり舞を取り囲むように光り――次に気づいた時には、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。


「は?」

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