爆弾
「おや、あれはなんだ」
人々は上空に浮かぶ円盤状の飛行物体をみつけた。飛行物体はそのまま街はずれの見晴らしのいい丘の上に着陸した。
「UFOだ!ついに地球外生命体がやってきたんだ!」
「秘密裏に開発された飛行機か?なにかのトラブルで不時着したのかもしれないぞ」
メディアも大きくとりあげるなか、UFOの所在はついにわからなかった。
さまざまな憶測がとびかい、恐らく宇宙から来たのであろうUFOは沈黙をつらぬいていた。あらゆる言語の交信にも反応せず、乗組員がいるのかどうかもわからず、かといっていきなり攻撃するわけにもいかない。仮に中の兵器が暴発でもしたらことだ。
数日後、UFOとの接触をこころみる作戦が決行された。
「はじめまして!地球へようこそいらっしゃいました!我々はあなたがたを歓迎します!」
遠隔操作のロボットがハツラツとした挨拶とともに近づいていく。万が一を考えての策だ。ロボットが丘のふもとにさしかかったころ、円盤から一筋の光がとびだし、ロボットは笑顔のまま音もなく蒸発した。わずかに残ったロボットの残骸が光の強力さを物語っていた。
「近づくのはまずい!周囲の街の人々を避難させ、絶対に刺激しないようにするのだ」
こちらからの接触は不可能であることがわかり、円盤はふたたび飛び立つこともせず沈黙していた。しかし刺激さえしなければよい、いつかはいなくなるだろう。そんな希望を抱いたが、それはすぐに裏切られた。
円盤のある丘の周りの地面が地球ではみたことのない生態系の植物で覆われていたのである。さらに、その範囲は時間と共に拡大しているように見えた。すぐに軍が動き、ミサイルによる攻撃がおこなわれたが、ロボットと同様に円盤からの光によって音もなく消えるばかりだった。
円盤によって拡大された範囲に足を踏み入れると距離がはなれていても光で攻撃された。そのため、円盤にたいして何もすることができず、円盤が使用している光の技術を解析こそできても、円盤の装甲は光を無効化する性質であったため、拡大する範囲の土地を光で焼くことも間に合わず、ついに人類は地球上に存在することができなくなり、滅亡した。
人類によってつくられたものはほとんどが光によって消されてしまい、唯一残ったのは宇宙に浮かぶ方舟であった。絶滅の直前に打ち上げられた方舟には人類のすべてが詰まっており、新たに居住可能な惑星を発見した場合、地球のような環境に改造し、完了後に人の遺伝子を含めた多くの生物を育成する機能まで搭載している。このプロジェクトは絶対に失敗してはならないため、憎き円盤の光の技術も自衛用に搭載しているのだ。
そして今、方舟は適当な惑星を発見し、さっそく着陸態勢に移る。その星の住人の一人が彼らの言語でこう呟いた。
「おや、あれはなんだ」